第4話 男装カフェでの出会いは突然に

男装カフェ『ロイド』に入ると出迎えてくれたのが、店長と書かれた入谷ライさんだった。

後ろにいたお客さんが『やなぎー』と叫んだ。

すると、ネームプレートに怜樹と書かれた男の子が彼女を他のお客様から見えない位置に案内した。

私はその様子を見ていると、店長さんはどうぞとカウンターに案内した。

店長さんは私に対して言った。

『ここ、初めてですよね。ここのコンセプトは気軽に出会えるアイドルを目標にしています。チェキ会や握手会もここの会員になったら参加出来ます。基本的にカフェですが、これだけは守って下さい。従業員に対しての過度なスキンシップとチェキ会、握手会以降のプレゼント交換は辞めて下さい。分かりましたか?』

『分かりました』

『それでは、ここにあるメニューで1時間コースか30分コースどれを選びますか?』

『じゃあ30分コースでお願いします』

すると店長はタイマーをセットしてオムライスを作り差し出して話し始めた。

『僕は入谷ライと言います。ここでは店長しています。お姉さんは普段何をしている人ですか。オブラートでも大丈夫なので』

彼女は少し考えて言った。

『私は北野遥香って言います。高校で先生してます。最近はずっと疲れてて、久しぶりにテレビ付けたら男装カフェ特集が出てて、それで来てみました』

『先生か。大変そう。でも先生がいるから色んな事も学べて、卒業した頃には先生にまた会いたいと思う生徒がいるんじゃないかな』

北野遥香は嫌々と手を振り拒否をした。

『私みたいなへっぽこに会いたい生徒なんて居ないよ』

そんな話をしていたら、ドアが開いた。

入って来たのは井杉類だった。

彼は北野先生を見るなり、時が止まったように彼女を見続けた。

店長は言った。

『類、北野先生のこと知ってるの?』

『はっ?知るワケないじゃん。ただ見ない顔だなって思っただけ。店長、みかんジュース買って来ましたよ。私そろそろバイトがあるので行きますね』

『おう、分かった』

『あの、今の子って?』

『ああ、かっこいいでしょ。この店のエースですよ』

『いやそうじゃなくて、どこかで会ったことがあるような気がするんですよね。彼の名前って分かりますか?』

『彼は井杉類っていう子ですよ』

『井杉類...』

『でも、先生考えても無理ですよ、だって僕らの名前は源氏名ですから。本当の名前は秘密ですから』

先生は顔を赤くして言った。

『そうですよね。そうなんですけど、気になってしまって』

『類はそのうちきますから、またロイドに来て下さい。あっ、時間だ。30分で1500円です』

そう言って、先生はお金を払い初めての男装カフェを満喫した。


その頃、井杉類は心臓がバクバクだった。

忘れもしない、高校生の時の恩師だった。

先生は気づいていないようだったけど、なんで先生が来ているんだろうと不思議に思っていた。

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