第四話 病める時も健やかなる時も
「…… 確かに首都イグニッツと、進軍経路にあった私達の北西領は占領されたものの、残りの三領地は健在ね。そう簡単に攻め落とせるほど
「あぁ、迎撃体制を整えて、次の一手を打つことも可能だ。どうにかして戦力の均衡を作り出せたなら、好転の
亡き聖女の願いに添うため、ここ数日考えていた事柄を告げれば、
「殺し殺されの連鎖、お嫌いなのでは?」
「さっき自分で言っていたな、現状で必要なのは武力だと。戦争に区切りを付け、知識が活かせる土壌を育む、これより後に生まれてくる者達のために」
そう
少しの間、ぶつぶつと小声で呟いた後、彼女は薄紅い瞳に決意を秘めて、真っ直ぐに視線を交わらせながら問い
「死滅した父に代わり、暫定的な吸血公として聞くわ。望む明日に辿り着くまで、恐らく
「掲げる理想が違わない限り、貴女の
「ふふっ、そこは “病める時も健やかなる時も” でしょう」
反射的に鞘から血錆びの鉄剣を抜き、矢避けの魔法 “ウィンドプロテクション” の術式も組み上げていくが、木々の合間より姿を見せたのは外套を
「ごめん、経路偽装で南東に抜けて迂回したから遅くなった」
「いえ、助けに来てくれただけで嬉しい。ありがとう、でも……」
「うん、バドス兄弟が殺られた。けど、あたし達がエルザの奪還を敢行した結果で、手を下したのも薄汚い人間どもだ」
ともすれば可愛らしい容姿に似つかわしくない、殺気の籠った
やや難しい表情になった彼女は軽く額を押さえ、先ずは安全確保のために森の奥へ移動する事を提案した。そうして黙々と四半刻ほど歩いた場所で、改めて狐人族の少女に語り掛ける。
「彼は私が雇った傭兵のクラウド殿、凄腕の風使いよ」
「…… どれだけ強くても、人間は信用に値しない」
「さりとて、亜人国家のニルヴァを
やんわりと
下手に軍勢を動かして、近隣諸国の人々を刺激するのは得策と言えず、何やら自縄自縛に陥っている。
それを
彼らも先程の狐娘と同様に骨格が変形する音を鳴らし、滑らかに人の姿へと転じて少々困惑気味に苦笑した。
「
「そいつが貴女を助けたのは見ていましたが、こちらは二名も同胞を失っています。うちの戦士長も無条件では尻尾を振りたく無いんですよ、分かってください」
先に発言した
ただ、皆の視線を一身に受けた吸血姫に応じる様子はなく、若干の沈黙で注意を
「黒狼のヴォルギス、彼が人の身で我らと歩む意義は大きい。いずれは
「だからと言って、その見掛けだと要らぬ反感を買うぞ?」
「あたしは外見に関係なく気に入らないけどね」
そっぽを向いた不機嫌な狐娘はさておき、振り向いた吸血姫が右掌を差し出す。
何かを
「例の首輪というより…… ミスリルか?」
「ん、それ、折角だから有効活用させて貰いましょう」
ぼとりと光輝を失った魔法銀の残骸が地面に落ち、開かれた掌には複雑な魔法文字の刻まれた指輪が錬成されていた。
「戦闘では
そう言いつつも、こちらの
「ッ、何だ!?」
「別に無害よ、装着者の魔力を利用した常時発動の偽装だから」
「ふむ、黒髪緋眼の
感心したようなウォルギスの言葉が正しいなら、俺は
少々戸惑いながら色の変わった前髪を弄り、伸びた牙を触りながら違和感など感じていると、容赦なく追い打ちが掛けられる。
「容姿はこれで良いとして、血も飲めるようにならないとね♪」
「……
「聖堂教会が
にんまりと笑う吸血姫の話では “太陽の光で灰になる” とか 、 “
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人物情報(更新)
氏名:???? → クラウド
種族:人間 → 吸血鬼(偽)
兵種:傭兵もどき→
技能:中級魔法(風)
風絶結界
身体強化(中)
双剣術
称号:風使い
武器:鉄剣(主)
血錆びの鉄剣(補)
武装:
New!! 偽装の指輪
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