第36話 レッキュート連合国
ムジェの森を通り抜けてレッキュート連合国に着いた。スークパル王国とは別の国だけれど、商業ギルドの会員証があったので移動は楽だった。
今はコルンジさんの店とスズリピララさんが所属していた冒険者ギルトがある、タイコーズ州の州都スラブーンドットの街にいる。
「今までよった街に比べると、街の規模が大きくて賑わっているね」
あたりを見渡しながらの感想だった。
「スラブーンドットはタイコーズ州の中心にゃ。たいていのものが集まって、美味しい食べ物もあるにゃ。コルンジさんのお店はこっちにゃ」
スズリピララさんが先頭を歩いて、私の右側にはコパリュスと反対側にムーンとスターがいる。大通りから脇の道へ入って、少し進んだところでスズリピララさんが止まった。質素だけれど清潔感のある2階建てのお店がある。
「このお店がコルンジさんのお店?」
「その通りにゃ。中規模クラスの商会だけれど、信用が高くて冒険者もよく利用しているにゃ。今後はもっと大きくなると思うにゃ」
スズリピララさんは私の質問に答えながら、お店の中へ入っていく。お店の中はお客で賑わっていた。
スズリピララさんは何度も来ているみたいで、迷わずに従業員と思われる男性へ近づく。男性は年齢が30台くらいのヒューマン族で中肉中背であった。
「ロバックさん、お久しぶりにゃ。コルンジさんはいるかにゃ」
「会長は奥にいますので、お待ちください」
ロバックさんと呼ばれた男性は、お店の奥へと消えていった。
「ロバックさんは昔から、このお店にいるの?」
ほかにも従業員と思われる人がいたけれど、スズリピララさんが一直線にロバックさんに向かったので気になった。
「その通りにゃ。コルンジさんの右腕と呼ばれている営業責任者にゃ」
「偉い人だったのね。繁盛しているみたいで、私もあとで商品をみたい」
スズリピララさんと話しているうちにロバックさんが戻ってきた。
「お待たせしました。奥で会長が待っていますので、一緒に来てください」
ロバックさんのあとに続いて、お店の奥に入っていく。案内された部屋に入るとコルンジさんが出迎えてくれた。
「スズリピララ殿、それにメイア殿とコパリュス殿も一緒ですか。旅で疲れたでしょう。こちらの席へどうぞ」
椅子に座ると、お菓子と飲み物が運ばれてきた。部屋の中には私たち以外はコルンジさんのみとなった。最初にコルンジさんへスターを紹介すると驚いていた。
お菓子と飲み物をいただき終わると、私のほうから来た目的を話した。
「レッキュート連合国に来た目的は、純粋な旅行と宝石関連のお店を見たいと思ったのよ。それとムジェの森に導きの道と呼ばれる道ができて、移動が楽になったのも教えたかった」
「名所や宝石関連のお店がありますので楽しんでください。導きの道はどのていどまで楽になるのでしょうか」
魔物の脅威が減ったのと馬車での移動が楽になると伝えると、コルンジさんは喜んでくれた。
「まだまだムジェの森は危険がいっぱいだけれど、前よりも短期間で宝石神殿へ来られるようになったよ」
「それは助かります。必要な品物があればいつでも申してください。次回訪れるときにでも持っていきます。ところで新作のジュエリーはありますでしょうか。メイア殿のジュエリーは人気が高くてすぐに売り切れてしまうのです」
「高級ジュエリーを中心に用意してきたよ。それとレアストーンも新しく見つかったからもってきた」
「ぜひ見せてください」
事前に宝石箱から革の鞄へ移しておいたジュエリーを取り出す。
「こちらがジュエリーよ。私のほうは馬車用の馬と家畜、それと調味料がほしい。差額分は金貨で対応したい」
しばらくの間はコルンジさんと商談をおこなった。コルンジさんはいつものように魔石具を取り出して、ジュエリーを鑑定する。鑑定中も私のジュエリーをほめてくれてうれしかった。
両方に損が出ない範囲で価格が決まって、コルンジさんも喜んでいた。
「新しいレアストーンはヤシャシートン殿が喜びます。せっかくレッキュート連合国まで来たのですから会ってみますか」
宝石単体のルース好きは、この世界ではほとんど見かけなかった。ハーフリングに賢者という、私が知らない種族と職業にも興味があった。
「私からお願いしたいくらいだったから会ってみたい。コパリュスやスズリピララさんもそれで平気?」
コパリュスとスズリピララさんへ視線を向ける。
「コパはメイアの好きで構わないの」
「うちは護衛にゃ。メイアの行きたいところに何処へでもついていくにゃ」
ふたりの言葉を聞いた後に、コルンジさんへ顔を戻した。
「コルンジさん、ヤシャシートンさんへ会わせてほしい。それからできれば街にある宝石関連のお店も教えてくれるとうれしい。レッキュート連合国のジュエリーがどのような感じか知っておきたいのよ」
私自身は宝石神殿にいるのがほとんどなので、ほかの人のジュエリーを見る機会はほとんどない。私自身の実力がどのていどなのか、それに献上品を考える上での参考にできればと思っている。
「それではさきほどのロバックに案内させましょう。本当はわたしが案内したいところなのですが、あいにく明日から街を離れてしまうのです。もし何かあればロバックが対応するように伝えておきます。ところで宿屋は決まっていますか」
「まだ決まっていなくて、このあとスズリピララさんに教えてもらう予定よ」
「よろしければ、わたしから宿屋を紹介させてください」
「そこまで気を使ってもらわなくても平気よ」
「いつも宝石神殿ではお世話になっています。安全と安心が確保できる休憩場所は商人にとって重要です。それを考えれば安いものです」
むりに断ってもコルンジさんに悪い気がした。
「それではお願いするね」
「ぜひスラブーンドットの街を堪能してください」
コルンジさんがロバックさんを呼んで、ロバックさんに案内されてみんなで宿屋へ向かった。立派な建物の宿屋で、費用をロバックさんが前金で支払ってくれたのでお礼を言った。
明日の朝にこの宿屋へロバックさんが来てくれるみたい。ロバックさんが帰ると宿屋の人に部屋まで案内された。スズリピララさんの話ではふつうの冒険者では泊まるのがむずかしい高級宿屋みたい。
その日は旅の疲れを落とすように、早い時間帯で眠りに入った。
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