赤い雨を見たことがある。

 秋の夕暮れ。廃墟の一室で解体作業が終わった日のことだ。

 血まみれになった服を脱いで、まとめて、袋に詰め込んだ。それからタバコを一服吸いにその部屋のベランダに出た。

 咥えていたタバコの火が消えた。あかね雲に覆われた空から溢れた雫がパラパラと降ってきていた。

 蔦や苔に覆われたマンションだったこの建物は血を被った様に赤く染まっていた。

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