第25話「冷たいデュエル」(デュエルパート1)
【ユーゴ視点】
「死ぬなよユーゴ!」
死ぬな、か。大丈夫だよ。君が来るまでは持つさ。
「決闘魔法、発動!」
僕が唱えるとすぐにデッキが消えた。読み込みの合図。
これからやるのは混沌のデュエルだ。腹を決めろ。
「「デュエルスタート!」」
コイントスにより先攻は僕だった。
【ユーゴの先攻】
「僕のターン!」
初手はいい調子。
「まずは単発魔法『屍界循環』! 2枚ドローし、屍界カードを1枚捨てる!」
僕は「屍界の妖精」を捨てた。
「さらに『屍界の魔女』を召喚し、その時の効果発動。デッキから屍界カードを1枚墓地へ!」
攻撃力1300。
墓地に単発魔法「屍界埋葬」を送った。
「さらに『屍界のユニコーン』! その時の効果を発動し、自分の山札から5枚を墓地に!」
攻撃力1800。
この時屍界カードが3枚以上落ちなければ自分の墓地を全てデッキに戻さなければならないが。
「ヒットしたのは屍界モンスター5枚だ!」
よし。最後の召喚。
「『屍界のグリフォン』を召喚し、その時の効果発動! 僕の墓地が5枚以上ならデッキから屍界カードを手札に加える。僕は『屍界の災い』を手札に!
攻撃力1800。
「カードを3枚伏せてターンエンド!」
【マクシムのターン】
「私のターン、ドロー」
さあどう出るか。
「俺は手札から『アントワネット・ザ・マッドネス』を守備表示で召喚」
体中にタコやイカなど海洋類の特徴が目立つ少女のモンスターが現れた。守備表示なので膝をついて構えている。
いや待て。あのモンスター攻守共に0だと。
「俺はこのままターンエンド」
「な、何。お前舐めているのか僕を!」
「まさか。本当にターンエンドだぜ?」
…………。
「わかった。僕のターンだ」
【ユーゴのターン】
「僕のターン、ドロー!」
相手の場は空なのになんだこのざわめきは。不安が胸を掻きむしる。
だが戦わないわけにはいかない。
(あのカードは攻守が0。迂闊にカードを出す前に――)
「バトル。僕は魔女でアントワネットに攻撃!」
魔女がアントワネットに飛びかかり、持っていた箒でアントワネットの脇腹を叩く。
(何が来る!)
しかしそれは杞憂に終わり、バトルに負けたアントワネットは破壊された。
(手札事故か……?)
まあいい。続けて――。
「アントワネットの効果発動! 俺の手札を全て捨て、同じ分をドローする!」
マクシムは自らの手札5枚全てを捨て、同じ分のドローをした。
(やはり手札事故か?)
「この瞬間、俺の墓地に存在するモンスターたちの効果発動!」
「なっ……」
「『マッドネス』モンスターは相手ターン中に捨てられることで牙を剥く。これにより蘇れ。『クラーケン・ザ・マッドネス』!」
攻撃力1500。
渦潮から巨大なタコが現れた。頭の代わりに女性の上半身が付いている。
「この時クラーケンの効果! 山札の上3枚を表にし、マッドネスモンスターを全て手札に。残りはデッキに戻してシャッフルだ」
マクシムが山札の上を見せた。
「ぜ、全部マッドネスだと!」
「くく。これで引き直した分と合わせ、手札は8枚だ」
嘘だろ。数の暴力が過ぎる。
「続けて『カリュブディス・ザ・マッドネス』!」
攻撃力1500。
今度はクラゲの傘を付けた女性型のモンスターが現れた。下半身はクラゲよろしく細い触手が何本も生えている。
「続けて『スキュラ・ザ・マッドネス』!」
攻撃力1500。
3匹の犬の上にイカのような特徴の目立つ、女性型モンスターが現れた。
「スキュラの効果発動。自身の場にあるマッドネスモンスター1体につき相手のモンスターを手札に戻す。じゃ、お前のモンスターを全部波に流させてもらおうかねえ」
スキュラの下半身にある3匹の犬それぞれが水の槍を吐いた。その勢いで僕の体に冷たい水がぶつかる。
(これが実体化したカードの感触……!)
いや、そんなことよりも頭数を減らすわけにはいかない。
「伏せてあった単発魔法『屍界の災い』を発動! 自分の場に屍界モンスターがいれば相手のカードを2枚まで破壊する!」
(効果を見せていないのはカリュディスか。ならそいつを飛ばす!)
「僕はカリュブディスとスキュラを破壊!」
空間から闇の煙が現れ、選んだ2体を飲み込む。よし、これで。
しかしマクシムは不敵な笑みを浮かべる。
「カリュブディスの効果発動! 相手の効果が発動した時、1ターンに1度墓地にあるマッドネスモンスターを1枚をデッキに戻すことでその効果を打ち消す!」
「何!」
「俺は墓地のアントワネットをデッキに戻し、災いの効果を無効に!」
選んだ2体は金切声をあげ、自らを纏っていた闇を振り払った。
(これでスキュラの効果が有効か。だがまだだ!)
