第11話 レア宝石コレクター
コルンジさんがうれしい知らせをもってきてくれたけれど内容を知らない。
「この場所で話せる内容かな? それとも噴水に行ったほうがよさそう?」
「秘密にする内容ではありませんので、この場所でも平気です」
「うれしい知らせみたいだから今聞いてみたい」
椅子に座った状態で向かい側にいるコルンジさんへ聞いた。
「実はスフェーンのジュエリーが売れたのです」
「本当? なかなか買う人はいないと思っていたけれどうれしい」
「たしかに売れました。さらにもっと珍しい宝石はないのかと聞かれました」
珍しい宝石が大好きな、いわゆるレアコレクターみたいね。これからいろいろな珍しい宝石が採掘できればきっと喜びそう。
「今は珍しい宝石はないけれど見つかったら連絡するね」
「お願いします。スフェーン単体もほしいと言われたのですが可能でしょうか」
宝石単体であるルースにも興味があるのなら話が合いそう。会って宝石を語りたいけれど、そのためにも満足のいくルースを作らないとね。
「手持ちはないけれど明日には作れると思う」
「有り難うございます。数日は滞在したいのですが平気でしょうか」
「宿屋にはガルナモイトさんたちに話せば泊まれるよ。ところでどのような人が購入したの? できれば一度会ってみたいかな」
ルース好きは元の世界でもめったにいなかったので、どのような人か興味が出てコルンジさんに質問した。
「ハーフリング族の男性で、レッキュート連合国で名の知れた賢者ヤシャシートン殿です。スフェーンのジュエリー制作者なら、喜んで会ってくれると思います」
「レッキュート連合国に行く機会があればぜひ会ってみたい。ところで賢者は魔法や知識に長けている感じであっている?」
後半部分の質問は横にいるコパリュスにむけてだった。
「概ねその通りなの。賢者と呼ばれるなら達人レベルの能力があるかな」
「それは凄い人が興味を持ってくれたのね」
ハーフリング族にもついて聞いたところ元の世界と同じみたいで、大人でもヒューマン族の半分くらいの背丈みたい。見た目はヒューマン族に似ているらしい。
「賢者殿は魔石具も作っていて、機能や完成度もすばらしいです。賢者殿がひいきにしてくれれば何かのときに助かるので、今後も珍しい宝石やジュエリーがありましたら取り引きさせてください」
お願いするように、コルンジさんが頭を下げる。コルンジさんとは何度か取り引きして問題ないことを知っているので、断る理由はなかった。
「コルンジさんには危険なムジェの森まで品物を届けてくれるから、こちらこそ今後もお願いね。珍しい宝石ではないけれど、新しいジュエリーならあるよ」
「それは楽しみです。商隊の状態を確認したいので、そのあとにじっくりと拝見させて頂けないでしょうか。こちらからは砂糖や塩、日用品を用意しています」
「それで平気よ。宿屋にはガルナモイトさんたちがいるから、声をかけてから休憩してね。朝食がまだなら用意してもらえると思う。少し立ってから私のほうから宿屋へ行くね」
コルンジさんとコパリュスと一緒に噴水前まで移動した。コルンジさんと別れてから、コパリュスと一緒に宝石神殿へと入った。
コルンジさんへみせるジュエリーの準備をしてから、コパリュスとムーンと一緒に朝食を済ませた。
少し休憩をしてから今度はムーンと一緒に宿屋へ向かった。宿屋に入るとコルンジさんは2階で待っていると教えてもらって階段をのぼる。部屋に入るとコルンジさんが出迎えてくれた。
「お待ちしておりました。どうぞ椅子におかけになってください」
椅子に座ると向かい側にコルンジさんが座った。私の横にはムーンがいる。
「新しいジュエリーを持ってきたよ。説明よりも見たほうが早いと思う」
あらかじめ袋に入れておいたゴールドの中空ネックレスを3本、コルンジさんの前へ置く。デザインが異なっていて、身につける人を想定しながら作成した。
「見た目は普通のネックレスですね。品質はいつもどおり素晴らしいですが、どのあたりが新しいジュエリーかは分かりません」
「手にとって確かめれば分かるわよ」
「確認させて頂きます」
コルンジさんがネックレスを手にとった。すぐに目を大きく見開いて私のほうへ顔を向ける。
「違いは分かった?」
「ゴールドに見えますが異なる地金でしょうか。ゴールドなら軽すぎます」
「地金はゴールドよ。作り方に工夫があって、その部分が新しいジュエリーね」
「わたくしもその軽さに驚きました」
ムーンも初めて中空ネックレスを触ったときの感想を話す。
「それぞれでデザインは異なりますが、見た目に変わった点はありません。どうしてこのように軽いのでしょうか」
「中空ネックレスと呼ばれるジュエリーよ。中身が空洞だから軽くなっている」
見本で作った輪切りの中空部品単体をコルンジさんへ渡すと、手にとって確認を始める。中空部品を手の上で転がしながら何度も頷いていた。
「たしかに中身には何もなくて驚きの作りです。これなら異常な軽さも納得できますが、なぜこのようなジュエリーを作ったのでしょうか」
「豪華なジュエリーは重たくなりやすいから、誰もが重さを気にせずにジュエリーを楽しめるようにしたかったからよ」
空想の小柄な女性が中空ネックレスを身につける姿を思い浮かべる。なるべく宝石調和スキルを使う意識をもつようにしていた。
「面白い発想です。たしかに重いジュエリーを敬遠するお客様もいますので、何点か購入したいです。そのほかにも高級ジュエリーをお願いしたいです」
「エメラルドやガーネットの高級ジュエリーもあるから一緒にみてね。私は食材と日用品を中心に交換したい」
「有り難うございます。助かります」
コルンジさんが部屋に食材と日用品をもってきて、私は中空ネックレスと高級ジュエリーをコルンジさんへみせた。価格的にジュエリーが高いので、差額分は金貨で取り引きした。
コルンジさんと取引が終わった後、ムーンと一緒に宝石神殿の地下2階へ行ってスフェーンの採掘を始めた。ある程度の量が採掘できると地下1階へ移動してルースへの加工をおこなう。
翌日、カットの異なるスフェーンをコルンジさんへみせると嬉しそうな笑顔を見せてくれた。こちらは金貨で取り引きをおこなった。数日後にコルンジさんの商隊は宝石神殿をあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます