第三二話 戦場にいるのは殺害に積極的な兵士か、消極的な兵士の二通りだ
因みに計画を実行に移すための準備が整い、領軍主導の抵抗勢力に関わる者達が増えていけば、否応なく露見する確率は上がってしまう訳で……
最前線から呼び戻されて、第二憲兵隊の指揮官に任じられた “戦争狂いの令嬢”、ゼノヴィアが些細な違和感を持ったことは必然なのかもしれない。
「どうしたんですか、隊長?」
街角で不意に足を止めた軽装姿の淑女に後ろの部下が問い掛けると、その声に前を歩んでいた者達も揃って振り返る。
「…… いえ、大した事ではありません。お気になさらないで下さい」
「了解です、手早く警邏を終わらせて昼休憩と致しましょう」
「良いですね、手頃な店が無いか目を光らせておきます!」
やや砕けた調子の憲兵達に彼女が頷き、綺麗な翡翠色の瞳で見詰めながら微笑むと、彼らは少しだけ照れた様子で
男所帯の軍隊では若い女性が極端に少ない事もあり、物騒な二つ名が
(可憐だ…… 一体どのあたりが “戦争狂い” なんだ?)
(聞いた話だと、攻め手に
至極小さな声で
批判を恐れずに言えば、戦場に
先陣を切って戦う者達が持つ、“自身の
父母に先立たれた没落貴族であれども心まで貧しくならず、
(はぁっ、微妙な二つ名は返上したいのですけど……)
耳に届いた言葉に溜息しつつも、意識は研ぎ澄ませたまま大通りを歩けば、やはり身ごなしや体格で軍経験者と判る亜人らの姿が目立つ。
さらに追加で気掛かりなのは、少し前まで
「家畜に甘んじるつもりはない、といった面構えね」
独り言のように囁かれた言葉は風に乗り、雑踏に紛れて
必然的にベルクス王国軍が抱いた懐疑や、不穏な空気は取り調べを受けた住民らを起点に拡散するため、徐々に
その影響か、日頃の接触は厳禁しているにも
「…… 何か不測の事態が起きたんだな、ジグル」
「あぁ、取り急ぎ、御嬢に連絡しておこうと思ってな」
こちらも注文していた同じ銘柄の酒を
「昨日、うちの構成員がひとり奴らに捕まった。それで対応を考えてる途中、ふと気付いたんだが、皆に与えられている情報が少な過ぎやしないか?」
多少の疑惑が籠められた眼差しを受け止めてから、他の協力者らに聞かれた時と変わり映えしない言葉を返す。
「共倒れを避けるためだ、我慢してくれ」
「クラウド卿、あんたの事は信用している。けどな、捨て駒にされている感が
不満そうにグラスを傾けた相手の指摘は
重要事項の伝達も領軍の関係者までに留めているため、末端が下手を打ったところで、こちらに
「
「暫くそこで身を隠せと?」
「長くは待たせないさ、悠然としている余裕も無い」
そう前置きして表面に
一見すると装飾品でしかない小物を受け取って眺め、瞬間的に息を呑んだ直後、
同様の物は娼館に巣食うペトラ
「はぁっ、慎重なのは歓迎だが、“秘密主義ここに極まれり” だな。もう大半の準備が済んでいたのかよ」
巧妙に偽装された内容を読み解き、決起まで残り三日だと理解したジグルの愚痴を聞き流して、腰元の革袋から取り出した羊皮紙に筆を走らせる。
念の為、それに
「ハイネア商会は知っているか?」
「あぁ、中堅の装飾品屋だな、問題無い」
「
その
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人物紹介 No.15
氏名:ゼノヴィア・クライシェ
種族:人間
兵種:
技能:双剣術・槍術・馬術
中級魔法(火)
敏捷性強化(中)
動体視力強化(小)
裁縫・料理
節約生活
称号:没落貴族
戦争狂いの令嬢
憲兵隊長
武器:
武装:女性向けの軍服
徽章付き外套
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