第20話【自分の役割】

馬淵さんの提案に戸惑っていると、田中さんがこちらへきた。

「関口さんの歓迎会は来週でしょ。それに今から会議です。」

「だって!!あんなのが放送されたら私の関口さんが・・・」

「はいはい、いきますよ~」


田中さんが馬淵さんを引きずっていく。

うちの会社では田中さんが最強だと思う。うん。

「関口さんはメンバーを送って、事務所へお願いします。社長が呼んでました。」

「わかりました!」


メンバーを送迎バスへ誘導、俺は車で寮まで先回りをする。

車を駐車場へ入れ、メンバーを乗せたバスを待つ。

バスが到着、メンバーが降りてくる。


まだ話した事のないメンバーもいるから、こういうコミュニケーションは大事だ。

「お疲れ~」

一人一人に声を掛ける。

皆元気いっぱい挨拶をしてくれる。

「関口、夕飯はなんじゃ。」

「え!私も関口さんのご飯食べる!」

「またアスナは!エリナまで何言ってるの!」

「ナナも食べる~」

「私は関口さんのハートを・・・」

「マフユ?・・・」

癒してくれるメンバーばかりじゃなかったわ・・・

「ほら、皆早く寮に入って・・・」

不意に首の後ろあたりにがゾワッとする。

嫌な感覚に振り向き周囲を確認する。


すると3mほど後方に男がたっていた。

右手にはナイフと思われる刃物。

男から目を離さないまま、メンバーに声を掛ける。

「皆、急いで寮に入るんだ。」

「え!」

「マフユさん!マイ!皆を頼む!」

「で、でも」

「急げ!」

「み、皆!寮に急いで!!」

走り出すメンバーを見ると、男がこちらへ向かい走り出す。


メンバーと男の間に入る。

男は俺の後ろから視線を俺に移し叫ぶ。

「どけー!」

特注してくれた鉄板入りのビジネスバッグでナイフを止める。

そのままナイフを下へ弾くと男はナイフを落とし、前のめりになる。

男の腕を掴み、後ろへ捻りながら男の体を起こす。

「この手は離さないよ、もう諦めろ。」


バスの運転手に警察を呼ぶよう指示し、警察を待った。

自分の役割が何だったのかを、この出来事が思い出させた。

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