第30話 ミソとショウユの料理
サースントンさんたちが宝石神殿を去った日の夕方に、宝石神殿の4階にある調理場で夕食の準備を始めた。横にはコパリュスがいる。
「ミソとショウユを使った料理を作りたいけれど、問題は何の料理にするかよね」
「どの料理にするかのめどは立っているの?」
コパリュスが聞いてくる。
「ミソの料理で一番に思い浮かぶのはスープに似ているミソシルだけれど、まだ食材が足りないのよ」
正確には出汁がまだなかった。かつおだしや昆布だしなどがあるけれど、魚介類はまだ見ていないので、すぐに用意するのは難しそう。
「食材がそろったら、ミソシルという料理も食べてみたいの」
「私もぜったい作りたいから一緒に食材を探そうね。ゆでた野菜にミソをつける食べ方はサースントンさんたちと一緒に食べたから、夕食はミソの味がわかりやすいミソオニギリよ」
もとの世界では小さい頃に食べたのみだけれど素直に美味しかった記憶がある。
「食べる前から美味しそうな名前なの。ショウユは何に使うのかな。液体だからスープになるの?」
「いくつか料理を思い浮かべたけれど、今日は今までの料理と食べ比べをしてもらいたい。料理はカラアゲとテンプラで、味付けがショウユになるのよ」
「どのように違うのか今から楽しみなの。コパは早く食べたいから、作り方を教えてほしいかな」
「基本は今までと同じ感じね。カラアゲは椿油であげる前の味付け段階でショウユを使う。テンプラは今まで通りに作って、食べるときにショウユをつける。コパリュスにはお肉や野菜を切ってほしい」
「いつものように切っていくの」
コパリュスに食材を切ってもらう間に、火の魔石具と椿油を用意する。基本の手順はほとんど変わらないので、順調に料理作りは進んだ。すり下ろしたダイコンも忘れない。とくに大きな問題は発生せずに、カラアゲとテンプラが完成した。
食事を運んでテーブルの上にミソオニギリとカラアゲ、テンプラにはすり下ろしたダイコンを添えた。コパリュスの他にムーンとスターも部屋にきた。
「ミソとショウユという新しい調味料が手に入ったから、今日はミソとショウユを使った食べ物よ」
「どれも美味しそうな食べ物です。カラアゲとテンプラは分かりますが、もうひとつの丸い食べ物は何ですか」
ムーンがテーブルの上を見ながら質問してきた。
「ミソオニギリという料理よ。お米の表面に、茹でた山菜を細かく刻んでミソと混ぜたものをぬっているのよ。ミソの味わいを楽しめると思う」
表面を焼いてもよかったけれど、今回はそのままのミソ味を堪能してもらいたかった。ミソ味に慣れてきたら、ミソに混ぜる具材も変化させたい。
「変わった料理ですが濃厚な臭いがします。カラアゲも独特な臭いがしますが、テンプラは今までと同じですか」
嗅覚の鋭いムーンには、臭いだけで違いが分かるみたい。
「カラアゲは味付けにショウユを使っていて、テンプラはショウユとすり下ろしたダイコンにつけて食べる料理よ」
「ぼく、はやくたべたい」
「コパも同じ気持ちなの」
スターとコパリュスは待ちきれないみたい。その気持ちは私も同じで、はやくミソとショウユの味わいを堪能したかった。
「そうね、冷めないうちに食べましょう」
私の声を聞いて、すぐにコパリュスがミソオニギリに手を出した。ムーンはカラアゲを起用に食べ始めて、スターはテンプラから口に入れる。
「ミソが濃厚な味だけれど、お米で味がまろやかになって美味しいの」
コパリュスの感想だった。ミソ味が好みなのか、すぐにふたつ目のミソオニギリに手を出し始めた。
「今までよりも味がしっかりしていて、肉のうまみを引き出しています。ショウユのカラアゲも癖になる味わいです」
ムーンもショウユ味のカラアゲを喜んでくれたみたい。
「テンプラもおいしい。でもショウユがおおいと、しおからい」
「ミソもショウユも味が濃いから、少量をつけて食べてね。みんながミソとショウユを気に入ってくれてよかった」
私もミソオニギリから手を出した。お米と一緒に食べるミソは格別だった。カラアゲとテンプラも、ショウユを味わえて満足している。
「ミソとショウユを使った料理はほかにもあるの?」
コパリュスがカラアゲを食べてから聞いてくる。
「もちろん、いろいろあるよ。食材が増えれば料理の幅も増えるから、コルンジさんに野菜や調味料を聞いてみるつもり」
「それは楽しみなの」
久しぶりのミソとショウユを使った料理を堪能しながら、楽しい食事の時間を過ごした。コパリュスとムーン、スターも喜んでくれたから、これからもミソとショウユを使って料理を作っていきたい。
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