第三四話 備えあれば患いなし?
四半刻ほど経過した頃だろうか?
半壊した礼拝堂の扉が耳障りな音を鳴らして開き、沈んだ色調の外套を
彼らは適度な距離まで歩み寄り、一枚の銅貨を指で弾いて
「…… 確かに
受け取った硬貨の縁に意図的な傷が刻まれているのを確かめ、狐娘のペトラが最後に勧誘した
「ここに埋めてあるのか?」
「力仕事は任せるわね、本数が足りないみたいだし」
「むぅ、仕方が無いな……」
「何処を掘れば良いんだ、
それぞれに反応を示した彼らを無言で
暗がりに身を隠して飛び込んできた小柄な影が瞬時に迫り、手前にいた魔人族の男目掛けて鋭い袈裟切りを放つ。
「ぐッ… がはッ、かひゅ!?」
双剣による右手の初撃をスコップで弾かせた上で、その隙に撃ち込まれた左手の次撃が
血の匂いがしない
「てめぇッ!!」
倒れた仲間越しに虎人族の男がスコップで刺突を繰り出すものの、相手は先端部を右鉄剣で払いながら飛び退いた。
「ちッ」
思わず舌打ちしている間にも、人影は再度の後方跳躍を行い、入口から姿を現した憲兵隊の制服など
屋根の一部が焼け落ちている場所に立つことで、月明かりに艶やかな黒髪を照らされた
「“戦争狂いの令嬢” か……」
「というか、貴方はいつ人間を辞めたのです、聖女の “護り手”」
暗がりで
「国境沿いの都市ラズヴェルで
「否定はしないが、
抜かり無いゼノヴィアの性格なら、既に神殿跡地の周辺を押さえているとしても、無為な時間の浪費がこちらを不利にするのは確実だ。
「ッ、障壁を!」
「はい!!」
叫びに即応した従軍司祭が錫杖を突き上げ、事前に構築していたであろう防御系の魔法を展開する直前、凝縮された風の弾丸が炸裂して屋根の残骸を真下に降らせた。
「「「うぉおおぉッ!?」」」
「今のうちに撤収するぞ、こっちだ」
「あぁ、異存はねぇな」
どさくさに
「ねぇ、裏口は
「多分、そっちは憲兵隊が抑えているだろう」
端的に答えつつも旋風を
「用意周到ね……」
「無駄口は後にしてくれ」
若干、呆れた声を漏らす兎人族の女に一声掛け、率先して廃墟の外へ飛び出す。
鮮明になった視界で状況を把握すれば、やはり
「奴ら、あんな場所からッ!」
「ゼノヴィア隊長はまだ中か!?」
「くそッ、俺達だけでも追うぞ!!」
慌てて動き出した連中を横目に路地へ駆け込み、街の夜闇に紛れようとするが……
「
「すまん、恩に着る」
「お言葉に甘えさせて貰うね」
狙いは先頭に立っている数名、その足元に六連の小風刃を喰らわせた。
「うぉッ!?」
「ぐうぅッ!」
脚や太腿を裂かれながら、勢い余った
その間隙に乗じて、今度は両腕に淡い魔力光を宿らせて突き出し、水平に伸びる小規模な竜巻 “征嵐” を撃ち出した。
「ちょッ、躱せねぇぞ!」
「嫌がらせかよ、おいッ!!」
「「「ぐがぁああぁああッ!?」」」
狭路で逃げようのない前面の憲兵達を巻き込んで、視界不良で状況に追いつけない後続の連中ごと、すべてを暴風が薙ぎ倒していく。
されども一陣の風が収まった直後、埃に
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