第10話 ハロウィンは夢と希望で溢れてる

『怜樹くん、こないだの雑誌で見た姿、めちゃくちゃカッコよかったよ。ここにサインしてくれる?』

『ああ、いいよ。はいどうぞ』

怜樹は自分のファンを大切にしていて、ひとりひとりにサインを書いた。

怜樹は少し謎めいた子だった。

男装モデルは高校卒業してからやっていた仕事だった。

ロイドに来たのは店長とモデル仲間が友達だったから、流れで働き始めただけということ。

怜樹の家は元々裕福でメイドさんや執事もいた。

いわゆる箱入り娘だった。

家にいた執事さんに憧れたのだった。

その執事さんは仕草ひとつひとつが華麗で尊かった。

いつか自分もあの人のように執事のような格好をしたいと思っていた。

親からはキツく男のような格好をするなとか誓約はなかった。

だから、やりたい事が自由奔放にできた。

家族も男装してることは知っている。

今日、ハロウィンで黒執事の格好を出来たことは、とても嬉しいと思っていた。

ハロウィンは自分の夢を叶えられる夢のような祝い事だと怜樹は思っていた。

周りからは感情が見えないと言われるが、今日は本当に人生で1番感情が揺れていた。

そのため、今1番全てがキラキラして見える。

そんな自分に店長は気づいたのか言った。

『怜樹、落ち着いて。深呼吸してみんなにアイドルっぽく、愛を届けてね』

『はい。真摯にそして、お客様に愛を込めて出迎えます』

怜樹は次から次へ来る仮装をしたお客様にお菓子とそれから小さな愛を届けていた。

ハロウィンのおかげでイベントは大いに盛り上がった。

ハロウィンから2日後に井杉くんのバースデーが迫っていた。

僕ら4人は大忙しだった。

バースデーイベントは盛大にやるつもりだ。

店長は頭を抱えるほど、お金がかかると愚痴ってた。

さて、どうなることやら。

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