第5話 うれしい収穫
今日は朝から宝石神殿の地下1階と地下2階で、鉱物の採掘とジュエリー加工をおこなっていた。オパリュス様が話していた新しい鉱物の採掘はなかったから、近い将来はもう少し先みたい。
「メイア様、鐘の音色が聞こえています。農作業の時間です」
近寄ってきたムーンが教えてくれた。ガルナモイトさんと一緒に農作業予定で、集合時間は3回目の鐘が目安だった。コパリュスはトナタイザンさんと一緒にムジェの森へ出かけている。
「もう時間なのね。区切りもよいから、片付けをしてから果樹園へ向かうね」
道具を宝石箱へしまって、ムーンと一緒に部屋をあとにする。
果樹園につくとガルナモイトさんたち4人の姿がみえた。
「準備はできている」
ガルナモイトさんだった。
「ブドウを育てるのにダイヤを呼ぶね。今日はそのあとにリンゴとレモンの収穫であっているよね」
「そのとおりさ。メイアちゃん、土の精霊を呼んでくれるかい」
マクアアンリさんが答えてくれて、私にカゴを2つ渡してくれた。リンゴとレモンを入れるカゴだった。スズリピララさんはカゴを背負って準備万端みたい。
「ダイヤ、ブドウの土を豊かにしてほしい」
目の前に出現したダイヤは、お辞儀をしてからブドウの木へむかった。ダイヤがブドウの根元にある土に手をかざすと、精霊が関与した証である銀色の粒子が舞う。銀色の粒子が消えると、ダイヤが私の元に来てお辞儀をしてくれた。
「ブドウの成長が楽しみにゃ。リンゴやレモンもどのような料理になるのか待ち遠しいにゃ。はやく収穫を始めたいにゃ」
スズリピララさんが催促するように話す。ブドウの収穫はもう少しさきだった。
「さっそくリンゴの収穫から始めるかい」
マクアアンリさんの声に、スズリピララさんはリンゴの木に向かって歩き出す。私たちもあとに続いた。リンゴの甘い香りが周囲に漂ってきた。
たくさんの赤いリンゴが実っていて、スズリピララさんが色つやのよいリンゴからカゴに入れていく。私もムーンと一緒に収穫可能なリンゴを探してカゴに入れる。
「美味しそうなリンゴだから、このまま食べても甘そうね」
「どのような味なのか楽しみです。リンゴの量が多いですか平気ですか」
収穫を手伝ってくれるムーンが聞いてきた。
「食べきれない分は料理に使うつもりよ」
「新たな料理なら、コパリュス様も喜ぶと思います」
「何か考えてみるね」
ムーンと話ながらリンゴをカゴに入れていく。スズリピララさんは器用に収穫している。マクアアンリさんが近くによってきた。
「メイアちゃん、収穫は順調かい」
「思った以上に実っていて、好きなだけリンゴが採れたよ」
「それはよかった。つぎはレモンの収穫だよ」
マクアアンリさんにつれられてレモンの木へむかった。緑の葉っぱの中にレモンが大きく実っていて、収穫時期だと知らせてくれる。
柑橘類のさわやかな香りと表面のごつごつ感を楽しみながら、リングとは別のカゴへレモンを入れた。
「ダイヤのおかげで、作物の収穫はいつも豊かでうれしい」
レモンを収穫しながらムーンに話しかけた。
「作物だけではなくて、宝石神殿全体が豊かだと思います」
「たしかにムーンの言うとおりね。安全な水や火があって、おいしい空気もあるすてきな場所よね。すべての精霊たちに感謝してもしきれない」
「メイア様が宝石神殿に貢献しているからです」
「これからも頑張るね」
ムーンと会話を楽しみながらレモンの収穫をおこなった。レモンの量が充分にそろうと、みんなで畑へむかう。先日収穫したダイコンは、引き抜くのが大変だった。
アズキの収穫はまださきだったけれど、イチゴが食べ頃だった。熟しているイチゴを見つけながらムーンと一緒に収穫をおこなった。
今日予定の収穫がすべて終わって、ガルナモイトさんたちと別れた。昼食の準備で宝石神殿の4階にある料理場へ移動する。
「今日の昼食は何の料理でしょうか」
ムーンが聞いてきた。
「さっぱりしたものを作る予定よ。料理の前に熟したイチゴがたくさん収穫できたから、イチゴジャムの下準備を先にするね。明日の朝食でパンと合わせるつもり」
「それは楽しみです」
ムーンがうれしそうに尻尾を振ってくれた。
過去の記憶を思い出しながら、イチゴジャム作りを始めた。イチゴのへたをとって適度な大きさに切って、貴重な砂糖も贅沢につかう。
「これで下準備は完了ね。昼食後にはイチゴが馴染んでいるから、本格的にイチゴジャム作りを開始できる」
「メイアは何を作っているの?」
コパリュスが料理場に顔を出した。
「イチゴジャムの下準備よ。明日の朝食で使うから楽しみにしてね」
「待ち遠しいの。でもコパは昼食がもっと待ち遠しいかな」
「これから作るね」
「コパも一緒に手伝うの」
「食材を渡すから食べやすい大きさに切ってね」
宝石神殿の後ろ側にある倉庫から持ってきた、お肉と野菜をコパリュスに渡す。私は鍋に水を沸かしてゆでる準備を始めた。並行してダイコンをすりおろす。デザート用のリンゴもコパリュスに切ってもらった。
完成した料理から順番にテーベルへ並べた。
昼食を食べ終わって、コパリュスと一緒にイチゴジャム作りを始める。ムーンは近くで私の作業を見学するみたい。
下準備したイチゴからは水分がでていた。鍋を火の魔石具に乗せてからイチゴを入れて、火の魔石具に手をかざして『炎』と念じると炎が出現する。
「コパも何か手伝いたいの」
「完成間近になったら、イチゴジャムを入れる容器を温めてほしい」
「それまでに蓋と容器を用意するの」
コパリュスを横目で見ながら、鍋の火を調整して沸騰をまった。しばらくすると鍋の中は色合いを変わりながら音も変化する。弱火にしてイチゴを煮込んだ。追加で砂糖を入れながら、とろみを確認する。
「もう少しで完成するよ」
「コパがすぐに蓋と容器を温めるの」
私は鍋の中に収穫したてのレモンもしぼっていれた。
「これで完成よ」
「コパが容器を並べるから、メイアは熱さに気をつけて欲しいかな」
「注意しながらイチゴジャムを容器に入れるね」
コパリュスが並べた容器に手早くイチゴジャムを詰め込んだ。すべての容器にイチゴジャムを入れて、最後に容器を温めてからゆっくりと冷やした。
「これで完成ですか」
ムーンが聞いてきた。
「あとは固まれば完成ね。明日の朝にみんなで食べようね」
「コパはいっぱいパンにつけるの」
「明日の朝が楽しみです」
コパリュスもムーンもイチゴジャムの完成を喜んでくれた。
翌朝、焼きたてのパンと一緒にイチゴジャムを堪能した。コパリュスとムーンのおいしく食べる顔が、私にはご褒美でもあった。
イチゴジャムをシンリト様、リンマルト様、ガルナモイトさんたちに贈ると喜んでくれた。次の日には美味しかったとの感想がうれしかった。つぎはほかの野菜や果物で挑戦してみたい。
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