第3話「デュエル開始の宣言をしろ伊蘇野!」(後半からデュエルパート1)

「早く光の中に完結しなさい!」


 ミナコの足蹴り攻撃!!!

 俺の背中にタイレクトアタック!!!!!


「AIBOOOOOOOOO!!!!!!」


 ズシン!!!!!!!!!!(眠れる巨人ではない)


「痛いZE!!!!!!!!!!」


 容赦無く蹴られた。しかし咄嗟に体を起こした。

 状況を整理する。これからどうするか。ポケットには地下デュエル場で得たパンが1つだけ。

 そもそもここが本当にデュエルの世界なのかどうか。よく考えると俺は何も確証を得ていない。

 確かめるためには街に出なければ。

 そう思いつつ遠くを見る。


(街はあれだな)


 中世ヨーロッパ風の建物ばかり。正しく「異世界」だ。


(なら街に行くZE!)


 そこでデュエルらしき様子を見られればよし。それに食い扶持を見つけるなら街しかないからな。


「全速前進DA!」


 そう張り切った時、俺の体がドン、と押された。


(…………?)


 懐の違和感が消えている。


(まさか!)


 足音のほうを見ると、少年が俺の財布を手にしていた。

 スられた!


「ま、待て! 返せ俺の財布!」


 くそ。もう悩んでいられない。

 こうなったら一か八か!


「君! もののやりとりならこいつで決めようZE!」


 俺はデッキを構える。すると少年は足を止めた。


(どう反応する……)


 少年は怪訝そうな目で俺を見たあと、静かに呟いた。


「ふうん。あなたデュエリストですか」


 当たり! デュエルが通じる!

 右も左もわからない世界でないことに喜びつつ、俺はさらに煽る。


「そうだ。君もデュエリストなら、いざこざはデュエルで決めるのが筋だZE」


「む……」


 少年はカフェオレのような色の、外ハネの茶髪をいじりながら言う。


「いいでしょう。デュエリストハンターは百発百中。狩人に勝負を仕掛けたこと、後悔させてあげます」


 挑発に乗った少年はデッキを取り出す。しかしそこで動きが止まった。

 なんだ? 俺は声をかける。


「どうした?」


「どうしたじゃないですよ。そっちから仕掛けたデュエルでしょ。決闘魔法唱えなよ」


「決闘魔法? なんだそれは」


 少年は固まった。そしてすぐに冷たい笑みでため息をつく。


「ちょっと……。身の程知らずっていうかマナー知らなすぎなんじゃないですか」


「み、身の程知らずだと! 俺はこれでも地下デュエル場で――」


「やーい強がり」


「お前……」


「あっはー。まあいいです。使えないなら僕が決闘魔法唱えてあげます。感謝してくださいね?」


「あ、うん。サンキュー。いい奴だなお前。名前は?」


「ユーゴです」


「年は? 体重は? こういうの初めて?」


「14。――あっ。今はそんなのどうでもいいです! 決闘魔法発動!」


 その瞬間、ユーゴと俺が構えていたデッキが消えた。


「お、俺のデッキは?」


「決闘魔法が読み込んだんです。これが使えないと人権ないですよ。僕、人以下に負けるつもりありませんから」


「へえ。色々教えてくれるんだな!」


「う、うるさいですね! そんなことよりコイントスです!」


 ユーゴは俺の財布から10円玉を取り出した。

 しかしすぐに不満を漏らす。


「これ外国の硬貨じゃないですか。ああもう表裏わかんないじゃん!」


 ああ、やっぱ通じない硬貨だったか。なら俺が決めよう。


「それは数字の書かれてるほうが裏だZE!」


「そ、そうなの? じゃあ僕は建物書かれてるほうに賭けます」


「俺は数字のほうだな」


 色々あったがようやくデュエル。

 ユーゴはコイントスをし、結果を俺に見せる。


「ふふ。建物側だから先攻は僕ね」


 先攻を取られたか。なら――。


 デュエル開始の宣言をしろ伊蘇野!


「デュエル開始ィィィ!!!」(天の声)






【ユーゴの先攻】


「僕のターン。まずは永続魔法『屍界』を発動」


 フィールドが闇に包まれた。


「さらに『屍界の吸血鬼』を召喚。その時、自分の手札を1枚捨てます」


 攻撃力1500。黒ずくめの男が場に現れた。

 いずれも見たことのないカードたちだ。異世界には俺の知らないカードが広がっているらしい。


「屍界の瘴気は死者の力を高める。永続効果により、吸血鬼の攻撃力は500上がります」


 なんかさっきからデュエリストハンターだの百発百中だの、今の妙な言い回しとか。


(うーんこれは14歳)


「先攻は攻撃出来ないけど、後悔しても遅いからね。僕はカードを2枚伏せてターンエンド」


 後悔するのは数年後の君だぞ。






【夢藤のターン】


 次は俺だ。後攻は山札から1枚引ける。

 すると、目の前に山札が現れた。ドローしろってことか。


「俺のターン、ドロー!」


 これで手札は6枚。行くZE!


「『ライト・ドレイク』を召喚!」


 攻撃力2000。


「なんですかそのカード」


「知らないのか? 一般的なモンスターだZE」


「知らないけど、効果のないモンスターなんて時代遅れといいとこですよ。まあいいです。続けてくださいな」


「あ、ああ」


 ……ライトドレイク。こっちの世界じゃモンスターのステータスの基準になるカードなんだが。あるいはこの子が知らないだけ?


「ま、いいや。魔法発動『床掃除』!」


「うわあ急に汎用カード使うな!」


 これは知っていたか。魔法を1つ破壊するカード。

 巨大な雑巾が屍界を拭い去り爆☆殺!

 破壊されたカードや単発魔法は墓地に行く。


「これで吸血鬼の攻撃力は元に戻るZE!」


「甘いですよ。吸血鬼の効果。屍界カードが破壊された時、墓地の屍界カードを1つ手札に加えます」


 吸血鬼の目が光り、効果が使われた。ユーゴの手札には今破壊した屍界が加わっている。

 リカバリーの効くカードか。早めに潰させてもらう。


「カードを3枚伏せ、バトル! ライトで吸血鬼に攻撃!」


「かかりましたね。魔法発動『屍界の災い』! 僕の場に屍界モンスターが存在する時、相手のカードを2つまで破壊です!」


 ライトドレイクが煙に包まれて破壊された。さらに伏せカードも1つ破壊される。伏せた魔法は最初のターン使えないのだ。


「ちゃんと妨害カードもあるのか」


「当たり前です。デュエリストハンターは抜け目なーいの」


 だが今ので「あのカード」が破壊されなかったのは幸運だ。

 俺は今伏せてあるカードたちに賭ける!


「俺はこれでターンエンド!」





【今日の最強カード】


【屍界の吸血鬼】


生息地:闇の国

種族:リビングデッド


攻撃力:1500

守備力:0


効果

①このカードを召喚した時、自分の手札を1枚捨てる。


②「屍界」カードが破壊された時、墓地から「屍界」カードを手札に加えてもよい。


フレーバーテキスト

死後の安息など許されない。






【作者より】

 ここまで読んでくださりありがとうございます。

 初めてのデュエルパートです!「ここ読みにくいな〜」など気になった点がありましたらコメントなどでご意見お寄せください。


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 次回も引き続きデュエルパートですのですぐに投稿します。よろしくお願いします!

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