第4話
少し歩くといくつかの部屋が並んでいた。それでもうさぎは明確な目的地があるように突き進み、一つの部屋の前で立ち止まった。そしてたんっと足を鳴らすと扉が開いた。人間用には作られていないのか少し低い扉をくぐりながら男はこの先の不安と戦っていた。幸い部屋の中は広めに作られているようで、ある程度の余裕を持って立つことが可能だった。
うさぎはどこからか箱を引っ張ってきた。それは何かの機械のようで、よくわからないメーターやランプがついていたが、うさぎは横に付いていた棒のようなものを器用に外し男の方に向けた。どことなくマイクに似ているそれをうさぎが押してくる。何か話せということだろうか。
「あなたは一体……?」
その一言で機械のランプが光り、メーターが動いた。うさぎは機械の背面を開けると何か操作をし始めた。そして、キューともプーとも聞こえるような音を発した。
すると空中にディスプレイが表示されそこに『これで伝わっていますか』と書かれていた。どうも機械から出ているようだ。男が驚いているとそれを肯定ととったのか再びうさぎが音を出した。ディスプレイの文字が変わる。
『手荒なまねをして大変申し訳ありませんでした。我々に敵意はありません。どうか安心してください』
「これは私の夢ではないのか……?」
『いいえ、これは現実でここは本当の月です。我々はあなた方の言う【宇宙人】……と呼ばれる存在です。混乱されるのも無理はありませんがどうか落ち着いてください』
何も言えずにいると、うさぎは男が考え込んでいると思ったらしく黙って待っていた。男はいつもの癖であごに触れながら思考に集中することにした。
ここは月であり、目の前のうさぎは宇宙人。あまりに突飛すぎる話だが、自分がこんなユーモアのある夢が見られるとは到底思えなかった。
それより先ほどからうさぎが言う「我々」という言葉が気になった。
「あなたには仲間がいるのですか」
『ええ、我々は一つの種族ですから』
タイミングを計ったように背後で音がした。振り返ると首からメダルのようなものを下げたうさぎがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます