宝石神殿レベル13
第23話 上位精霊
宝石神殿がレベル13になって何が変化したのかコパリュスに聞こうとしたところで、ひとつの異変に気づいた。
「コパリュス、ダイヤが大きくなっている」
視線をコパリュスへ向けた。ダイヤの見た目は同じようだけれど、今までの2倍くらいの大きさになっている。
「上位精霊になったの」
「今回の強化は精霊が変化するのね。そうだ、上位精霊になったのよね」
コパリュスからダイヤへ視線を戻した。
「ワシ、ジョウイ。コトバ、ハナセル」
上位精霊なら言葉を話せると聞いたけれど、実際に声を聞くとうれしさがこみ上げてくる。ダイヤの声は見た目と同じように、年配男性を思わせる深みがあった。
「やっと一緒に話せる。今後もよろしくね、ダイヤ」
「ワシ、ガンバル」
いつもと同じ仕草でダイヤがお辞儀する。手を出してダイヤを抱きかかえようとしたけれど、上位精霊でも触ることはできなかった。
「残念、触ることはできなかった」
「精霊は特別な存在なの。でも上位精霊ならメイアと繋がりを持つのは可能かな」
「繋がりとはどういう意味なの?」
コパリュスに顔を向けて聞き返した。中位精霊とは言葉のやり取りは出来なかったけれど、ある程度の意思疎通は出来ていると感じた。
「上位精霊はメイアに加護を与えられるの」
「ダイヤから加護をもらえるの? うれしいけれど私で平気?」
すでにオパリュス様とトナタイザンさんから加護をもらっている。精霊の加護は初めてだけれど、申し訳ない気持ちが先にあらわれた。
「メイア、ヤサシイ。ワシ、カゴ、アタエル」
私の前にダイヤが浮いている状態で移動してきた。
ダイヤがいつものようにお辞儀をしながら、私の周りを飛び回る。舞っている銀色の粒子は私を祝福してくれるようで、暖かな空間が私を包み込んだ。
「メイアに加護が与えられたの」
「ありがとう、ダイヤ」
私が言葉をかけると、ダイヤはお辞儀をしてから、ほかの精霊たちがいる場所へ移動した。並んだ精霊たちの中でダイヤの大きさが目立つけれど、きっとほかの精霊たちも上位精霊になると思う。宝石神殿のレベルを上げる理由がふえた。
「メイア様、すばらしいです。これで宝石神殿以外でも、土の精霊による助けを受けられるでしょう」
「メイアがすごくなって、ぼくもうれしい」
ムーンもスターも私に追加された加護を喜んでくれた。うれしくなってムーンとスターをなでると、フサフサとモフモフが私をいやしてくれた。ムーンとスターもうれしそうな表情をしている。
「せっかくだから特殊スキルの情報を確認したい」
「コパは宝石神殿の強化をみたいの」
ダイヤのことが気になって、宝石神殿の強化情報を確認していなかった。
「最初はコパリュスが確認してね。私はそのあとで平気よ」
「コパがさきに確認するの」
コパリュスが移動してテーブルに手を乗せると、近くにある画面に宝石神殿の情報が表示される。建物などの状態に変化はなかったけれど、機能向上の項目に土の上位精霊という項目があった。
「上位精霊に変わったけれど、どのような効果があるの?」
上位精霊は話せて加護が与えられるのは分かったけれど、宝石神殿への影響を聞いてみたかった。
「いままで以上に影響力が強くなるの。土の上位精霊なら、作物がたくさん育って味もおいしくなるかな」
「それは楽しみね。私のスキルを確認したら、畑でダイヤにお願いしたい」
「ワシ、ガンバル」
ダイヤがお辞儀をしてくれた。
コパリュスに変わって、私がテーブルに手を乗せる。画面に表示されている特殊スキル欄に土の上位精霊の加護が追加されていた。
「実際に加護の文字が載っていると、うれしい気持ちになる」
ほかの情報には変化はなかったけれど、ダイヤの加護だけで充分うれしかった。
一通りの確認が終わったあとに畑へ向かって移動した。宝石神殿の外は少し薄暗くなっているけれど、畑へ行くには充分の明るさでもあった。
時間をかけずに南西方向にある畑へ着いた。ちょうどトマトを育てている場所が近くにあった。
「ダイヤ、トマトがある付近の土を豊かにして」
すぐにダイヤが出現して、お辞儀をしてくれた。
「ツチ、ユタカニスル」
ダイヤはトマトがある場所へ移動して、周辺の土をさわった。いつもと同じく銀色の粒子が舞って土の中へ消えていく。見た目の変化は分からないけれど、きっとたくさん育って美味しいトマトができると思う。なぜか自信があった。
「ダイヤ、ありがとう」
「ワシ、ガンバッタ」
私の前に移動してからダイヤはお辞儀して、霧が晴れるように姿を消した。
「どの程度のトマトが育つのか、今から楽しみね」
「コパは夕食が楽しみかな」
「そういえば、もう夕食の時間よね。宝石神殿に戻って夕食を準備するね」
「コパも手伝うの」
みんなで宝石神殿の4階へ移動して夕食の準備を始めた。宝石神殿のレベルが上がったので、いつもよりも豪華な料理にして、デザートも気合いを入れた。
コパリュス、ムーン、スターは美味しそうに料理を食べてくれた。みんなの嬉しそうな顔を見ながら、私も料理に手をつけた。
後日、トマトの収穫が増えて味も濃厚になっていた。シンリト様たちの料理を作っているルーパさんとリテさんは、味の違いに驚いていた。いままで以上に美味しい料理を作れると喜んでくれた。
トマト以外の野菜や果物も、ダイヤの力を借りながら育てていった。食事が豊になって私もうれしかった。
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