第3話【頑張ります】

店に入ると外観通り、いや、それ以上に豪華な内装に緊張が高まる。

ウエイターに案内されると、そこは他の席からまったく干渉受けることのない個室。

いわゆるVIPルームというやつだろう。

入るとそこには昼間助けた二人の女性の他に4人と男性が一人座っていた。

部屋に入ると駒野さんが男性に声をかける。

「お連れしました。」

「初めまして、私は冬元と申します。この度は二人を助けていただきありがとうございました。」

「出来ることをしただけですので、お二人が無事で何よりでした。」

すると女性二人が声をかけてきた。

「私たちからも改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。」

「いえ、本当にお二人が無事でよかったです。」

「私はこの子達のマネージャーをしております、馬淵と申します。」

「マイです。先ほどはちゃんとお礼も言えずにすいません。本当にありがとうございました。」

「積もる話もあるが、関口さんもお腹空いてらっしゃるだろう、食事を取りながら話をしようじゃないか。」


促され席に座る。冬元さんは真向い、その横には駒野さんと馬淵さん。

なぜか俺の横にはマイさん。隣のテーブルにも女性が四人。

全員が信じられないくらい綺麗なんだが・・・


緊張しながら食事を口に運ぶ、これが美味くて一瞬、隣に人がいる事を忘れるほどだ。

あまりにガッツいてしまっていたのか、横にいるマイさんが俺に声をかける。

「おかわりいかがですか?」

「ふぁ・・・すいまふぇん・・・」

ふふっと微笑みながら俺の皿にいろいろな料理を盛ってくれた。

(美人だし気配りできて、すごい人だな・・・)

「えっ・・・」

(ん?マイさんが頬を赤くしながら俯いている。なぜだ?)

お皿を受け取りお礼を伝える。

「ありがとうございます。顔が赤いですが、大丈夫ですか?お酒無理しないほうがいいですよ?」

「いえ、大丈夫です!お酒強いですから!!」

(強がってるのかな、なんだか可愛らしい人だな)

「えぇっ!もぅ・・・」

なぜだかさらに顔を赤くして俯いている。

本当はお酒弱いんじゃ・・・様子見て水をすすめようと心に決める。


しばし食事を楽しんだ後、冬元さんから声を掛けられた。

「関口さん、おのみち246のマネージャーをやって頂けませんか?」

「へ?」

「君になら、この子たちを任せられる。もちろん報酬は今よりも出します。」

「いや、え?マネージャーって、話が見えないんですが・・・」

「もしかして私たちのこと知らないですか?」

マイさんに問いかけられる。

「すいません・・・」

「はっはっ、われわれももっと頑張らなきゃいけないということだ。なぁマイ。」

「そうですね・・・」

「この娘達はアイドルグループで、この場にいないメンバーも合わせると21名いるんだが。人気が上がるとともに、ストーカーに近いファンも出てきてね。君が捕まえてくれた男もその一人なんだ。」

「なるほど。」

「今までは女性スタッフしかつけてなかったんだが、今回のようなケースがあったことで、それではこの娘達を守れない。そこで、関口さん。あなたのような人が彼女らの傍にいて、守ってくれたらと思ったんだ。」


言いたいことはわかる。

だが、俺はプロじゃない。今回はたまたま巧くいっただけだ。

そんな俺が彼女らを守り抜く事ができるとは思えない。

しかし・・・

娘とあまり変わらない年頃の子供たちが、あんな危険にさらされるのは・・・


「あの、条件があります。」

「何でも言ってくれ。」

「彼女らに危険が迫る環境じゃない時だけでいいので、専門家に鍛えて頂く時間が欲しいです。危険を排除する以上に、危険から彼女らを遠ざける術などを学びたいです。」

「もちろん、その時間と君の望みが叶う人は用意させてもらう。」


「わかりました、よろしくお願いします。」

「ありがとう!彼女たちを守ってくれ、よろしくお願いします。」

「頑張ります。」

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