第3話 あらたな宝石スキル

 2回目の鐘がなったあとに宝石神殿の1階へひとりでむかった。日課であるオパリュス様への感謝で、像の前にひざまずいてお祈りを始めた。


 目を閉じているのにもかかわらず、真っ白な空間がみえた。周囲には星が輝いているようにも感じる場所で、過去にも来た覚えがある。

「白石さんを無事に呼び寄せられました。元気な姿をいつも見ています」


 ひさしぶりに元の世界での名前で呼ばれた。声を意識すると、いつのまにかオパリュス様の姿が認識できた。笑顔を見せているオパリュス様は最初のときと同じく美しい姿で、白色のドレスは光を放っている。


「オパリュス様のおかげで、宝石神殿で楽しんでいるよ。コパリュスとムーンがいるから毎日が充実している」

 相手は女神様だけれど、最初に会ったときと同じ口調で答えた。


「わたしも白石さんのおかげで消滅の危機を回避できました。また幻のジュエリーもすてきです。本当にありがとう。これからも宝石神殿のレベルを上げてくれると、わたしはうれしいです」


「お礼を言われると何だか恥ずかしい。大好きな宝石に囲まれるだけで満足よ。今後もすてきな宝石やジュエリーを奉納するから楽しみにしていてね」

 好きな仕事をしているだけだから、感謝されると照れてしまう。でもオパリュス様が消えずに済んでよかった。


「奉納による宝石神殿のレベルアップで、わたしの能力も強化されました。新たな宝石の一般スキルを白石さんに授けます」

 たしか宝石神殿のレベル10はオパリュス様の能力強化だった。

「最初に頂いた3つのスキルはレベル10になったら、新しいスキルは楽しみよ。どのように宝石と関連するの?」


「宝石調和スキルです。ジュエリーを身につける者にたいして、どのようなジュエリーが似合うかを判断するスキルです」

「その人の特徴や服装から、適切な宝石の種類やジュエリーの組み合わせが分かる感じかな。これができると自信を持ってジュエリーを薦められる」


 ファッションなどのコーディネーターを思い出した。服装かジュエリーの違いはあるけれどイメージは近いはず。

「その通りです。絵や像が対象でもスキルを使えるので試してください。白石さんの日常がすてきになれば、わたしもうれしいです」


「ぜひ試してみるね」

「もうひとつ、近い将来に宝石採掘スキルで採掘される鉱物が増えます。とくに宝石以外の鉱物が多く増えていきます」


 宝石以外の鉱物も採掘できれば、いろいろと活用範囲が広がりそう。

「岩塩やミスリルなど、宝石にはならない鉱物の種類が増えるの?」

「その考えであっています」

「今後の楽しみに覚えていくね」


 宝石神殿のレベルが上がってオパリュス様の能力が強化される。このまま宝石神殿のレベルが上がれば、オパリュス様は誰もが認める女神になれるかもしれない。

 その役割を任せられている責任感は大きい反面、誇らしい仕事でもあった。


「のこり時間も僅かです。何かあればコパリュスに聞いてください」

「また会えるのを楽しみにしているね」

 オパリュス様の輪郭が薄れると、真っ白な空間が暗くなった。


 まぶたを開けると目の前にオパリュス様の像が建っていた。夢のような時間が終わったみたい。周囲を見渡したけれど、今までと同じ風景だった。

 新しいスキルを授かったから、すぐに5階へむかって確認したい。でも確認するのならコパリュスとムーンと一緒に見てみたいから、最初に4階へむかった。すぐにコパリュスとムーンが見つかった。


「オパリュス様が夢に現れて、宝石調和という新しいスキルを覚えたよ。これから5階で確認するけれど一緒にみる?」

「もちろんコパはついていくの」

「わたくしもお供します。どのようなスキルか楽しみです」


 コパリュスとムーンをつれて5階へむかった。部屋の中に入るとエメが近寄ってくる。うしろにはダイヤ、ルビー、サファが浮いていた。

「みんな元気そうね。今日は新しいスキルを覚えたのよ」

 精霊たちに語りかけると、みんな喜んでくれて態度で応えてくれた。石のテーベルに移動して手を乗せると、画面に私の情報が表示される。


「宝石調和スキルが増えています。どのようなスキルでしょうか」

 ムーンが聞いてきた。

「その人に似合う宝石の種類やジュエリーの組み合わせが分かるスキルよ。コパリュス、意味合いはあっているよね?」

 初めてのスキルなので念のためにコパリュスへ聞いた。


「その通りなの。このスキルはまだメイアしかもっていないから、いろいろと試しながら使って欲しいかな。きっと役に立つと思うの」

「絵や像でも平気みたいだから、場所を問わずにスキル上げができそう」

「メイア様のジュエリーが、今まで以上にすてきになります」

「楽しみにしていてね」


 宝石は好きだけれど、洋服の着こなしセンスは高くない。どのように宝石やジュエリーのコーディネートが上達するのか、私自身も楽しみだった。

「メイアもスキルが上がればコパもうれしいの。でも今はお腹を満たせるともっとうれしいかな」


「そういえば朝食がまだだった。すぐに料理を作るから4階へむかうね」

「コパも一緒に手伝うの」

 コパリュスが私の腕を取る。コパリュスとムーンをつれて4階へ移動した。

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