肉豆

肉豆は肉切場の屑肉の山から生まれた。腐って熟成しきった肉が人の形をとったのがそれで生まれるなり肉切り包丁を手に取ると肉切場の連中をまとめて切り刻んでから屑肉の山に捨てた。きっとそこから新たな生命が生まれてくることだろう。肉切場を出た肉豆は切り刻める肉を探して歩き回った。歩いた先に肉があれば切り刻んだし肉がなければ切り刻まなかった。そうしているうちに王国の方でもそうした怪物を放置しておくわけには行かなくなって骨削ぎの騎士団が肉豆を処分することになった。団長の赤鴉が決闘を挑んだところ肉豆はあっさりと2つに切り裂かれたがそのとき飛び散った肉片が赤鴉含む騎士団のメンバーにこびりついてやがてその肉は周りの肉を蝕みついにはその人間そのものが肉豆へと変質した。あわてて腕を切り落としたものもいて本体を乗っ取られることはなかったが切り落とされた腕の方はどうかというとそれもまた肉豆になって肉を求めて彷徨うようになった。こうなってはもう誰にもどうすることもできなくて等比級数的に肉豆の数は増えていってついには世界全部を肉豆のもとに食らい付くした。そうして取り込む肉がなくなってどうしたかというと肉豆は静かな眠りにつき肉豆自体も腐敗し変質し溶解しやがて泥と変わっていずれも膨大な時間のすぎればまた何かの生命が生まれることもあるかもしれない。

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