第15話「本当の強さ」(デュエルパート2)

【夢藤のターン】


 手札は全て撃ち抜かれたが、辛うじて抱えていた逆転のカードがその損失を埋めてくれた。


「やるなフィアナ! だが諦めないZE!」


「ふふ。カモーン!」


 俺の手札には咆哮、復活、爆炎が1枚ずつ。


(ピーコックはバトルによって後続を出し、ファルコンの攻撃力も高い。ラブバードも必ず相手を葬る。ならバトル対象は――)


「行くZE俺のターン、ドロー!」


 よし、これなら!

 俺は引いたカードをそのまま出した。


「俺は『ライト・ドレイク』を召喚! さらに『双竜の復活』を発動し、墓地にいるレフトドレイクを召喚! そしてバトル! 俺はライトで『スラッシュ・ロビン』に攻撃!」


「来ると思ったわ! バード・ネストのもう1つの効果を適用! 相手ターンに1度、自分の場のバード・フォーク1体を手札に戻す。選ぶのは当然ロビン!」


 ロビンの周囲から無数の羽根が現れ、それを飲み込んだ。


「攻撃対象が消えたか。なら俺はライトで『デストロイ・ラブバード』に攻撃!」


「ラブバードの――」


 ライトがラブバードに迫る。このままでは相打ちとなり、渋い。


「待ちな。そうはさせない! 俺はこの攻撃時に『双竜の爆炎』を発動! 俺の墓地か場にライトとレフトがいれば、俺の墓地カードの数まで相手のカードを好きな数破壊できる!」


 これにはユーゴ戦を制するきっかけとなったカード。これには本人も反応した。


「ムトーの墓地カードは5枚です!」


「そうだ! 俺はフィアナのカード2枚、全てを破壊するZE!」


 ドレイク型の炎がフィアナのカードたちを包み込もうとする。

 だが、フィアナは笑っていた。


「……いいね。いいねいいね! このギリギリのせめぎ合い! デュエルはこうでなきゃ!」


「まだ何かあるのか!?」


「うおおおおお!!! 燃えるわあたしのデュエ魂! 私は伏せた魔法『床掃除』を発動! 爆炎を破壊よ!」


「なっ――」


 炎よりも大きな雑巾がそれをかき消そうとする。






「それはどうかな!」






「えっ?」


「俺は『双竜の咆哮』を発動! 俺の場にドレイクモンスターがいれば、相手のカード効果を打ち消す!」


「ま、まさか!」


「そうだ。俺が無効にするのは床掃除!」


 ライトとレフトが雄叫びをあげる。すると巨大な雑巾が散った。


「床掃除が不発になったことで爆炎の効果が有効となる! 改めてフィアナ、君のカードを全て破壊だ!」


「そんなあ!」


 フィアナのフィールドは燃え上がり、炎の中から2体のドラゴンが立ち上がった。

 デメリットにより俺のライフは半分だが――。


「これで終わりだ! ライトとレフトの攻撃!」






デュエル終了

勝者 夢藤勝武






「負けた……」


 フィアナは清々しい笑顔で地面に仰向けになった。俺は解放されたデッキを取る。


「楽しいデュエルだったZE!」


 俺はフィアナの手を取り、体を起こしてあげた。


「うん!」


 フィアナは心からの笑顔を見せた。

 しかしフィアナはデュエルに負けた。同行は許されない。しかし本人はあっけらかんと笑う。


「楽しいデュエルだったけど負けたからね。同行は諦めるわ」


「フィアナ」


 その時だった。後ろのほうから拍手が鳴った。

 パンゲア王の拍手。後ろにはユーゴはもちろん、たくさんのエルフが俺たちに拍手を送っていた。

 少しするとパンゲア王は手を伸ばし、静まるように促す。

 静まり返った中パンゲア王はフィアナに寄り、その手を取る。


「いいものを見させてもらった」


「でもお父様。あたしは負けたので――」


「何を言っている。お前は勝っていたじゃないか」


「えっ?」


「お前がオールハンデスを決めた時、ショーブくんは逆転のモンスターを持っていた。それがなければ勝っていただろう。彼の山札の順を覚えているか?」


「えっと。確か双竜の咆哮、復活、爆炎の順。……あ」


「わかったようだな。その並びの時点でお前の勝利は決まっていたのだ」


(その通りだ……)


