第41話「機械仕掛けのデュエル」(デュエルパート2)

【デュランダルのターン。バルムンク視点】


「私のターン、ドロー」


 奴の伏せは1枚だが手札は3枚。

 遺電子デッキはまさに軍隊だ。統率された動きが敵を打ち据える。


「まずは伏せた単発魔法『遺電加速』を発動。これは後攻以降しか使えないが、このターン遺電子モンスターの効果を2倍にする」


 2倍だと。


「まさか……!」


「気付いたようだな。私は『遺電子 ウイルス・フェネック』を召喚」


 500/0。ライオの効果により1000/1000。


「こいつが出た時、私の山札の上3枚を墓地に送ったのち、相手の山札の上5枚を墓地に送る。が、遺電加速の効果により――」


「10枚送り……!」


 お互いの山札が現れ、そこに電気が襲い掛かる。

 デュランダル6枚落としに対してこちらは10枚だ。


「まだだ。『遺電子 ストーム・ファルコン』を召喚し、効果発動! まずファルコン自身の効果で4枚ドローの2捨て――そして10枚落とし!」


 1500/1000→2500/1000!

 さらに俺の山札が削られる。


「くそ……!」


「さて、4ドローに2捨てだ。とりあえずこの辺りか」


 捨てられたのは「遺電子 パルス・ドッグ」に「遺電子 エレクトラ・クロウ」だった。


「……さて、私もいよいよ切り札を出すとするか」


「何?」


「単発魔法『起電降臨』発動! 場にある遺電子モンスター3体以上を墓地に送り、錬成!」


 ドッグ、フェネック、ファルコンが電気となり、空に舞った。

 舞った電気は3つに重なる輪っかとなり、そこから巨大な影が現れる。


「轟け!『起電神 ニュー・クリアー・ワールド』!」


 電磁波は赤、青、緑、白、黒の5色に輝く。

 0/0。


(見たことがある。いや、知っている!)


 かつてこの世界は火、水、地、光、闇を司る2体の神が支配していた、と。

 その姿は、それらを無理矢理合体させたかのような姿だ。だが伝承に聞く神々しさはどこにもない。


「どんだ紛い物を作りやがったな……!」


「その通りだ。私は起源神の記された古文書をカード生成の素材としてこれを作った。ここまでのカード生成技術を掴めたのも全てはアンセル様の力。混沌の力のおかげだ」


「根っこまで開け渡しやがったな」


「なんとでも言え。私はこの力を使い、世界にその名を轟かせる……!」


 デュランダルは俺を指差す。

 起電神はそれに呼応し、空高く咆哮する。


「終わりだ。バルムンク」






「――られねえ」






「何?」


「てめえにその技術は任せられねえっつったんだよ」


「……負け惜しみなら地獄でやるのだな。起電神の効果発動! 私の墓地に存在する全ての遺電子モンスターの数だけ、自身の攻撃力を1000上げる!」


 墓地には先ほどの山札削りも合わせ、合計10体の遺電子モンスターが。ということは!

 10000/0……!


「さらに私の手札を全て墓地に送ることで発動。相手のカードを全てゲームから取り除く!」


 デュランダルは手札を文字通りばら撒くように捨てた。そこには2枚の遺電モンスターが。これでステータスは12000/0か……!

