第3話 再び輝く召喚陣
皆がそれぞれ場所を移動しようとしたその時魔法陣が突然また眩い光を放った。
「なっ!? 一体どうなっておるのだ! 儀式は終わりもう魔力もながしてはおらぬはずだぞっ!」
と動揺した王が叫ぶ。
召喚陣の光が収まるとそこには……一人の男が立っていた。
歳は三十代後半くらいだろうか? 髪の色は漆黒で瞳の色も同じだ。そしてその顔立ちは本来は美形と言って差し支えないほど整っているのだが、どこか粗野な印象を受けるのはその目つきの悪さからだろう。
「あぁ? どこだここ?」
男はそう呟くと周囲を見渡す。
「アドルファス! 何故貴方がここにいるんです!?」
驚愕したエドワードが男に向かって叫ぶように言う。
「ああん? 誰だよてめぇ……ってエドワードじゃねえか。なにしてんだお前?」
眩しそうに目を細めていた男はそう言って口の端を上げる。
「それはこちらのセリフです! ここは異世界の聖女召喚の儀式の間ですよ!? どうやって入ってきたのです!?」
「んなこと知るかよ。俺はあのクソババアに送り込まれただけだぜ?」
「クソババアとは……まさか大魔導士のことですか?」
エドワードは自分の大事な師匠である大魔導士をいつもクソババア呼ばわりするアドルファスを睨みつけた。
「他にあんな元気と魔力が有り余ってるクソババアいねぇだろ……せっかく人が久しぶりに顔見に言ってやったら問答無用で『そんな暇あるならエドの手伝いしてこい』とか言ってよ……」
とアドルファスはため息をつく。
「話中に割り込んですまぬが、そちらは 知り会いかの?」
と国王がエドワードへ問いかける。
「はい陛下。彼は私の護衛でございます」
「ほう。護衛とな? ……しかし聖女召喚の陣を聖人様のいた異世界より遠隔起動させたと見たがすさまじい魔法の使い手がおられるのだな」
国王は感嘆の声をあげる。
「はい。私の魔法の師である大魔導士が送ってくださったようです。彼の名はアドルファス、私の住む世界で魔王を討ち果たした勇者様の弟子でございます」
エドワードの言葉に国王は驚愕した。
「な……なんじゃとっ! 聖人様のいらっしゃった世界にも魔王がいたと! ……しかも勇者様が討ち果たした……ううむ」
と国王は腕を組み考え込む。
「ひとまず詳しい話はまた後でいたしましょう。聖人様も護衛の方もひとまずゆっくりお休みくだされ」
と国王が話をまとめ
「聖人様がたを部屋へご案内せよ!」
と近くに控えていたメイドたちに指示を出す。
メイドたちは国王の指示に従いエドワード達を部屋へと案内しだす。
それに付き従いながら
「さて……詳しい話をうかがいたいものですなぁ聖人さま……ぷっ……くっ……腹いてぇ」
とアドルファスが悶えながらニヤニヤとエドワードをからかう。
「うるさいですね……アンタほんと何しに来たんです?」
とジト目で見るエドワード。
「お前なんか面白そうなこと始めたみてぇじゃねぇか。……しかし『聖女召喚システム』ねぇ……どこの【管理者】が考えたんだか……潰すか?」
先ほどのふざけた態度が嘘のようにアドルファスが物騒なことを周りに聞こえないように言い出す。
「今はまだ情報が足りませんので答えは保留で」
前を向いたまま小声で答えを返すエドワード。
「なるほど……じゃあしばらくは好きにやらせてもらうか……」
と気の抜けた様なことをアドルファスが言い出す。
「城をうろつくならもう少しまともな態度でお願いしますよ。アンタただでさえ普段からどっかの山賊みたいなんだから」
とため息をつきながらエドワードが言う言葉に
「うるせぇ……」
とアドルファスが不貞腐れた声でこたえるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます