宝石神殿レベル12

第16話 強化された道

 宝石とジュエリーの奉納後に宝石神殿がレベル12となって、今度は何が変化したのか楽しみでもあった。

「前回は女神様の加護が強化されたのよね。今度は何かな?」


「見て分かる内容だから、早く画面を見たいの」

 私たちは奉納台の前から石のテーブルへ移動した。コパリュスが石のテーブルへ手を置くと、近くにある画面に宝石神殿の情報が表示される。


 たしかに今までと表示内容が異なっていた。

「宝石神殿の周辺にあるムジェの森まで表示されて、範囲が広がっているのね。それと南側にある緑色の線は何なの?」


「導きの道と呼ばれる、安全な道が南側にできたの。強さが普通くらいの魔物程度なら、導きの道には入れないかな」

「ムジェの森の外へ行くのが便利になるのね。南側なら、シストメアちゃんも宝石神殿へ来やすくなりそう」

 シストメアちゃんにはまた遊びに来てもらいたいし、私もスークパル王国へ出かけてみたい。


「南門の内側に新たな建物の表示があります」

 ムーンの言葉を聞いて画面で確認すると、たしかに建物ができていた。

「何の建物なの?」

 コパリュスへ聞いた。


「詰所と倉庫なの。コパは実際の建物と導きの道を見てみたいかな」

 コパリュスが私の腕を取って催促してくる。

「私もどのように変わったのか見てみたい」


「わたくしも同じです」

「ぼくも、そとにいきたい」

「みんなで見に行こうね」

 精霊たちに見送られながら、宝石神殿の5階をあとにした。


 宝石神殿を出てから噴水を通り過ぎて、南に向かって歩き出す。

「ぼくはそらから、しんでんをみたい」

 ムーンの背中にいたスターが羽ばたいて、私の周囲を飛び回ったあとに目の前の地面へ降り立った。


「もう飛べるようになったの?」

 スターは私に抱かれているか、ムーンの背中にいる機会が多かったので、まさか飛べるほどに翼ができあがっているとは思わなかった。


「スーちゃんなら、もう長距離も飛べると思うの。飛ぶ速度も速いと思うからムジェの森上空でも平気かな」

「いつの間にか成長したのね。それなら私はスターが飛ぶ姿をみたい。宝石神殿の上空を飛んでみてくれる?」

 目の前にいるスターへ聞いてみる。


「そらをとぶから、メイアはみてて」

 翼を羽ばたかせてスターが飛び出した。思った以上に速い速度で、すぐに宝石神殿の上空へと到達した。スターは8の字を書くように飛んで、高低差も変えている。小さいながらもグリフォンとしてのりりしい姿があった。


「私が知っているどの鳥よりも速く飛んでいる。グリフォンはすごいのね」

「スーちゃんはまだ幼いけれど、グリフォンの中でも速いと思うの」

「成長すれば、もっと速くなる可能性もあるのね」

 スターに向かって手を振った。私の動作に気づいたのか、スターが降りてくる。


「とぶのはたのしい」

「スターの飛んでいる姿はすてきだったよ。また飛んでいる姿を見せてね」

「また、とびたい」

 スターを抱きかかえてから頭を撫でると、喜ぶように頭をすり寄せてきた。スターとのひとときを過ごしたあとに移動を開始した。


 スターはムーンの背中に戻って、みんなで歩いて南門がみえる位置まで来た。南門の左右手前には見慣れない建物が見えた。

「左側が詰所で右側が倉庫なの。詰所は宿屋みたいに誰かが寝泊まりできて、倉庫は品物を多く保管できるかな」


 コパリュスが新しくできた建物を説明してくれた。詰所は2階建てで倉庫は1階のみだった。外観の雰囲気は宿屋などに似ている。

「寝泊まりができるのなら、本来は門番が常駐して出入りを管理するのかな?」


「その通りなの。今は必要ないかもしれないけれど、役に立つと思うの」

 コパリュスの表情は少し寂しそうにみえた。きっと賑やかな宝石神殿の時代があったのかも知れない。


「徐々に宝石神殿を訪れる旅人が増えてきたから、きっと賑やかになると思うよ」

 話ながらコパリュスの頭をなでてあげると、表情が和らいだように感じた。

「メイアなら、きっと宝石神殿をすてきにしてくれるの」

「頑張ってレベル上げをするね」


 南門を通り過ぎると、きれいに整った道が奥まで続いている。道の両側には木々が等間隔に並んでいて、南門に一番近いところには石柱が建っている。石柱は見上げるほどの高さで丈夫にもみえた。


「この道が、導きの道なの。ムジェの森の中央付近まであるかな」

「すごく広くてきれいな道ね。馬車が2台並んで通れる広さがありそう」

「神秘的な場所です」

 ムーンの感想だけれど、私も同じ思いだった。


「導きの道の上なら、普通の魔物なら入ってこないのよね」

「その考えであっているの。正確には出入口にある石柱4本の内側かな。上空も石柱の高さまでなら安全なの」


 南門近くにあった石柱へ目を向けた。こちら側に2本あるから、この道の先には同じような石柱が2本あるみたい。

「安全に移動できるのはうれしい。あとでシンリト様やガルナモイトさんたちにも教えておかないとね」


 しばらくの間、導きの道をみてから宝石神殿へと戻った。途中の宿屋でガルナモイトさんたちに、宝石神殿ではシンリト様たちに導きの道を説明した。みんな安全に移動できることを喜んでくれた。

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