第6話
男はへたり込む。無理もないだろう、男に起きた出来事はあまりに強烈だった。
彼はどうなってしまうのか。自分だってどうなるかもわからない。
部屋に一羽残っていたうさぎはぺこりと頭を下げ、部屋を出て行った。一人取り残されても男は動かなかった。ここから脱出などできるわけがない。彼らがどれほどの勢力か想像もつかないのだ。
無駄だと知っていても、頬をつねってみる。痛い。男は長く弱い息を吐き、頭を抱えてうずくまっているしか出来なかった。自分に何が出来るというのだろう。患者を助けることは愚か、自分の身すらまともに守れない。あちらの要求に従わなければ自分もいらない存在になる。
どれくらいそうしていただろうか。扉が開き、生き物が入ってくる気配がした。背中からプーだのクーだの聞こえるが、男に顔を上げて文字列を読む気力は微塵も残っていなかった。
男が反応しないとみると、背後の気配は移動し今度はカチャカチャと音がした。
すると、
「お待たせして申し訳ありませんでした」
と声がした。顔を上げると、例の長老うさぎが機械のマイクを持って立っていた。
「一対一で話すならこちらの方が早いでしょう。さて、単刀直入に伺います。例の件……考えてくださいましたか?」
「あ、え……?」
男が口を意味無く動かしている間も、うさぎはただ静かに見つめている。その赤い瞳で。
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