第11話 アドルファスの過去
「……俺が王位を継いだのは15才のときだったぜ?」
突然アドルファスは自身の過去を語り出す、その言葉に驚愕するスカーはアドルファスの顔を見て
「えぇ!?お師匠様は実は王様だったんですか?」
「そうだぞ?」
「全然そう見えません……」
「うるせぇ!男は見た目じゃねぇんだよ!」
スカーの正直すぎる感想に顔をしかめるアドルファスだったが、そのまま話を続ける。
「……俺の父だった国王も祖父だった前王もとんでもねぇお人好しでよ……まさに人徳にあふれてるって感じの人らだったぜ……そういう王は平時なら歓迎されるんだろうが、爺さんの時代に魔王が現れちまった。 まさに激動の時代だったぜ、徐々に国は疲弊していき民は不安に駆られながら生活をおくらなきゃならねぇ……この国はお前の親父さんが優秀だったおかげでまだそんな目にあってねぇ事に感謝しろよ?」
アドルファスは苦笑しながらスカーへと語りかける。
「お師匠様……」
「そんな時代にお人好しの爺さんは国を傾ける勢いで他国の対魔王対策へも国費をつぎこんでなぁ……国民はどんどん困窮していったんだ。 それを見かねた貴族達が共謀して爺さんを引退させちまった……まぁその辺はしょうがねぇ部分もあったんだろうがよ、そのあとがいけねぇ。 自分たちの傀儡にするために後ろ立てのない当時の第五王子だった俺の親父を国王にしちまった。 その後すぐに勇者が召喚され無事魔王は討伐されたんだがな、国を立て直すのに利権争いをはじめた貴族共の横やりが激化していった。 そして当時親父である国王には王子が8人いたんだが、そのうちの7人の王子達それぞれに貴族派閥のトップが後ろ盾について王子達を旗頭に据えて権力争いを始めやがった」
「そんなことが……」
悲しそうにアドルファスを見るスカー。
「あぁ、傀儡の国王にむりやり認めさせた『王子全員平等に王位継承権を持つ』とかいう訳の分からねぇ法令があったせいでな……貴族たちは自分たちの地位を守るために競うように王子たちを担ぎ上げて政治闘争を繰り広げ始めたんだよ……俺はそんな息苦しい王宮の中にいるのが我慢できなくて、王宮を飛び出して魔王を討伐した勇者のとこに転がり込んで居候をはじめた、元々勇者と親父は仲が良くてな……他に知られると面倒だからと隠れて親交があったのを知ってたからな」
「……」
無言で食い入るようにアドルファスを見つめるスカー。
「そんな中で、ついに超えちゃいけねぇ一線を貴族共が超えちまった……第一王子の成人祝いのパーティーで暗殺事件を起こしやがった。 そこからは全員疑心暗鬼にとり付かれちまったんだろうな……何だかんだで残った王子は第八王子だった俺だけになっちまった……親父は責任を感じてたんだろうなぁ……俺を王宮へ呼び戻して王になれって言ってきやがってよ……笑っちまうよなぁ……忘れ去られたなんの教育も受けてない第八王子の俺が国王だぜ? 当時は荒れたなぁ……マジで面倒ごと押し付けんなって親父に殴りかかった」
遠い目をしながら焚火に薪をくべつつアドルファスは静かに語る。
「そしたらよ……親父が俺に泣きながら土下座したんだよ……『本当にお前を守りたいなら外へ出してやるべきなのは分かっている……だがこれ以上国が荒れることはあってはならない……傀儡の情けない父を殴って気が済むならいくらでもやっていい……殺されても文句は言わん……だからどうか王位をついでくれ』ってな……笑える話だろ? ろくな貴族の後ろ盾もない王子がどうやって政治闘争を生き残ればいいのかって話だよなぁ? だから俺は言ったんだ……王位なんてもんに興味はねぇ……だがどうしても俺に泥船に乗ってほしいならエドワードも一緒に乗せろって言ってやったんだよ」
「エドワード……聖人様ですか?」
「あぁ、本気で国のゴミ掃除するならあいつに宰相させる方がいいと思ってな……まぁ、だからよ! 俺でもやれる王ってやつは誰がなってもそう変わらねぇ、だからやりたいやつがやればいいんだよ!」
アドルファスはニヤッと笑って答える。
そんなアドルファスの顔を見てスカーは思う。
(あぁお師匠様は私の気持ちの後押しをするために過去を聞かせてくれたんだな)
そんな不器用で回りくどいアドルファスの優しさが嬉しかった。
それからしばらく二人は無言のまま夜空を見上げていた。
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