第五話 敗残兵はしぶとく生き残る
逆説的に考えると、聖堂教会の司祭には人間と吸血鬼の判別が不可能なことを知り、あきれ果てて思わず天を仰ぐ。
(過激派主導の異端審問なんて疑わしいと感じていたが、そこまでとは)
「
「それは
「首都陥落の後、健在な三領地と違って撤退する土地が無かったし、大隊単位に分けて人狼公が治める南西領へ向かわせたから、その境界線付近で集結しているはずよ」
少々曖昧に答えた吸血姫は薄紅い瞳で狐娘を
人狼らが従っている事もあり、身分が高いことは理解していたものの… 断片的に聞こえてきた情報を統合すると、狐娘ことペトラは獣人系種族を率いる領主ヴォルフラム・ゼーゲンヴァルクの愛娘らしい。
(人狼公と血の繋がりは… いや、母親が狐人の可能性もあるな)
この場では
首尾よく、想定よりも円滑な撤収を実現していたようだが、首都イグニッツを奪われた中央領の軍勢は未だ各地に
「それは戦力の薄い後方で、敵方の補給線を狙ってやるべきだろうに……」
「同感だぜ、クラウド。前線でやったら、最初は良くても各個撃破の
「さりとて、友軍部隊がベルクスの侵攻を遅らせているのは事実です」
「策を
「毎度のことながら唐突に振られても困るぜ、
やれやれと軽く両肩を
彼らを露払いにして令嬢の二人が続き、俺や残りは
強壮な人狼族が健脚であるのは当然として、頭脳派の吸血姫も封印を解かれた魔力で身体強化などしているため、翌々日にはディガル部族国の中央領と南西領の境界線上に到達した。
そこから少し森の奥に入った場所で先頭の二名が足を止め、斜め前方の空間に視線を向けて
「ウォルアゥ~ (お味方発見~)」
「グォア ガルォフ (他には異常無し)」
「彼らは黒狼殿の手勢か?」
「いや、あいつらは北西領軍の所属だ。犬人は何処にでも定住しているからな」
何やら適応能力には御墨付きのある人狼の近縁種がハンドサインを送ると、数体の屍鬼を従えた吸血鬼が出てくるあたり、確かにそうなのだろう。
「エルザ様! よくぞご無事で……」
「ん、心配を掛けたわね」
「我らが姫の救出に感謝致します、ペトラ嬢」
「
ぶっきらぼうに言い放ちつつも照れる狐娘に対して、深々と頭を下げた相手の関心が今度はこちらに向き、友好的な雰囲気で柔らかい微笑を向けてくる。
「こんな時勢だからこそ、同胞は歓迎させて貰う」
「
歓迎に会釈を返しながら、純ミスリル製の指輪が持つ偽装効果を実感していれば、吸血鬼族の指揮官は一声掛けてから
黙々と半刻ほど移動した頃合いで、やや逡巡していた吸血姫が口を開き、遠慮がちな雰囲気で自身の
「…… 私が捕まってから、皆に大きな被害はなかった?」
「はい、その場合でも撤退を優先するよう、厳命されていたのが奏功しました」
積極的に選択する “交戦の余力を残した撤退” は、眼前の “
(これなら王国軍に対抗する戦略にも、多少の幅を持たせられるな)
細めた視線の先、樹木の密度が薄い川辺に見えてきた陣地と連隊規模の亜人兵らを眺め、朧げに組み上げていた献策に修正を加えていく。
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★人物紹介 No.4
氏名:ペトラ・ゼーゲンヴァルク
種族:狐人
兵種:
技能:中級魔法(土)
土塊錬成
初級幻術
完全獣人化
称号:人狼領主の令嬢
武器:
武装:フード付き外套
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