第14話「小鳥の羽ばたき」(デュエルパート1)

 場所を移し、近くの公園でデュエルすることになった。

 決闘魔法は俺が唱え、さらにコイントス。

 先攻はフィアナ。俺は後攻だった。






【フィアナの先攻】


「あたしのターン! あたしは『フェロモン・ピーコック』を召喚!」


 フィールドに巨大な孔雀が現れた。

 が、気になったのはそこではない。俺は思わず呟く。


「攻撃力0?」


 しかも攻撃表示だ。


「あたしはこのままターンエンド」


 ……ゑ!?






【夢藤のターン】


「俺のターン、ドロー!」


 フィアナは攻撃力0のモンスターを無防備で、しかも攻撃表示で出しただけ。後続のモンスターや魔法はおろか伏せもない。明らかにおかしなプレイングだ。


「行くZE。俺は『レフト・ドレイク』を召喚!」


 相手の手の内がわからないうちはこちらも損失を抑えたプレイだ。


「1枚伏せてバトル! 俺はレフトでピーコックを攻撃!」


「ピーコックの永続効果! 攻撃表示なら破壊されず、ダメージも0になる!」


「ならそのまま攻撃!」


「いやんっ」


(わざとらしいな)


 2体の間に煙が舞う。しかしピーコックは無事だ。


「やったわね。ピーコックの効果発動! このモンスターがバトルした後、別名のバード・フォークモンスター1体をデッキまたは手札から召喚する!」


 今度は孔雀が現れた。


「来なさい!『クラッシュ・ファルコン』!」


 攻撃力500。


「ファルコンの効果発動! このカードがバード・フォークの効果で場に出た時、相手カードを1つ破壊! あたしはその伏せたカードを破壊ね!」


「くっ」


「さらに相手モンスター1体の攻撃力を自らの攻撃力に加える!」


 ファルコンはレフトの攻撃力2000が加わり2500に!

 今ある魔法ではそのカードには対応出来ない。溜め込んだ手札5枚がもどかしい。


「くっ。俺はこれでターンエンド!」






【フィアナのターン】


「攻撃力0のモンスターを無防備に召喚。こうすれば相手は警戒して、損失を抑えたプレイをするわ。ピーコックはそんな相手を狙い撃ちするの」


「くっ。意外と読んでいるな……」


「その通りよ。カードを考えなしに出して火照るなんて所詮は仮初の熱に浮かれてるにすぎない。本当に熱いデュエルは、明確な戦略や戦術を整えてそれに沿った適切なプレイをすること。その動きが出来るようにデッキを組むこと!」


「なっ……」


「互いの最善、最良を尽くした魂と魂のぶつかり合い! それが熱いデュエルよ!」


 この子、間違いない。デュエルの才能や考え方は、俺をはるかに凌駕している。言うだけのことはある。

 その時、ようやくパンゲア王が口を開いた。


「もうここまで来たのだ。ファアナ! お前の実力を見せてみろ!」


 パンゲア王。わかってくれたか。


「お父様。あたしはこのデュエルに自分の運命を賭ける! 見てて。あたしターン、ドロー!」


 来る!


「あたしは『デストロイ・ラブバード』召喚し、その時の効果発動! 相手の場にモンスターがいれば500ダメージ!」


「ぐっ!」


 4000→3500!


「まだまだ! もう1体のラブバードも出してさらに500ダメージ!」


「うっ!」


 3500→3000!


 なんてことだ。俺はこのターンのダメージを防ぐカードを抱えていたが、それは手札にあって使えない。


「最後の召喚! あたしはさらに『スラッシュ・ロビン』を召喚し、効果発動! このモンスターを攻撃表示で出した時、自分の場にバード・フォークが3枚以上あれば相手の手札を全て捨てさせる!」


「バカな!」


 温存させたのはこのためだったか!


「ぶっこ抜いてあげるわ! 食らえオールハンデス!」


「くそっ。一旦お別れだ『ライト・ドレイク』!」


 俺は手札からライトドレイクを含め次々捨て、ついに最後の1枚を――。


「な、何してるの!?」


 場に出した!


「ふっ。こいつは相手ターン中に捨てられた時、墓地から攻撃表示で復活するモンスター! 現れろ!『双竜提督 ドレイク・シューター』!」


「そんな!」


「ドレイクシューターの効果発動! 捨てられることで場に出た時、俺の山札の上3枚を確認。その中にある双竜、もしくはドレイクカードを全て手札に加える!」


 さあ来い!


「1枚目!『双竜の咆哮』!」


「うん」


「2枚目!『双竜の復活』!」


「まあまあ」


「3枚目!『双竜の爆炎』!」


「ええ! 全部当てちゃうの!?」


「サンレンダァ!」


「むかー! でもあたしはまだ動ける! 永続魔法『バード・ネスト』を発動! その効果を適用し、自分のターンに1度、バード・フォーク1体の攻撃力を1000上げる! 選ぶのは当然ファルコーン!」


「さ、3500だと!」


「ふふん。1枚伏せてバトル! ファルコンでドレイクシューターに攻撃!」


「まだだ! 墓地の『双竜の緊急防壁』を発動! 墓地からこのカードを取り除き、このターン俺のドレイクモンスターは1度だけ破壊されない!」


「でも羽ばたきは受けてもらうわ!」


「くそっ」


 提督の攻撃力は1500。ファルコンによって破壊されて2000ダメージ。

 これで残りライフ1000。羽ばたきってダメージじゃないだろ。


「追い討ち! ラブバードで攻撃!」


「何!? 自爆か!?」


 シューターとラブバードがぶつかる。


「そんなわけないじゃない! バトル時、ラブバードのもう1つの効果を発動! このモンスターはバトルしているモンスターの攻撃力と同じになる! そーら相打ち!」


 シューターとラブバードが互いに爆発。煙の中から出てきたのはラブバードだけだった。


「ラブバードは戦闘では破壊されないのか……」


「その通り。こうやって相手を追い詰めるのがあたしのデュエルよ。これであたしはターンエンド!」






【今日の最強カード】


【フェロモン・ピーコック】


生息地:緑の国

種族:バード・フォーク


①攻撃表示のこのモンスターは戦闘で破壊されず、その際に発生する自分へのダメージも0になる。


②このモンスターが戦闘で破壊されなかった時、このモンスターと名前の異なるバード・フォーク1体を手札もしくはデッキから召喚する。


フレーバーテキスト

誘われるのは敵だけじゃない。






【スラッシュ・ロビン】


生息地:緑の国

種族:バード・フォーク


攻撃力:0

防御力:0


効果

①このモンスターを攻撃表示で召喚した時、自分フィールドに種族バード・フォークのモンスターが3体以上いれば相手の手札を全て捨てさせる。


【フレーバーテキスト】

風にざわめき、希望を吹き消す。






【作者より】

 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 フィアナのデッキは結構ピーキーですが本人はうまく扱ってると思います。よー動くもんです。


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 次回は本日17:00〜20:00頃に投稿します。よろしくお願いします!

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