宝石神殿レベル10

第49話 温泉でのんびり

 念願だった宝石神殿がレベル10になった。コパリュスがいつも以上に、うれしそうな笑顔を見せている。私もうれしかった。


「コパリュス、おめでとう。目標が達成できて私もうれしい」

「メイアのおかげで女神として胸を張れるの。ムーちゃんも手伝いをありがとう」

「わたくしも宝石神殿に来られて楽しかったです」

 しばらく3人で喜び合った。精霊たちもうれしそうに周囲を浮遊している。


「宝石神殿の機能は何か変化があったの?」

 私が聞くと、コパリュスが石のテーブルに手をのせた。画面に宝石神殿の情報が表示されたけれど、私には今までとの違いが分からなかった。


「レベル10は宝石神殿の機能強化はないの。その代わりに女神の能力が強化されたかな。見た目で変化しないのが残念」

 オパリュス様の能力が強化されたみたい。


「充分、うれしい知らせよ。宝石神殿はレベル10以上にも上がるの?」

「もっと高レベルの神殿もあるの」

「レベル11以降も楽しみね。つぎは私の宝石スキルを確認するね」

 コパリュスの代わりに石のテーブルへ手をおいた。


 うれしい情報が目に飛び込んできた。

「メイア様、すごいです。すべての宝石スキルがレベル10です」

「たくさんの宝石やジュエリーが作れて楽しかった」

 今日はおめでたい出来事が続いた。夕食を豪華にして楽しい時間を過ごした。


 翌日の日中、果樹園でくつろいでいた。適度な木陰があって、お気に入りの場所でもあった。木の根元に座って、となりにはコパリュスとムーンがいる。

 急にルビーとサファが姿を見せた。エメなら分かるけれど、ルビーとサファが呼ばれないのに出現するのは初めてだった。


「どうしたの? 私に用事でもあるの?」

 ルビーが飛び跳ねて、サファは敬礼をしてくれた。私に用事があるのは間違いないみたい。でも理由は不明だった。


「メイアを何処かに連れて行きたいかな」

 代わりにコパリュスが答えてくれた。女神様なら直接会話をしなくても、精霊の意図が読めるのかも知れない。


 私が立ち上がると、ルビーとサファが宝石神殿のほうへ動き出した。コパリュスとムーンをつれて、ルビーとサファのあとに続いた。宝石神殿を通り過ぎて、宿屋の横にある浴場で止まった。記憶のある匂いが私の鼻を通り抜けた。


「硫黄の匂いがする。場所は浴場よね。もしかして温泉?」

 ルビーとサファが態度で示してくれた。コパリュスに聞かなくても、私にも分かった。駆け足で浴場の中へ入った。


「独特の匂いがします。危険はないでしょうか」

 ムーンだった。幻獣だから鼻がよいのかも知れない。

「お湯の状態なら問題ないと思う。私が知っている温泉と同じね。適温にして浸かると体が温まって、疲れもとれるすぐれものよ」


「メイアはお湯で、お風呂に入っているの。そのお湯の代わりになるの?」

「その通りよ。この浴場を温泉浴場にしたい。改装しても平気?」

「メイアの好きな状態でかまわないの。コパも温泉に興味ある」

「ガルナモイトさんたちに手伝ってもらうね」


 となりの宿屋にむかった。マクアアンリさんがいたので理由を説明すると、快く引き受けてくれた。私は主に作りたい浴場の指示を出した。改装途中でトナタイザンさんが姿をみせたので、一緒に手伝ってもらった。


 男女別々の大きな浴場をひとつずつ作って、プライベート用に小さな浴場をいくつか用意した。数日後には温泉浴場が完成した。


 コパリュスとムーンと一緒に、プライベート用の浴場にいた。

「急に温泉へ入ると体へ負荷がかかるから、最初は少しずつ体にお湯をかけてね。そのあとに体を洗って温泉へ入る」


「メイアを真似しながら体を洗うの」

「ムーンは私が洗ってあげるね」

「助かります」


 全員の体が洗い終わると湯船に浸かった。ただのお湯と違って、温泉が肌に染み込んでくる。毎日温泉に入って肌をすべすべにしたい。


「やっぱり温泉は気持ちがよくて疲れもとれる」

「コパはずっと温泉に入っていたいの。とても気に入ったの」

「私も同じ気分。ただ長く入っているとのぼせるから、もう少ししたら上がるね」


 予想外の温泉だけれど、宝石神殿のみんなも喜んでくれて温泉を楽しんだ。シンリト様とリンマルト様にも好評で、シストメアちゃんが訪れたら一緒に入りたい。

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