第8話 ハロウィン前夜祭

男装カフェ『ロイド』ではハロウィンの前夜祭を企画した。

前夜祭に出勤するのは、店長の入谷ライと男装モデルをしている怜樹と店でNo. 1の井杉類だった。

ちなみに柳陸は大学があり、欠席だった。

勿論、柳陸のファンの岩崎さんは柳くんがいないと知ると真っ先に店を出て行ったのだった。

前夜祭でもお客さんは来てくれる。

前夜祭とは知らずに来た北野先生は今度は迷わずドアを開けて入って来た。

彼女は3人の姿を見て『こんにちは』と挨拶した。

3人はそれに答えるように『『今日は僕らに会いに来てくれてありがとう』』とコンセプトであるアイドルを演じて迎えてくれた。

店長である入谷ライは怜樹と井杉類を改めて紹介した。

怜樹は北野先生の目を見て言った。

『こんにちは、先生のハートを撃ち抜く準備は出来てます。ここでの出会いに感謝しています。怜樹です。よろしくね』

北野先生は出会えた運命を感じそうになっていた。

怜樹の自己紹介に間髪入れずに入って来たのが井杉類だった。

彼は先生の手を握って話し始めた。

『先生、私も先生に勉強教えてもらってたら、先生ともっと居られる時間があったのかな。でも、ここでは私が知らないこと先生から教えてもらいたいな。その分、私も先生のために話すからさ。井杉類です。どうぞよろしくお願いします』

北野先生は彼の甘い声によりメロメロになってしまった。

店長は井杉くんに言った。

『過度なスキンシップは禁止だよ。それだけじゃなくてもメロメロなんだから』

『てんちょー、違いますよ。これはただ先生の脈を測ってただけです』

すると北野先生がびっくりした様子で言った。

『脈⁈脈ってどういうこと』

井杉類くんは言った。

『先生のドキドキ度を測っていたんです。心配してたんですよ』

店長は呆れたように井杉くんに言った。

『またか、あんまりスキンシップは取るな。ここはあくまでもカフェなんだから、その辺ちゃんとしろよ』

そんな様子を見て北野先生は可愛くて笑ってしまった。

怜樹は北野先生に言った。

『ここには4人のアイドルがいますけど、今1人はお休みですけど、先生はこの中で誰推しになりましたか?』

北野先生はすぐには答えられず、考えた末に井杉類くんを指差し言った。

『私は井杉くんかな。顔も声もなんだか落ち着くし、先生目線になっちゃうけど、なんだか教え子といるみたいな感じになっちゃう』

怜樹はチラシを渡した。

『今度、井杉類の単独バースデーイベントやるんで、良かったら来てください。勿論、仕事優先で構いませんので。なっ、井杉からも何か言えよ』

『今度、ハロウィン終わってから私の誕生日イベントやるので良かったら来てください』

北野先生は言った。

『都合がついたら行くね。そろそろ帰るわ。みんな明日はハッピーハロウィン楽しんでね。私は仕事三昧だから、バイバイ』

北野先生は帰って行った。

北野先生が帰った後に店長が井杉に言った。

『教え子みたいって、本当の教え子なのにな。言わなくて良かったのか?井杉』

『別に...言ってしまったら、彼女もここに来るのが来づらくなるでしょう。それだったら、言わない方が楽な気がします。』

怜樹は井杉を見て言った。

『そんなのいつまでも出会えないお姫様と彦星みたいじゃないか。いいのかよ、井杉。このまま言わないままじゃ、きっと後悔するぞ』

『別にいいんです。私を会えるアイドルとして向こうはファンとして推し事してくれるそれだけで、私は出会えたことに感謝してアイドルを演じるだけです』

そんな井杉の強い思いに他の2人は何も言わなかった。

明日はついにハロウィンの日だ。

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