第14話 グリフォンと一緒
悪者たちを引き連れて宝石神殿の噴水前まできた。私はスターを抱えて、横にはコパリュスとムーンがいる。悪者たちはトナタイザンさんが目を光らせていた。
「この者たちは如何するつもりだ」
トナタイザンさんが聞いてくる。この世界での対処方法を私は知らないので、知っていそうな人物を考えた。
「ガルナモイトさんたちは冒険者だったから、こういうのに慣れていそう。どうすればよいか知っているかもしれない」
「コパが呼んでくるの」
「お願いするね」
コパリュスが宿屋に歩き出した。
しばらくすると、ガルナモイトさんたち4人が姿を現す。
「メイアちゃん、ムジェの森に怪しい人物がいたのかい」
マクアアンリさんが聞いてきた。
「グリフォンの卵を盗んだみたいなのよ」
「赤ちゃんがいるにゃ。グリフォンかにゃ?」
スズリピララさんが私に近寄ってきて、抱えているスターを覗き込む。スターは少し緊張しているのか、私の腕に体を押しつけるようにしている。でも逃げる素振りはなかった。
「その通りよ。卵を確保したら産まれて、名前はスターよ」
「すてきな名前にゃ。触っても平気かにゃ?」
「まだ生まれたばかりだけれど、どうかな」
視線を腕の中にいるスターへむけると、りりしい姿のスターと視線に合った。
「メイアがいれば、ぼくはへいき」
「喋ったにゃ」
明らかに驚いているスズリピララさんがいる。話せるグリフォンは冒険者でも珍しいみたい。
「スターは賢いのよ。触っても平気だけれど生まれたばかりだから気をつけてね」
「やさしく触るにゃ」
スズリピララさんがスターへ手を伸ばした。最初は恐る恐る撫でていたけれど、問題ないと分かると大きく撫で始めた。
「貴重なグリフォンです。大事にしたほうがよいと思います」
トアイライオさんも驚きながらも、私に声をかけてきた。
「大切に育てるつもりよ」
「自分たちへの用事は?」
ガルナモイトさんで、本来の目的を思い出した。
「実はムジェの森で、グリフォンの卵を盗んで運んでいた者がいたのよ。コパリュスとトナタイザンさんで捕まえたけれど、どうすればよいか相談したかったの」
話し終わったあとに、視線をトナタイザンさんがいる方向へ向けた。ガルナモイトさんたちも、私の視線に合わせて向きを変えた。
「メイアちゃんたちには驚いたさ。彼らは有名な盗賊団で、裏闇の黒ウルフだよ。レッキュート連合国を拠点にしていて、冒険者ギルドも手を焼いていたのさ」
マクアアンリさんが教えてくれた。
「そこまですごい盗賊団が、宝石神殿へ来る前に捕まえられてよかった。このまま宝石神殿に置いておけないけれど、如何すればよいと思う?」
マクアアンリさんへ聞き返す。
「冒険者ギルドで懸賞金がかけられていたから、引き渡すのが1番だよ。レッキュート連合国に行ってみるかい」
「旅として行ってみたいけれど、冒険者ギルドにも詳しくないから、代わりにガルナモイトさんたちにお願いすることは可能? もちろん懸賞金は山分けよ」
右も左も分からない場所だから、お願いするのが1番と思った。
「対応は可能。でも自分たちだと人数が足りない」
「あたいもガルナモイトと同じ意見さ。ムジェの森は強い魔物がいて、盗賊団を監視しながらだと大変だよ」
ガルナモイトさんに続いてマクアアンリさんが答えてくれた。私たちも一緒に行ければよかったけれど、シンリト様たちだけを宝石神殿に残すのは気が引けた。
「散歩がてらに、わしが一緒に行こう」
トナタイザンさんが近寄ってきて、うれしい提案をしてくれた。
「そうしてもらえると助かるけれど平気?」
「構わない。わしがいればムジェの森は安全だ」
「お言葉に甘えてお願いするね。今後またジュエリーや料理を用意しておくから、楽しみにしていてね」
「期待して待っている。盗賊団はわしが見ているから準備はゆっくりで大丈夫だ」
ガルナモイトさんたちが宿屋に向かった。冒険者で旅慣れているのか、あまり時間をかけずにガルナモイトさんたちが戻ってきた。
「出発する」
「気をつけて行ってきてね」
私たちはガルナモイトさんたちを見送った。
「トナタイザンもいるから大丈夫なの」
私の不安な気持ちを、コパリュスが感じ取ったのかもしれない。コパリュスの声は私を励ますような明るさがあった。
「ガルナモイトさんたちも強いから大丈夫よね。噴水周辺にいつまでいても仕方がないし、スターをシンリト様たちに紹介しないとね」
コパリュスとムーン、それにスターと一緒に宝石神殿の3階へ移動する。シンリト様とリンマルト様、使用人たちにスターを紹介すると、最初は驚いていたけれど歓迎してくれた。新たな家族ができた1日だった。
10日以上も経過したある日、ガルナモイトさんたちは無事に宝石神殿へ戻ってきた。その日はトナタイザンさんも含めた宝石神殿の住人で、夜遅くまで美味しい料理と飲み物で楽しく過ごした。
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