第8話「デュエリストの証」(デュエルパート2)

【キースのターン】


「俺のターン、ドロー」


 あちらは羽根男、蘇生男と伏せが2枚。俺の場にはマーシャルと伏せが2枚あるが、気持ち的にはこっちが劣勢だ。

 キースのターンは続く。


「行くぞ。俺は伏せてあった永続魔法『男の世界』を発動。緑の国、種族ヘドリストモンスターの攻撃力を全て1000上げる。ただし各ターンの終わりにその攻撃力は500ずつ下がる」


 永続的に攻撃力を1000上げるカード!

 だが耐えろ。そのカードは攻撃力を500ずつ下げ続けるデメリットがある。

 なんとか耐えるんだ!


「聞こえたぞ。お前の心の声が。ここを耐えれば、耐えれば――とな」


「ゑ?」


「そうはさせない。伏せてあった魔法『怨念をまとう剣』を発動し、羽根男に装備。俺の墓地のモンスターを好きな数マジックゾーンに置き――」


 置いたのは攻撃力0の補給男と支援男だ。


「その数だけ追加で攻撃だ。攻撃力もその数だけ1000上がる!」


 これで羽根男の攻撃力は4800。マーシャルの攻撃力が2500だから、3回受ければ11900ダメージ!

 いくらなんでもオーバーキルが過ぎる!


「い、1枚に効果盛りすぎだぞ!」


「『物欲の壺』なんていうイカれたカードを使った奴に文句を言われる筋合いはない。それよりもバトルだ。カードを伏せ、羽根男でマーシャルに攻撃」


 マーシャルが破壊され、残りライフは1500!


「うっ……。ううっ!」


「いい絶望の顔だぜえ……。なら更なる絶望をくれてやる。俺は羽根男で捨てておいた魔法『ヘドロ』を発動!」


「ぼ、墓地から発動する魔法だと!」


 キースは歪んだ笑みを浮かべる。


「くく。その通りだ。こいつは男モンスターが場にいれば発動出来る。その効果は、男モンスターの攻撃と共に魔法を1つ破壊する効果!」


「な、なら俺はそれを――」


「発動する気か? だが残念。これに対して相手はカードを発動出来ない!」


「なんだと!」


「ヘドロはまとわりつくのよ」


 伏せカードにヘドロがまとわりつき、破壊される。

 破壊されたのは「双竜の革命」。全てのドレイクを復活させる逆転のカードだった。

 俺は破壊された魔法の勢いで煙に飲まれる。


「バカな……」


「さあこのまま羽根男で攻撃! 消えな、人権欲しがり野望!」


 その時、俺は微かに笑った。


「ふふ」


「な、何がおかしい!」


「キース。今確か攻撃と言ったな」


「何?」


「ふふ。俺の手元にもう1枚のカードが伏せてあったのを忘れたのか」


「魔法カードか!」


「その通り。相手の攻撃宣言がスイッチとなり、発動する魔法がある!」


 俺は煙を払い、カードを表にして発動した。


「発動!『双竜の反旗』! 俺の場にドレイクモンスターがいる時、相手のモンスターを全て破壊!」


「バカな!」


「さらに墓地と場のドレイクモンスター、さらにこのカード以外の双竜カード1つにつき500のダメージ!」


「な、なんだと! 確かお前の墓地は――」


 キースは指折り数え、少しすると「まさか!」と叫んだ。


「そうさ。まず羽根男で潰されたカードは『床掃除』の2枚を除いて全て双竜魔法だった。さらに前のターンに使った『双竜の覚醒』と『双竜の錬成』――」


「4枚。こ、こいつ!」


「まだだ。さらに墓地にライトとレフト。さらににマーシャル――」


「な、7枚!」


「そして8枚目! お前がヘドロで破壊した双竜の革命!」


「ぐ、ぐぬあああ!」


 キースは額に血管を浮ばせて俺を睨んでいた。

 反旗からドレイクの炎が形作られ、それがキースめがけて飛んでいく。


「食らえ! 4000ダメージ!」






デュエル終了

勝者 夢藤勝武






 決闘魔法が解かれ、辺りが元の薄暗い部屋に戻る。


(つ、疲れたZE……)


 俺は決闘魔法から解かれたデッキを拾い、事務員がいる部屋に戻ろうとした。


「じゃあな。楽しいデュエルだったZE。ハンデッド・キース」


 その時だった。


「ま、待て!」


 うずくまったキースが俺を呼び止める。


「見抜いていたのか? 俺があの時何らかの破壊カードを使うと。不意の一手を打つと!」


 俺は足を止め、キースを見て言う。


「それか」


「どうなんだ。ええ!」


 俺はデッキをしまって言う。


「……狙ってたわけじゃないさ。ただ、アタリを付けただけだ」


「アタリだと?」


「ああ。それに気付いたのは、お前が羽根男で俺に壊滅的被害を与えたターンのこと」


 ――捨てたカードは何1つ無駄にはしない。それが俺の戦い方だ。


「捨てたカードは無駄にしない。お前のその言葉で、俺はハンデッドコンボのカードが全て使われていないことに気付いた。だから俺はお前を誘ってみた。絶望感溢れる顔と仕草でな」


「あの時か!」


 ――うっ……。ううっ!


 ――いい絶望の顔だぜえ……。なら更なる絶望をくれてやる。俺は羽根男で捨てておいた魔法「ヘドロ」を発動!


 ――ぼ、墓地から発動する魔法だと!


「そしたらヒット。図らずも俺のカードが破壊され、奇跡のワンショットキル成功ってわけだ」


 そこまで聞くとキースは腰を落として舌打ちした。


「ケッ。勝ちは譲ってやる。こいつを持っていけ!」


 そう吐き捨てて俺にカードを投げた。

 俺は咄嗟に受け取る。


「……『デュエリストの証』?」


「そいつを事務員に見せろ。担当がお前に決闘魔法を授けてくれるだろうぜ」


「そうか。ありがとうなキース!」


「うるせえ! とっとと行きやがれこの人権野郎!」


「ああ。またデュエルしようZE!」






【今日の最強カード】


【双竜の反旗】


単発魔法


効果

①このカードは相手の攻撃時にしか発動出来ない。


②相手のモンスターを全て破壊する。その後、墓地やフィールドに存在する「ドレイク」または「双竜」カードの数だけ相手に500ダメージを与える。


フレーバーテキスト

底知れぬ絶望の淵に沈め!






【作者より】

 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 盤面計算がちょっと大変でした。楽しんでいただけましたら幸いです!


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 次回は本日17:00~20:00頃に投稿予定です。よろしくお願いします。

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