第6話 愛情が重くてもファンなんです

『岩崎さん、そろそろ帰りませんか』

そう言ったのは柳だった。

店から出て行かない彼女はここの常連である。

推しは勿論、柳だった。

彼女が男装カフェ『ロイド』にハマったのは半年ほど前だった。

彼女は彼氏から『愛情が重すぎ』と言われて、1週間泣き続けた。

今まで尽くして来たのに、彼氏との恋は長かったはずなのに終わりは一瞬だった。

LINEで一言...別れたい。

それだけだった。

彼女にとってはいっぱい思い出があったはずなのに彼にとっての私との思い出は他の人とリスタート出来るものだったのだろうか。

彼が忘れられないでいた頃に、柳と出会った。

柳は周りから見たら女の子で同性だ。

でも、このカフェだけで見たら周りと変わらない男の子なのだ。

男装カフェ『ロイド』が出来た頃にチラシ配りをしていた柳に出会った。

彼の目やほくろの位置まで元彼と一緒だった。

最初は元彼に似ていたから推していた部分もあった。

だけど、今は彼の仕草や嘘のつき方まで全てが愛おしく思える。

周りから見たら痛いファンかもしれない。

でも、私にとって柳くんは愛しい君なのである。

だから、ロイドがある限り私は通い続けるのだ。

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