第42話 配信で真利が宣戦布告

『きぃいいーー!! もうあったまキタ。あんたなんか、やられちゃえぇぇーー!!』


 いい感じで煽りコメントが言えたと満足げに走り出すと、それを聞いたナノンが高い声をあげた。


 だが、それと同時に俺は激しい銃撃を受ける。


 敵に見つかったか!?

 敵の動きは慌ててるようでおかしいが、奴らは撃ってきていない。

 おかしい……。

 一体どこから撃たれてるんだ??

 なぜか被弾はないが、相当激しい銃撃だ!


『どうしたカルロス、別チームか!?』

「いやどっから撃たれてるか分からん。でもノーダメージだ! おっかしいな……って後ろからかっ! ん? 撃ってんの……ナノンじゃないかッ!!」

『女の敵のあなたなんか、あたしが始末してやるから! 早く敵に発見されなさいよ!』


《ナノン仲間撃っとるがな!》《ノーダメージww》

《あははカルロスあはは》《隠れた位置バレるだろ》


『くっ、ナノン、カルロスに何を! ダメだ、我輩は先行し過ぎてる。このまま敵を強襲するぞ! カルロス! ついて来い!』

「ちょ、ナノン、おまえ最悪だな! 周りに着弾しまくって目立つだろ! あ、敵からも撃たれた。てめえ! 敵に見つかったじゃないかよ!」

『うふふふふ! 人をバカにした報いよ。シスコンには、私が天罰を与えちゃうから!』


 俺の位置は敵から完全に死角のはず。

 でもナノンの銃撃で目立って位置がモロバレ。

 たぶん敵にはナノンが別チームの敵として、反対側から挟撃してるように見えるだろう。


『よし! ひとり倒した! 敵がそっちに気取られていい囮になってる。カルロス! そのまま突っ込んで来て! ナノン! そのままカルロスを撃って!』

いでえよ! 俺、敵からも味方からも撃たれてるじゃんか!」

『あ、これ、気持ちいいな~! ノーダメージだからいくらでも撃てる。ルリアもああ言ってくれてるし、いまの私は大砲よ!』


 左サイドから襲撃したルリアが華麗に無双。


『吾輩の秘技を見せてやる、空間転移』


 超絶テクのルリアは本当に空間を転移する暗殺者のように動いて、ふたり目の敵をダウンさせる。

 最後の敵は、俺とルリアにはさまれたままで抵抗したが……。


『ふう、最後のひとりもダウンさせた! もう平気だ。さあ、こっちへ……って、おいカルロス、どこへ!?』

「うわぁあ! お、おまえ、勝手に何やって……」

「ケンタにいが可哀そう! もう頭キタ! ケンタにい、ちょっとどいてて! 私がやり返してあげる!」

『え!? ちょっと、誰? カルロス!? ねえ、誰か別の人がいるの??』


 なんと、横で観ていた真利が割り込んできた!

 彼女は俺の手からマウスを奪い取ると、勢いよく俺の椅子を後ろへ引いてデスクから遠ざける。

 真利がすかさずデスクの前に立って、マウスとキーボードで操作を始めた。

 楽しそうに俺に向かって親指立ててるし!


 彼女は俺のキャラを華麗に操作して、序盤で拾ったアイテムを素早く2個連続で投げる。

 それは、きれいな放物線を描いてナノンが引きこもる家へ飛んでいった。

 2個とも彼女が銃撃してた戸口へ落下して、開いた扉の中に吸い込まれていく。


 先に投げた方がグレネードが家の中で大爆発を引き起こす。

 後に投げたテルミットで炎が発生、室内が大炎上となった。


《おおお》《無茶苦茶だ》《だれ今の?》《妹か?》

《ケンタにいだって!》《過激な妹好き》《妹ラブ》


『カルロス、今のは誰だ! まさかまた妹が乱入して事故ってるのか??』

「ま、まあ、あれだ。お、俺の愛する妹がしたおちゃめだ。だから、許してやってくれ……頼む……」


 俺は慌てて取り繕ったが、真利は反省なんかしていない。


「ケンタにい、ナノンは無傷よ! グレネードも味方にはダメージ入らないから。でも炎症による状態異常エフェクトは発生しているはず」


 彼女は後ろの俺に向かって得意そうに語ると、画面に向かって人差し指を向ける。


「今のでケンタにいの仕返しができてスッキリした。でもナノンには言っとくわ。ケンタにいのこと、譲る気ないんだからね!」

『なるほど、そういうことね! へー、ふーん。配信中に大胆ね。褒めてあげるわ、カルロスの妹さん! あなた、あとで覚えてなさいよ?』


《いいねいいね》《熱い対立》《女の戦い好き……》

《挟まれたルリア可哀そう》《ルリアは面倒見いい》

《ルリア先輩は大変だ》《ナノン黒くなった》《草》


 そんな感じで、途中から真利が普通に割り込んだまま、予定通りを装って配信が終了した。


◇◇◇


『はい、みんな、おつかれちゃん!』

「お疲れさま。みんな、今日は助かったよ」

「栗原さん、姫川さん、健太にいも、おつかれさまでした!」

『おつかれさま……って、真利ちゃん普通に混じっちゃってんだけど大丈夫なのかな?』


 どうも真利は、栗原専務から割り込むように言われていたらしい。

 いくら盛り上げるためだからって……。

 でも一般人も電話ゲストとかはありえるし……。

 専務取締役がマネージャーとして考えたアイデアだから、会社的には問題ないのか……。


 一息ついたところで、急に俺のスマホが震える。

 配信終了から少しして電話がかかってきた。

 栗原専務からかと思ってビクついたが、着信は予想外の相手だった。


「カ、カレン! あ、うん、電話久しぶりだな。え? 今のを観てた!? Vtuberのことで話がある? お、俺はないけど……。時間作らないと誰が演じてるかバラすだと!? あ、ああ、分かった……」


 俺は突然のカレンからの電話に驚いて、横にいた真利と顔を見合わせたが、通話アプリで繋がる菜乃と瑠理も、俺の受け答えを聞いて驚いた様子だった。



※現在のチャンネル登録者数

聖天使ナノン        

 登録者18万人

ルリア・カスターニャ    

 登録者106万人

ナカムラ・カルロス・ケンタ 

 登録者1.6万人


----------


※一応3人がどのキャラを選択したか分かるようにしましたが、ちょっとカルロスの選択キャラは分かる人がいないかも。

もし分かる人がいたら感想欄で解答ください!

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