宝石神殿レベル11

第7話 見えない幸せ

 ジュエリーの奉納が終わって宝石神殿がレベル11になった。私もうれしくて、コパリュスとムーンも喜んでいる。

「うれしい知らせよ。精霊出現などはないみたいだけれど、何が変化したの?」

 横にいるコパリュスに聞いた。


「画面を見てもらうほうが、楽しみがあると思うの」

 コパリュスは移動して近くにある石のテーブルへ手をのせると、画面に宝石神殿の情報が表示された。


「宝石神殿のレベルが11になっているけれど、地図には変化がないみたい」

「機能向上なの。女神の加護が強化された感じかな」

「今回は宝石神殿ではなくて、オパリュス様自身なのね」


 今までは宝石神殿内の機能向上や精霊たちの出現だった。どのように女神の加護が強化されたのか興味があるので、コパリュスの顔をじっとみる。

「宝石になりにくい、宝石にならない鉱物が採掘されやすくなるの」

「もしかして地金や岩塩などの鉱物?」


「その通りなの。どのような鉱物かは実際に採掘してみて欲しいかな」

「明日にでも確かめてみるね」

「メイア様の目が輝いているようにみえます」

 ムーンの言葉から、私のうれしさが顔に出ていたみたい。たしかに新しい鉱物には興味があって楽しみでもあった。


「新たな出会いだからね。宝石図鑑に表示されたら一緒にみようね」

「楽しみにしています」

 その日の夕食は豪華にして、夜遅くまで宝石神殿のレベルアップを祝った。


 翌日の朝食後に宝石神殿の地下2階で、採掘の準備を始めた。コパリュスとムーンも一緒に来ていて、どのような鉱物が採掘されるのか楽しみにしている。

「さっそく採掘を始めるね」


「コパとムーちゃんは近くでまっているの」

 宝石箱からツルハシを取り出して、中央にある採掘所へむかう。狙いを定めながらツルハシを振り下ろして、夢中になって鉱物を採掘していく。次から次へとみなれた鉱物が地中から姿を現した。


 何度かツルハシを振り下ろしたあとに手の動きを止めた。

「見覚えのない鉱物が採掘できたかも」

 採掘したばかりの鉱物は慣れないと同じようにみえると思う。でも何度も採掘してスキルもあるので、感覚的に鉱物の種類がわかるようになってきた。


「どのような鉱物ですか」

 ムーンが近寄りながら聞いてくる。

「さっそく鑑定してみるね」

「楽しみです」


 ツルハシをおいて、見覚えのない鉱物を手にとって宝石鑑定スキルを使った。レベル10になっているスキルだから問題なく鑑定が成功した。

「アルミニウムが採掘できたよ。レベルは3みたい」


「女神の加護が強化された影響なの」

 コパリュスが私の腕を取りながら、嬉しそうに笑顔で答えてくれる。

「宝石には使えないけれど、使い道はあるから新しい鉱物が採掘できてうれしい」


「何に使えるのでしょうか」

 質問へ答えるために視線をムーンにむけた。

「ジュエリーを作るときの材料に使えないか、考えてみるつもりよ。ほかには農作業や生活の道具に利用したいけれど、私では道具に加工できないのが問題ね」


「新しい発想のジュエリーは楽しみです。はやく見てみたいです」

 ムーンが私にすり寄ってくる。ムーンの温もりが伝わってきて、銀色のフサフサとモフモフをなでた。つやのある毛並みは心地よかった。


「利用方法が決まったら、コパリュスとムーンに知らせるね。今回はアルミニウムだけれど宝石以外の鉱物はたくさんあるから、もう少し採掘してみる」

 鉱物が全体で何種類あるかは不明だけれど、宝石といえる鉱物は極少数のはず。珍しい鉱物が採掘できる楽しみもあった。


 ツルハシを手にとって採掘を開始する。一定量の採掘が終わると地下1階へ移動して、ルースの元となる状態まで軽く研磨した。何度か往復を繰り返していると、見覚えのない鉱物がみつかったので、その場で宝石鑑定スキルを使う。


 鑑定が終わって視線をあげると、コパリュスの顔が近くにあった。

「今度の鉱物が何かを知りたいの」

「レベル4の銅よ。これでアルミニウムと銅が見つかったから、金属材料が見つかりやすいみたい」


「鉱物はたくさんあるから楽しみにしてほしいの。でもコパは昼食が楽しみかな」

「もう少しで4回目の鐘が鳴ると思います」

「いつの間にか時間が経っていたみたい。片付けをしたら昼食にしようね」


「コパはお肉料理が食べたいの」

 私の腕を取ってコパリュスが催促してくる。かわいいコパリュスの希望を断る理由はなかった。


「トナタイザンさんからもらったお肉があるから、野菜と一緒に料理するね」

「楽しみなの。コパも料理を手伝うの」

 採掘した鉱物は宝石箱へしまって、周囲の片付けを終えてから、コパリュスとムーンと一緒に宝石神殿の4階へむかった。

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