第2章「古代奥義継承(シークレット・オブ・エンシェント・ギア)」

第10話「謎の覆面を追え!」

 翌朝。俺たちは早速ギルドに行くことになった。

 ユーゴはテキパキと準備しており、しっかりしているなあと感じる。

 すると、ユーゴが歩きながら言う。


「昨日の話まとめますよ」


 そう。俺は昨日これからの成功を祝いつつ、アンセルの情報を聞いたのだ。疲れて半分覚えてないが。


「おう」


「まず僕が集めた情報ですが、アンセルに本人に繋がるものはありませんでした。その代わり、彼と関わりがあるのではうわさされる覆面についてなら小耳に挟みました」


 ああそうそう。


「そいつに関する依頼が出されていればパーティになって取り組む、だったな」


「その通りです。よろしく頼みます」


 緊張を胸にしていたが、すぐにギルドに着いた。

 中に入り、クエスト張り出しスペースに移動した。

 そこで俺は気になる張り紙を見つけた。


「ユーゴ。これ――」


「ええ……」


 ――謎の覆面現る! 情報求む!


 思わずユーゴとハイタッチ。紙を取って窓口まで渡す。

 受付さんはやけに小型な中年の男性だった。彼は紙を取るといそいそと書類準備を始める。


「クエストだな。どれどれ」


 受付の人は頬を付きながら言う。


「これか。受けるのは構わねえが……」


 俺は聞き返す。


「難しいんですか?」


「ああ。この手のクエストはまず身元が見つかるかどうかからして運なんだ。この手の依頼に挑んでは肩を落として帰って来る冒険者は珍しくねえのよ」


 そういうことか。俺は顎に手を当てながらユーゴに聞く。


「どうするユーゴ」


「うん? いいんですか僕に任せて」


「ああ。俺はお前からもらったものがたくさんあるからな。これくらいは譲るのが道理だZE」


 頭ぽんぽん。

 うーんこれはイケメンムーブだZE!!!!!


「そうですか。そうだなあ。僕は受けたいです」


 ガンスルー!!! そっか男の子だもんな!!!!!

 まあ気を取り直して。


「どうしてそう思う?」


「まず身元がわからないデュエリストの情報はギルドからすると是が非でも欲しいものなんです。だから基本、神都の色々な公権力に頼んで調べさせる」


「でも張り出してあったZE?」


「そう。だからあからさまに危険でなけれぱそういうヤマは冒険者に任せる場合があるんです。そのほうが安上がりだからね」


「なるほど」


「もちろんうま味は僕たちにもあります。この手の依頼は難しいって聞いたでしょ? でも、逆に言えばそれだけの報酬が約束されてるはずです。ということで受付さん。この依頼いくらですか?」


「ん。ああ。この手の依頼は最低相場50万だな。もちろん貴重さや重要さによってさらに上がるがな」


「ありがとうございます。――なんて具合です」


「おお。やる価値は大いにあるな!」


「決まりですね」


「ああ! よし親父さん。そのクエスト俺たちに回してください!」


「おお……。まあ気を付けなよ。最新の情報じゃ、その覆面は北の森付近で見かけたってうわさだ」


 俺は感謝を伝える。


「助かります!」


「おう。ただし期限は今から3日だ。情報が掴めたらここに来いよ」


「「わかったZE!」」







第2章

古代奥義継承シークレット・オブ・エンシェント・ギア






 歩くこと数時間。俺たちは北の森を歩いていた。

 俺はあることが気になっていた。


「モンスターが出そうだZE」


「出ますよ。ここはエルフの森です」


「エルフもデュエル出来るのか?」


「出来ますよ。強さは生えてるカードによりますけど」


「……生えてる?」


「不思議ですか? そこらへんに生えてるでしょ。あ、ほらこういうの」


 ユーゴがしゃがむと、その手にはカードが。

 適当な草のイラストだ。

 名前は……なんだ? テキストも読めない。意☆味☆不☆明の文字がずらりと並んでいる。


「なんて書いてあるんだ?」


「わかりません」


「えっ」


「こういうのはデュエルでは使えないし、決闘魔法でも弾かれます。生成素材として取っておきましょう。あ、これもこれも。あとこれも」


 ユーゴは落ちている野生のカードをちまちまポケットにしまっていく。


 その時だった。爆発と共に誰かの叫び声が聞こえた。遠くだ。

 俺たちは急いで声のほうに向かう。そこではモンスターが見えた。


(デュエルか!)


 俺たちは息を切りながら走る。しかしデュエルは既に終わりかけだった。


「ダイレクトアタック」


 誰かがモンスターにそう命じた。

 すると巨大な樹木が、自らの枝でエルフの少女を突き刺そうとする。


(危ない!)


 俺は咄嗟に走り込み、少女を抱えた。


「ぐっ!?」


 肩に浅く切り傷が走った。バカな。カードは実体化しないはず。いや、それよりも。


「大丈夫か!」


 声をかけるが、少女はうめき声しか上げない。

 ユーゴが追いつく。


「ショーブ大丈夫ですか!」


「大丈夫だ浅い。それよりも今の攻撃どういうことだ? 実体化していた」


「ぼ、僕にもわかりません。カードは幻でしかないはず。なぜ……」


 その時、向こうから声が聞こえた。


「それをお前たちが知る必要はない」


 男の声だった。この少女の対戦相手か。

 しかも顔には覆面を付けている。

 まさかこいつが。色々聞く必要がありそうだ。


「この子をデュエルで傷付けたのはお前か?」


「その通りだ」


「デュエルは実体化しないはず。どうやった」


「答える義理はない」


「なら質問を変える。アンセルという男を知っているか」


 覆面は少し固まる。


「ほう。神都もずいぶん早く嗅ぎつけたものだな」


「どうなんだ」


「いかにも。私はアンセル様の忠実な部下だ。だが渡す情報はここまでだ」


「そういうわけにはいかない。デュエルでお前の知ってることを話してもらう!」


 相手はカードを実体化させるが、気にしてはいられない。

 その時、覆面はカードの姿で自らを隠した。


「その少女のライフは0。これにてデュエルも、お前たちとの馴れ合いも終わりだ」


 デュエル終了と共に、そのモンスターが眩い光と共に消えていく。


「ま、待て! 俺と、俺とデュエルしろおおおおお!」


 目を開けると、その場からは既に男も消えていた。








【作者より】

 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 なんだかシリアスになってきました。逃げるな卑怯者!


★最近夢藤の名前表記が日本語の順なことに気付いたため、呼ばれ方をショーブに統一します(それ以前のものは逐一ショーブに統一)。

 申し訳ありません。ちょっとしたポカでしたがどうかお付き合いください。


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 次回は本日17:00〜20:00頃に投稿します。よろしくお願いします!

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