 ドローしても咆哮では切り抜けられない。生き残っても次のドローで使えるのは復活のみ。

 それでドレイクを出してもピーコックが新たにアタッカーを呼び出す。


「それに私はお前のデュエルの姿勢に『強さ』を見出した。熱いデュエルは互いの最善と最良を尽くした先にある、だったな」


「うん? うん」


「その通りだ。カードに頼ってばかりでは本当の強さはない。デュエルとはそれを使いこなす頭脳と閃きが大事だ。今回お前は負けてしまったが、その思考さえあれば大丈夫だ。どんな戦いにもついていける」


「……いいの? あたし出て行っちゃうけど村は?」


「はは。お前1人欠けたところで滅ぶ我が村ではないわ」


 フィアナはしばらく黙っていた。

 しかしすぐに「お父様!」とパンゲア王に抱きついた。


「不自由な思いをさせてすまない……。お前をもっと近くで見ていればよかった」


 フィアナはしばらく黙っていたが、すぐに「お父様!」とパンゲア王に抱きついた。2人は熱い抱擁を交わす。仲直り出来たかな。


「ありがとうお父様。あたしショーブくんやユーゴくんと一緒に世界を知って、強くなって混沌のデュエル復活を止める!」


「その意気だ。いつでもどこでも元気であれ。そして誓うのだ。仲間を守るために、野望を打ち砕くために戦うと」


 フィアナは何度も頷いていた。


 パンゲア王は少しすると俺とユーゴを呼び、それぞれの頭に手を置く。


「ありがとう。君たちのおかげでフィアナと打ち解けることが出来たよ」


「パンゲア王」


「別れは寂しいが、この子もきっと巣立ちの時なのだろう。よろしく頼む」


 パンゲア王の素直な笑顔が見られた気がする。俺は返す。


「わかりました。フィアナさんと一緒に野望を食い止めて見せます」


「うむ。ならば私たちは情報面で支えよう。それからあれを」


 すると側近が俺たちに1人ずつ小箱を渡した。


「これは?」


 ユーゴが言うと、パンゲア王は微笑みながら言う。


「開けてみるといい」


 小箱を開けるとそこには小瓶があった。水色の液体で満ちている。


「この森で採れる草から作った薬だ。飲めばたいていの病気は治るし、怪我に塗ればすぐに効く。それからあれも」


 側近がまたも俺たち3人に渡す。今度は小さな包みだ。開けてみる。


「この森でしか採れない宝石だ。3500万ジュエル分はあると思う。売るなりで金にしてもいいしカード生成に使ってもいい」


 思わず舌が浮つく。


「しかしこんなには……」


「冒険者として活動するならそれくらいは必要になる。自由に使うといい」


「い……いいんですかこんな……」


「いいさ。それにこれは村を守ってくれた君たちへの恩でもある。受け取ってくれ」


「はあ……。わかりました。ありがとうございます」


 その時、パンゲアがパッと笑顔を見せる。


「ああそうそう! ちなみにその宝石だが、買取に出す時は必ずガレア村の王、パンゲアの代理ということにしてくれ。買取先も神都と連携しているところでな。必ずだぞ!」


「は、はい……」


 こうして俺たちは祝福の門出を受けた。


「困ったらまた来なさい!」


 パンゲア王は涙ながらに笑う。俺たちは手を振って返した。


「戦いが終わったら戻るからねお父様!」


 少しずつ、少しずつ。俺たちは前に進んでいる。






【今日の最強カード】


【双竜提督 ドレイク・シューター】


生息地:光の国

種族:ライトニング・ドラゴン


攻撃力:1500

守備力:0


効果

①このモンスターが相手によって捨てられた時、または相手ターン中に捨てられた時、発動してもよい。このモンスターを墓地から召喚する。


②このモンスターが①の効果で召喚された時に発動する。自分の山札の上から3枚をお互いに確認し、その中にある「ドレイク」と「双竜」カードを全て手札に加える。それ以外のカードはデッキに戻してシャッフルする。


フレーバーテキスト

古の時代より、雷は稲穂をもたらすものと信じられてきた。






【双竜の咆哮】


単発魔法


効果

①自分のフィールドに「ドレイク」モンスターがいる時にのみ発動してもよい。相手のカードの効果を1つ選び、打ち消す。


フレーバーテキスト

竜の形をした雷に打たれたことはあるかい?






【作者より】

 ここまで読んでくださりありがとうございます!

 エルフの森編、書いてて誰が主人公かわからなくなりました。

 ちなみにショーブの使うドレイクモンスターは全て光の国、ライトニング・ドラゴンです。

 あとテキストをちょっと整備しました。発動するのかどうかわからないカードが多かったので……。


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 次回は明日12:00〜13:00頃に投稿予定です。よろしくお願いします!

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