第25話 たくさんの鉱物たち
今日は朝から運がよいみたい。宝石神殿の地下2階で採掘していたら、宝石採掘スキルのレベル7で可能なペリドットがみつかった。さらにレベル5のターコイズも採掘できた。
「コパは宝石になった姿がみたいの」
横にいたコパリュスが私の顔を覗き込みながら聞いてくる。かわいいコパリュスに頼まれたら断る理由はない。ムーンとスターは宝石神殿の庭へ遊びに行っていた。
「私もきれいな宝石をみたいから、採掘した原石をもって地下1階へ向かうね」
原石を宝石箱にしまって、コパリュスと一緒に地下1階へ移動した。
「コパは近くでメイアの作業をみているの」
「研磨は危険な作業だから、あまり顔は近づけないでね」
宝石加工スキルはレベル10だから、失敗はないと思う。でも鉱物は自然が作り出したものなので、何が起きるか分からない。
コパリュスが少し離れたのを確認してから、宝石箱からペリドットとターコイズの原石と宝石道具を取り出した。
最初は粗く削るため、大胆に原石を動かしながら完成するルースの形を思い浮かべる。考えたとおりに手と道具が動くのは慣れてきた証拠ね。この世界にあるスキルのおかげか、たぶん元の世界にくらべて短い時間で研磨ができている。
作業に集中しながら、粗い削りから徐々に原石の表面をきめ細かくしていく。思い浮かべた形どおりになって、表面がきれいに光り出せばルースの完成だった。
ペリドットとターコイズともに何個ものルースを作り出した。顔を上げるとコパリュスのかわいい顔が私をみていた。
「完成したの?」
「基本的な形だけれど、それぞれのかがやきが楽しめるルースの完成よ。コパリュスなら知っていると思うけれど、緑色のルースがペリドットで水色の不透明なルースがターコイズね」
ペリドットは表面に細かいカットをつけて、ターコイズは上面全体が曲面となるように加工をほどこした。
「ペリドットの深みがあるきらめきはすてきで、ターコイズの落ち着いた青色も見ていて飽きないの。メイアに任せれば、どのような原石も宝石に変身すると思うの」
コパリュスはルースの出来に満足してくれたみたい。私自身も納得のいくルースに仕上がったと思っている。
「透明感のあるペリドットと不透明なターコイズは対称的だけれど、どちらも宝石自体の特長を生かしたルースになったよ。昼食のときにムーンとスターにもペリドットとターコイズをみせたい。きっと気に入ってくれると思う」
「コパはメイアの料理が気に入っているの。お腹が空いたかな」
「もうそろそろ昼食の時間ね。片付けをしたら料理を作るね」
「コパも片付けと料理を手伝うの」
原石とルースや宝石道具を宝石箱へしまって、コパリュスと一緒に宝石神殿の4階へ向かった。調理場でコパリュスと一緒に料理を作っていると、ムーンとスターが戻ってきた。
料理が完成してみんなで昼食を楽しんだあとに、ムーンとスターへペリドットとターコイズをみせると、とても気に入ってくれた。
ムーンが宝石の詳細を聞いてきたので、宝石図鑑を取り出して宝石の特徴を説明する。目を輝かせながら、ムーンが私の話を聞いていた。
昼食後も宝石神殿の地下2階で、採掘作業を行っていた。近くにはコパリュスのみがいる。今日は午前中に続いて、午後も運がよいみたい。鑑定されていない鉱物がいくつか採掘できた。
「また新しい宝石が見つかったみたい」
手を止めてコパリュスに声をかけと、私の横にコパリュスが移動してきた。
「どのような宝石なの?」
「これから鑑定してみるね」
宝石鑑定スキルを使って、見慣れない鉱物を鑑定した。つぎつぎと鉱物の正体が判明した。すべての鉱物を鑑定して、視線をコパリュスへむける。
「宝石の名前を教えてほしいの」
「ひとつはアウイナイトよ。磨けば青色のきれいな宝石になると思う。残りは鉄と鋼ね。地金には向いてないけれど、いろいろなものに使えそう。詳細を宝石図鑑で確認するね」
宝石箱の蓋を開けて『宝石図鑑』と念じて、宝石図鑑を取り出した。最初にアウイナイトの頁を開く。
「色あざやかな青色なの。サファイアと異なった輝きかな」
コパリュスの言葉にしたがって宝石の絵に目を留める。私が知っているアウイナイトと同じ色合いだった。視線を説明文に移すと、アウイナイトはレベル5でターフェアイトと同じで産出量が少ないみたい。
「アウイナイトは、めったに採掘できないからレアストーンみたいね。コルンジさんが来たら渡せるように、宝石とジュエリーに加工しておきたい」
「どのような宝石とジュエリーになるのか楽しみなの」
「今日はもう少し採掘したいから、明日にでも宝石とジュエリーにしてみる。奉納には午前中に研磨したペリドットとターコイズがあるから安心してね」
充分に宝石神殿のレベルが上がっているけれど、できるだけ毎日、宝石やジュエリーを奉納している。宝石神殿の5階では精霊たちにも会えるので、いまでは宝石神殿の5階へ行くのが日課となっていた。
「メイアの好きなときに奉納してくれれば平気なの。鉄や鋼はアルミニウムみたいにジュエリー作成の材料に使うの?」
「すぐに思い浮かんだのは日用品や農具への利用だけれど、私では加工が無理だと思う。アルミニウムや銅をふくめた金属材料全般はいろいろと利用できるから、採掘した分は取っておくつもりよ」
「何が作られるか楽しみなの」
宝石鑑定と宝石図鑑での確認が終わると、また採掘を開始した。午後は集中的に採掘をおこなって、夕方前に宝石神殿の5階でペリドットとターコイズを奉納した。
夜にはムーンとスターに宝石図鑑からアウイナイトの絵を見せて、宝石を語る楽しい時間をみんなで一緒に過ごした。
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