「墓地にある単発魔法、屍界埋葬の効果! 僕の場にある屍界モンスターを好きな数墓地に送り、その数だけドロー!」
「へえ」
僕は魔女、ユニコーン、グリフォン全てを墓地に送り、3枚ドローした。
しかし対象が消えたことで水の槍は僕の体のあちこちを掠める。
「ぐっ……」
致命傷ではないが血が流れる。
「これで終わりだな」
「くそ……」
【マクシムのターン】
「俺のターン、ドロー!」
なんてことだ。これで奴の手札は9枚。なんでも出来るぞ。
「さて、このターンで終わりだ。俺は『セイレーン・ザ・マッドネス』を守備表示で召喚。その時の効果を発動し、墓地にあるマッドネスモンスター1体を復活させる!」
守備力1500。
背中の大きな羽と体中に鱗の目立つ、女性型のモンスターが美しい歌声を響かせた。
「墓地から呼び戻すのは『マーメイド・ザ・マッドネス』!」
下半身が魚になっている女性型のモンスターが現れた。
「マーメイドの効果発動! こいつがマッドネスカードの効果で場に出た時、お前の場のカードを全て破壊する!」
「くっ! 装備魔法、屍界錬成の効果発動! 指定のアシストモンスターに記された条件に満たし、このカードに装備した状態で召喚する!」
「ほう錬成モンスター」
「僕は墓地の魔女、ユニコーン、グリフォンを取り除く。これにより現れろ!『屍界のケルベロス』!」
墓地から浮かんだ体のモンスターの魂が犬の姿を成し、混ざり合い、モンスターとして場に出た。
攻撃力3000!
「この時にケルベロスの効果発動! 相手のカードを3枚まで破壊する!」
ケルベロスが咆哮し、その口に炎を蓄える。
「……くく」
「何がおかしい」
「いいや。ここまで滑稽だと笑えてきてなあ」
「何」
「単発魔法『アビス・マッドネス』発動。墓地のマッドネスモンスターを1体復活!」
「くっ! 伏せの『床掃除』を――」
「カリュブディスの効果。墓地のマッドネスをデッキに戻し、それを無効に!」
カリュブディスの吐いた水が雑巾を洗い流す。
「くそ!」
「さて効果を通してもらおう。俺は墓地にあるもう1体のマーメイドを召喚し、その時の効果発動! 今度こそお前のカード全てを破壊だ!」
(しまった。アントワネットが破壊された時に捨てていたか!)
マーメイドが自らの鱗を刃にしてこちらに飛ばしてきた。咄嗟に両腕で守る。
しかしそれでも体のあちこちに刃が突き刺さる。
モンスターや魔法も一掃された。ケルベロスの効果も本体が場を離れたことで不発となり、口に蓄えていた炎も空に消える。
(う、動けない……。これが混沌のデュエル……)
「くく。だめ押しに『ヒュドラ・ザ・マッドネス』召喚。その時の効果を発動し、俺の場のマッドネス1体につき相手の手札を好きな数捨てる」
攻撃力1200。
「そんな……」
「ほら全部捨てな」
決闘魔法はルール違反を許さない。僕の手札は全て墓地に送られた。
「バトル。マーメイドでダイレクトアタック!」
「ぼ、墓地にある屍界の妖精の効果。これをゲームから取り除くことで、このバトルを終わらせる……」
「チッ」
なんとか助かったが、僕はついに体力を尽かして膝から崩れ落ちた。
(奴は手札を温存した。ということはまた捨てて展開させるつもりか……)
僕はついに脱力した。
(なんだろうこの感じ。なんだか懐かしい……)
そうだ。僕がスリをしくじったり賭けデュエルで負けたりした日はいつもそうだった。
ずだ袋のように道端に捨てられて、誰にも目をかけてはくれなかった。その時に限って雨がしとど降り続けて、風邪もたくさんひいた。
この世の全てが僕を苦しめるためにあるような気がしてた。
【今日の最強カード】
【アントワネット・ザ・マッドネス】
生息地:水の国
種族:マリブ・ゴースト
攻撃力:0
守備力:0
効果
①このモンスターが破壊された時に発動する。自分の手札を全て捨て、同じ数だけドローする。
フレーバーテキスト
かつて、海の神に生け贄として捧げられた少女がいた。
その夜、村は一夜にして消えた。
【マーメイド・ザ・マッドネス】
生息地:水の国
種族:マリブ・ゴースト
攻撃力:2500
守備力:0
効果
①このモンスターが「マッドネス」カードの効果によって召喚された時に発動する。相手のカードを全て破壊する。
①このモンスターが破壊された時に発動する。自分の手札を全て捨てる。
フレーバーテキスト
美しいものを見て死にたいのなら、海底都市に攻め込むといい。
【作者より】
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次回は一旦デュエルを中断し、ユーゴの回想に入ります。回想が終わったらデュエル再開です〜。
いいね、コメントなどくださるととても励みになります。星での評価、レビュー、作者や作品のフォローなども入れてくださると泣いて喜びます。
次回は本日17:00〜20:00頃に投稿予定です。よろしくお願いします!
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