第21話【自分の仕事】

運転手が呼んでくれた警察が到着する。

男を警察に引き渡し、駒野さんに電話をする。


「もしもし、関口ですが。」

「おぉ関口君。どうした?」

ことの経緯を説明する。

「そうか・・・わかった。今日はそのまま寮にいてくれ。」

「わかりました。」

「じゃあ後で。」

電話が切れた。

ん?後でって言わなかったか?

空耳か。だといいな。


警察の聴取を終えると、メンバーが皆、心配そうにロビーで待っていた。

「皆、大丈夫だったかな?」

黙っているメンバー。

「今日はこのまま部屋で待機してね、どうしても必要な用があったら俺に言ってくれ。できる限りのことはするから。」

「さっきの人・・・」

「うん・・・」


メンバーがどこか落ち込んだように、口籠もりながら話している。

「さっきの人がどうしたんだ?」

俺が聞くと、マイが口を開く。

「私が襲われた時あったじゃない?その時にスケジュールを流して辞めさせられた人だった。」

「そうか…それは落ち込むよな。」

「落ち込むけど、それより怖い。」


そう思うのも無理は無かった。

メンバーのスケジュールは以前、複数の社員で扱っていた。あの件で外に流していた社員は退職させたものの、他にもいないとは限らない。

この子達を守るには、社内にも目を配らなければならないな。


「うむ、怖いな」

「アスナ…」

「ナナも怖い。」

「アタシも…」

「うん…」

皆んな口を揃える。それはそうだ。

しかし、ずっとこうしてるわけにもいかないしな。


「関口くん、皆んなも揃ってるね。」

「ん?駒野さん。どうしたんですか?」

「うん、事が事だからね。警察から大方聞いた。まさか首になった逆恨みでこんな事をしでかすとは…」

「えぇ。皆んなが怖がってしまって、どうしたものかと。」


駒野さんはメンバーを見渡すと、また口を開く。

「とりあえず、寮の場所がリークされていないとも限らない。新しい寮にからから移って貰おうと思うんだが。」


なるほど、それなら少し安心出来るかもしれない。


「とりあえず、関口くん、マイ、アスナ、ナナ、マフユ、エリナ、モナを連れてこの住所は向かってくれ。」

「わかりました。」

「他の皆んなは馬渕、田中が迎えに来るからそれまで部屋で待機していてくれ。」


「じゃあ関口くん、僕もすぐ向かうから。頼んだよ。」

「わかりました。」


いつになく真剣な駒野さんの表情、メンバーの不安そうな表情に、自分の本来の仕事を思い出した。

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