第22話 宝石神殿に到着

 商業ギルドに登録してから数日後、宝石神殿へ出発した。王都ドリペットまでは伯爵家の使用人が送ってくれて、その後は私たちのみとなった。ギルド証があったので順調に移動できて、無事に宝石神殿の噴水前まで到着した。


「宝石神殿は落ち着けて、やっぱり居心地が一番よいみたい」

「メイアが宝石神殿を気に入ってくれてうれしいの」

「私にとって宝石神殿は、この世界でのふるさとだからね。もちろんコパリュスやムーン、それにスターや精霊たちがいるからよ」


「わたくしもメイア様と一緒に過ごせてうれしいです」

 ムーンが答えたのと同時に、私の言葉が届いたのか目の前にエメが出現した。うれしそうに私の周囲を飛び回りながら回転する。


「エメも喜んでくれるのね」

 肯定するかのように回転が早くなった。私たちが移動を始めると、エメは私の肩付近で浮遊しながら着いてくる。宝石神殿の4階へ移動して、旅行で使った荷物などの整理をおこなった。


 少し休憩を挟んだあとに、コパリュスと2人だけで宝石神殿の3階へ向かう。シンリト様とリンマルト様に帰宅した報告をするためで、いつもの部屋に2人はいた。

「シンリト様、リンマルト様、無事に戻ってきました」


「元気そうでなによりだ。領都アバーンはどうだった?」

 シンリト様が聞いてくる。

「とてもよい場所で料理も美味しかった。慈愛神殿も拝見して、今後の移動を考えて商業ギルド会員になったよ」


「楽しまれたようでよかったですわ」

「それで手紙は渡してくれたか?」

「はい、トクツァイン様に渡しました。それでジュエリー制作を引き受けました」


「そうか、メイアなら国王陛下への献上品に選ばれる実力はあると思っている」

 シンリト様が答えるとリンマルト様も頷いている。私のジュエリーをそこまで評価してくれているから、私も期待へ応えられるように頑張りたい。


「作るからには気に入ってくれるジュエリーを作りたい。何かアドバイスがあれば教えてほしい」

「宝石は国宝級のルビーとサファイアを使っても平気だ。どのようなジュエリーか今から楽しみだ」


「メイアさんの好きに作るのが一番かしら。自由な発想で作るジュエリーがメイアさんらくして、わたくしは好きですわ」

 シンリト様とリンマルト様が交互に答えてくれた。素材もアダマンタイトとダイヤモンド以外なら平気みたい。


「コパもメイアが作りたいジュエリーで平気だと思うの」

 コパリュスも同じ意見みたいで、私が作るジュエリーの方向性が決まった。

「今までと同じような感じで作ってみるね。ジュエリーの種類やデザインが決まったら、また相談させてほしい」


「それは構わない。いつでも聞いてくれ」

「ありがとう。早めにデザインを考えるね」

 シンリト様とリンマルト様にお礼を言って、部屋をあとにした。


 その日はガルナモイトさんたちにも宝石神殿へ戻ってきたことを報告して、いつもよりも早い時間帯で眠りについた。


 今日は宝石神殿の地下1階で奉納するジュエリーを作っていた。横にはムーンとスターがいる。もうそろそろ夕食の準備を始める時間帯で、奉納するジュエリーは完成していた。いまは献上品のジュエリーデザインを考えている。


「どのようなジュエリーにするのか決まりましたか?」

 ムーンが聞いてくる。


「地金はオリハルコンで宝石はルビーとサファイアを使う予定よ。ジュエリー自体は1つのジュエリーで勝負するのか、パリュールのセットでいくかは未定ね」

 大作のティアラなら目を惹くと思うし、統一感のあるパリュールも捨てがたい。


「わたくしはメイア様の作ったジュエリーなら、どれもすてきだと思います」

「ぼく、メイアのジュエリーがだいすき」


「ムーンもスターもありがとう。すべての人が満足するジュエリーを作るのは難しいけれど、少なくともトクツァイン様とフェースン様が喜ぶジュエリーを作りたい」

 デザインが決まるまでは関連する素材を多く採掘して、どのようなデザインになっても対応できるようにしたい。


「メイアのジュエリー作成は終わったの?」

 ムーンとスターと話していると、コパリュスが地下1階に訪れた。

「さきほど終わったところよ。いくつかのジュエリーはこれから奉納する予定ね」


「コパも一緒に行くの」

「みんなで行こうね」

 コパリュスを入れて、全員で宝石神殿の5階へ向かった。5階の扉を開けると、精霊たちが出迎えてくれた。


 オパリュス様の像がある手前の奉納台へ、今日作ったジュエリーを置く。コパリュス、ムーン、スターが身につける姿を思い浮かべながら作ったジュエリーだった。

 淡い光とともにジュエリーが消えると、私たちを祝福するような光が部屋全体に充満していく。宝石神殿がレベル13になった証だった。

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