 しかも取り除くだと。やってくれる。だが。


「最後の伏せ、単発魔法『気分蒸々』発動! 俺の墓地にある蒸気モンスター全てを同時に召喚――」


 その瞬間、フィールドが熱気に包まれた。その熱気が次々にモンスターの姿を形取る。


「その後、5体以上を素材とする蒸気モンスター1体をアシストゾーンから召喚する!」


「なんだと!」


 お前が墓地をアホみたいに肥やしてくれたおかげで、俺の墓地の蒸気モンスターは合計18体だ。


「集まれてめえら! 仕事だぜ!」


 無数のモンスターがより集まり、最後の蒸気モンスターを形作る。


「俺はこいつを18体の上に召喚! 緊急発進!『蒸気血戦 ヴァルカン・バハムート』!」


 5000/5000。

 口から蒸気を吐き、その姿は魚のようでもあり、竜のようでもある。

 この基地に収まる形での召喚となったが、迫力は十分だった。


「なんだそのモンスターは……!」


「こいつか? 町長や街のみんなが俺のために頑張って作ってくれたのさ。そして俺はこいつでゲームを決める」


「強がりを。まだ起電神の処理中だ! せっかくの切り札も消えるのだ!」


 フィールドが電撃に包まれ、俺の体が痺れる。


「ぐうっ……!」


 激しい電撃が辺りにひびを作り、炎をあげる。


「所詮はこけ脅しだったな。このまま消えてなくなるがいい!」


 俺は膝をついたが、すぐに炎を振り払った。


「デュエルは焦った奴の負けだぜ」


「何?」


「炎を吹き飛ばせ、バハムート!」


 俺とバハムートの周りに舞っていた炎は、たちまちかき消える。


「何?」


「バハムートの下にある『蒸気兵 エンジン・フォックス』の効果。素材になっていれば俺のアシストモンスターは相手の効果を受けない!」


「チッ……」


 全ての処理が終わった。


「続けて『蒸気兵 レシプロ・ガーゴイル』の効果発動! 好きなタイミングで相手のカードを1つ破壊する。対象は当然、起電神だ!」


「無駄だ! 起電神はあらゆる効果を受けない!」


 ガーゴイル型の蒸気は起電神を包み込んだが、すぐに振り払割れる。


「打つ手はなくなったようだな。バトルだ」


 バハムートのステータスは0/0。対して起電神のステータスは12000/12000。殴られれば残りライフが一瞬で消し飛ぶ。


「……いいだろう」


「覚悟を決めたか。ならばこのまま消えるがいい! 起電神ニュー・クリアー・ワールドでバハムートに攻撃!」


 巨大なモンスターがお互いにぶつかり合い、蒸気と電気が辺り一帯を包み込む。


「――動だ」


「何?」


「素材になっている『蒸気兵 エンジン・バイソン』の効果発動だ! 素材になっていれば俺のアシストモンスターは戦闘破壊されず、バトルでのダメージも0になる!」


「この死に損ないめが……! 私はこれでターンエンド!」


 フィールドはようやく落ち着きを取り戻す。

 だが、俺もバハムートは再び立ち上がる。


「この瞬間、バハムートの効果発動――」


「何?」


「この効果は好きなタイミングで使える……。自身の素材を全て墓地に置くことで、1枚につき500のダメージを与える!」


「なん……だと!」






【今日の最強カード】


【起電神 ニュー・クリアー・ワールド】


生息地:火の国/水の国/緑の国/闇の国/光の国

種族:アンドロイド


攻撃力:0

守備力:0


アシストモンスター


効果

①このモンスターは「起電降臨」の効果によってのみ召喚出来る。


②好きな時に発動してもよい。このモンスターの攻撃力と守備力は墓地に存在する「遺電子」モンスター1体につき1000アップする。


③好きな時に発動してもよい。自分の手札を1枚以上墓地に送り、相手フィールドのカードを全てゲームから取り除く。


④このモンスターはカードの効果を受けない。


フレーバーテキスト

神々の誇りすら踏みにじられる。






【蒸気血戦 ヴァルカン・バハムート】


生息地:火の国

種族:アーマード・ウォリアー


攻撃力:5000

守備力:5000


アシストモンスター


効果

①このモンスターは「蒸気」モンスター5体以上の上に重ねることでのみ召喚出来る。


②好きな時に発動してもよい。このモンスターの下にある「蒸気」モンスター1体につき500のダメージを相手に与える。


フレーバーテキスト

その気炎が上がる時、世界の歴史は悲鳴を上げる。






【作者より】

 読んでくださりありがとうございます!

 ついにバルムンク対デュランダル戦終了です!


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 次回は今日17:00〜20:00頃に投稿予定です。よろしくお願いします!

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