宝石神殿レベル14

第34話 北側の導きの道

 宝石神殿のレベルが上がった翌日、コパリュスとムーン、スターを連れて北側にある新しい建物に向かった。


 宝石神殿の裏側にある倉庫を通りすぎで、田んぼと果樹園の間を歩きながら北側へ移動する。宝石神殿とムジェの森を区別する塀の前には、南側と同じように詰所と倉庫があった。


「北側には門がないけれど、詰所と倉庫が出現するのね」

 南側は門があって宝石神殿の外へつながるから、詰所や倉庫はあっても違和感はなかった。でも北側は塀の内側にぽつんとあるので不思議に思えた。


「門がなくても塀は乗り越えられるから、昔は見張りが必要だったの」

 私の疑問にコパリュスが答えてくれた。

「南側もそうだけれど、詰所に誰かいたほうがよいの?」


「いまはコパがいるから平気なの」

「見張りは不要みたいね。でもせっかくの建物だから何かで有効的に活用したい」

 純粋に住居としてではなくても、作業場や倉庫としても使えると思う。建物の中を見たけれど南側と同様だった。


「このあとは如何しますか?」

 ムーンが聞いてくる。

「東側か西側の門を使って導きの道をみたい。それで構わないよね?」

 ムーンに答えてからコパリュスに聞く。


「コパはそれで平気なの」

 みんなで東側の門へ移動して、宝石神殿の外にある塀沿いの道を北側へ向かって移動する。北側に到着すると、レッキュート連合国へ向かって、きれいに整った道が奥まで続いていた。


 南側と同じく北側にも導きの道の両側には石柱が建っていて、その先には木々が等間隔に並んでいる。

「ぼくはそらをとびたい」

 ムーンの背中にいたスターが私の前に飛んできた。


「導きの道から出なければ、空を飛んでも平気よ」

 スターは上位幻獣グリフォンで強いけれど、まだ小さな子供だった。それでも導きの道の範囲内なら安全で、スターの飛行速度について来られる魔物もいない。心配もあるけれど、できるだけスターの意思を尊重したかった。


 スターが導きの道の奥へ向かって飛んでいく。私たちはそのあとをゆっくりと追いかけるように歩き出した。


「これでレッキュート連合国へも行きやすくなります。メイア様はレッキュート連合国へ行く予定はありますか」

「商業ギルドに登録して移動が楽になったから、できれば行ってみたい。コルンジさんのお店にも顔を出して挨拶ができればと思っている」


 コルンジさんには、いつも危険なムジェの森を通ってきてもらっている。安全な導きの道ができたことを知らせれば、きっと喜んでくれると思う。


「いつでもお供します」

 ムーンが答えてくれる。歩きながらムーンの体をなでると、フサフサとモフモフの感触が私をいやしてくれた。


「できれば早く行ってみたいと思っている」

「どうしてなの?」

 コパリュスが聞いてくる。


「ひとつは献上品を作る期限があるから、それと重ならないようにしたい。もうひとつはレッキュート連合国でジュエリー店を見て回れれば、献上品を考える上での参考にできると思ったからよ」

「それなら早く行ったほうがよいと思うの」


「ガルナモイトさんたちに情報を聞いてから行くつもりよ。私たちが留守にしても宝石神殿は安全よね?」

 この前はスークパル王国へ行ったけれど、そのときは宝石神殿で問題は発生しなかった。でも何度も留守にして平気か少し心配でもある。


「宝石神殿のレベルも上がっているから大丈夫なの。それにガルナモイトたちも強くなっているから、大抵のことなら大丈夫と思うの。心配ならトナタイザンに留守番をお願いすれば平気かな」


「不安要素は減らしたいから、トナタイザンさんに会ったら聞いてみるね」

「コパもトナタイザンに会ったら言っておくの」

「お願いするね」

 話しているときにスターが戻ってきて、ムーンの背中で止まった。


「そらとぶの、たのしい」

「お帰りなさい。スターが楽しんだみたいでよかった」

「また、そらをとびたい」


「ムジェの森ではなかなか難しいけれど、宝石神殿内ならいつでも平気よ。今度は間近でスターの飛ぶ姿をみせてね」

「メイアに、とぶすがたをみせる」

 スターが飛び立とうとしているのを見て、言葉をかける。


「安心して飛ぶ姿をみられる、宝石神殿内だとうれしい」

「もどったら、メイアのまえでとぶ」

「ぜひスターの飛ぶ姿を見せてね」


 いつの間にか、導きの道の出入口まで来ていた。目の前に石柱が2本そびえ立っていて、導きの道の終わりを告げている。


「コパは導きの道が見られてうれしいの」

「メイア様、さらに先まで進みますか」

 導きの道以外は、コパリュスとムーンに気を使わせることになる。今回は食材探しではないから、むりにムジェの森に入る必要はなかった。


「私も導きの道が確認できたから、今日はここまでで平気よ」

「わかりました。ムジェの森に入りたいときはいつでも言って下さい」

「食材探しなどで行くときはお願いね」

 その後はみんなで、導きの道を宝石神殿へ向かって戻った。


 宝石神殿に戻ってから、スターの飛ぶ姿を堪能した。飛行速度もさることながら旋回も上手で、まるで飛行機の曲芸を見ているようだった。

 飛行が終わったスターをなでると、うれしそうな表情をしてくれる。スターの羽根もだいぶ成長しているようで、フサフサ感が増していた。


 スターの飛行を見終わったあとは、シンリト様たちやガルナモイトさんたちに、北側にも導きの道ができたことを知らせた。

 とくにガルナモイトさんたちが喜んでいた。きっとレッキュート連合国に知り合いがいるから、往来が楽になったのがうれしいのかもしれない。

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