第51話 ジュエリーと女神像

 3回目の鐘がなるころに、宝石神殿の1階へみんなを集めた。シンリト様とリンマルト様に使用人、ガルナモイトさんたちだった。もちろん私の横には、コパリュスとムーンがいる。


「メイアちゃん、あたいたちに何か用事でもあるのかい」

 マクアアンリさんが聞いてきた。驚かせようと思って詳細は話していない。

「みんなに見てもらいたいジュエリーがあるのよ」


 事前に用意した大きな箱がテーブルにある。リボンをほどいて中身をみせた。ティアラ、イヤリング、ネックレス、ブローチ、ブレスレット、リング。すべてのジュリーは通常よりも大きかった。


「ダイヤモンドとアダマンタイトのジュエリーかしら。初めて見ましたわ」

 驚いた口調のリンマルト様は、私に視線をむけた。リンマルト様の言葉通りに、ダイヤモンドとアダマンタイトを使ったパリュールだった。


 トナタイザンさんに真紅の炎へ案内されたとき、ほかのジュエリーと一緒に作っていた。デザインはダイヤモンドを並べたのみだけれど、主役となる大きな複数のダイヤモンドは、すべてカットと形状が異なっていた。


「運よくすべての素材が入手出来たのよ。スキルを最大限に活用して作った渾身の強化済みジュエリー。飾る前に、みんなに見てもらいたかった」

「この世に存在しないジュエリーですわ。まだ信じられません」

「あたいは宝石にくわしくないさ。でもこのジュエリーのすごさはわかる」

 マクアアンリさんも食い入るようにジュエリーをみていた。


「このジュエリーをどうするのかにゃ。どこに飾るのかにゃ」

 スズリピララさんが聞いてきた。

「宝石神殿の1階にあるオパリュス様の像へ飾る」


「だからジュエリーが大きいのかにゃ」

「その通りよ。ジュエリーを飾ると間近で見られないので、みんなを呼んだのよ。手にとってもかまわないから、今のうちにみてね」


 私の言葉を聞くと、シンリト様とリンマルト様がジュエリーを手にした。2人が見終わると、ガルナモイトさんたちが恐る恐る手に取っていた。最後に使用人たちがジュエリーを堪能していた。


 全員が見終わったあとに、シンリト様が私のほうを向いた。

「飾っても平気なのか心配だ。宝石神殿を訪れる全員が善人とはかぎらない。もちろん私たちは盗まないが、欲に目がくらむ人物がいるはずだ」


「心配をありがとう。でも大丈夫よ。オパリュス様の像に飾るから、遠くからでは何の宝石か判断が難しいはず。それに取られない方法も考えてある」

「コパが魔法をかけるから取り外しはできないの。どこの誰が来ても、宝石神殿の敷地内ならコパは強いかな。たとえ神が来ても同じなの」


 シンリト様たちには例えに聞こえたかも知れないけれど、コパリュスの実力を私は知っていた。宝石神殿の敷地内ではオパリュス様は無敵だった。

「そこまで自信があるのなら私から言うことはない。貴重な体験だった」

「みんな見終わったみたいね。これから飾るから完成を楽しみにして」


 ガルナモイトさんたちに足場を用意してもらって、飾り付けは私がおこなった。ひとつひとつのジュエリーをていねいに作業した。ひとつのジュエリーが取り付け終わるごとに、みんなから拍手が沸いた。

 すべてのジュエリーがオパリュス様の像と一体になった。最後にコパリュスが魔法を唱えて飾り付けが完成した。いままで以上に大きな拍手が周囲を包んだ。


「これで取られる心配はないの。メイアのジュエリーはすてきで、宝石神殿も喜んでいると思う。コパもとってもうれしい」

「メイア様の気持ちが込められて、いつまでも眺めていられるジュエリーです」

「コパリュスとムーンが一緒にいてくれたおかげよ」


 オパリュス様の像周辺に精霊たちが出現して、像の周りを飛び回った。ダイヤ、エメ、ルビー、サファもジュエリーを気に入ってくれて祝福してくれた。


 その日の夕食は、みんなを集めて宝石神殿の1階で開いた。テーブルや椅子の運び込みはガルナモイトさんたちが対応した。料理は私と使用人が担当して、倉庫にある食材は好きなだけ使った。

 みんなおいしく料理を食べて、夜遅くまで楽しい時間を過ごした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る