第十二話 惚けているのでない、白を切っているのだ
「むぅ、べた褒めされていますね、クラウド」
「黒曜公はエルフ族で容姿端麗だから、良かったじゃない」
「…… あくまでも、戦術の提案に対する謝礼と賛辞だろう」
別に名指しの称賛を受けてないため、
何気に結構な厚みがあるので、表面を薄く削って再利用する事も可能だ。
(まぁ、公の書類には向かないけどな)
僅かでも加工の痕跡が残れば、
「いつまでも高価な羊皮紙に頼らず、安価で丈夫な記録媒体を普及させないと、知識の普及も
「以前、話されていた
「えぇ、耐性は羊皮紙に
「それらを踏まえて後世に残すべく、大賢者ヴィルズは『
「あはは、燃やされたら意味ないですよね」
身も蓋もない言葉でアリエルが纏め、やや脱線していた話を強引に断ち切ると老執事のレイノルド
「それよりも、南東領の戦端が開いたってことはさ」
「我らも動くという認識で構わないな、若造?」
近場で昼食を取っていた側近の吸血鬼らが
「
「ふむ、腹が減っては戦などできんからな」
「あっ、そう言えば私の焼き魚! 完璧に盗られたんだけど!!」
恨めしそうに使い魔の
(傭兵家業の延長で、魔族が単なる亜人の
聖堂教会の教えでは結束を深める意図もあり、人間より優れた特定の種族を悪鬼羅刹と喧伝しているものの、実際は理性があって意思疎通も可能な相手だ。
一説によると、大昔の人々はドワーフ族や白磁の
「何処で
もし、多々ある種族の枠を越え、“歴史の早い段階” で亜人達が
案外、先に仕掛けたのは人間かもしれないと思いながら、本格的な冬の前に獲れる赤身の
「久し振りの柔らかいパンだから旨いな」
「ふふっ、潜伏中は火が使えませんから」
微苦笑した吸血姫が頷き、辺境の街で商隊と
「ぬうッ、必要な事とは言え、主に我慢を強いるとは余りに不覚!」
「はいはい、さっさと私達の
いつもの如く
こちらにまで強制するつもりは無いようだが、相変わらず堅苦しい
「えっと… まだ掛かりそうね。こっちは先に出るけど、構わない?」
「あぁ、くれぐれも慎重にな」
「ん、了解、程々に頑張る。全ては純潔たる我らが姫のために~♪ ってね」
ひらひらと手を振り、吸血鬼だけで組織された特異な一個小隊を率いて、赤毛の騎士令嬢が立ち去る。
彼女の身辺を固める者達は領内に
「その伝統が多種族で構成される領軍にとって、最良とは限らないのね」
「寧ろ、害悪の側面が強いだろう、官職を
「うぅ、私も薄々は気付いていたのよ?」
されども前領主である亡き父親や長兄に遠慮して、具申できなかったようだ。
先日の提案時にもレイノルドを筆頭に根強い反対があったので、部隊長は吸血鬼らが継続して務め、各隊内で比率が高い種族の代表者を副長に
そうして任を解かれた者達が
「遺恨が残らないと良いけど……」
「最終的にエルザ様の決めた事なら、我らに
全て
「特に問題は無さそうだな、すぐに俺達も出よう」
「ん… どうか気を付けてね。戦争とはいえ、
「あぁ、その
誰かに心配されるのは
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