第48話 王都で観光
シストメアちゃんの社交界デビューパーティーが無事におわった。トクツァイン様からお礼の言葉を頂いた。シストメアちゃんの笑顔が何よりもうれしかった。
今日はシストメアちゃんにつれられて王都ドリペットを観光する。コパリュスとムーンも一緒で、護衛のためにダイジェイトさんが同行していた。コパリュスの正体がばれないか心配だったけれど、堂々と聞いてくる人物はいないと答えてくれた。
「メイアは何処に行きたいですか」
「宝石やジュエリー関連のお店と、地元料理を味わってみたい。あとは王都の名所やシストメアちゃんのおすすめ場所を知りたい」
「最初に宝石店へ案内します。よく利用していますから普段通りで平気です」
貴族御用達のお店。王都内の宝石技術がどの程度か分かるかも知れない。ただひとつだけ気になることがあった。
「なじみの宝石店があるのなら、私がジュエリーを作って平気だったの?」
「問題ありません。食材の種と交換した、メイアのジュエリーを見せたら納得してくれました。ほかのジュエリーも見せて欲しいと言われたくらいです」
「それなら大丈夫そうね」
大通りに面した場所だった。お店の中に入るとていねいに出迎えてくれた。シストメアちゃんがお店の人へ声をかけると、何かお願いをされていた。
「メイアはジュエリーを持ってきていますか。参考にみたいそうです」
シストメアちゃんが聞いてきた。うしろにお店の人がいる。国宝級ジュエリーもあるけれど、あとあと問題になりそう。
「エメラルドやガーネットを使ったジュエリーならあるよ」
宝石箱から高級ジュエリーを取り出して、シストメアちゃんに渡した。お店の奥からも人が出てきて、ジュエリーを確認していた。
「ジュエリーを鑑定しても問題ないですか」
お店の人が聞いてきた。
「平気よ。その間にお店のジュエリーを見させてもらうね」
店内のジュエリーを眺めた。ていねいな作りで宝石の特長を生かしたジュエリーだった。ただ元の世界にある繊細なカットの宝石ではなくて、デザインも特殊な技法は使われていない。適正価格は不明だけれど、相対的な価格の傾向は納得できた。
「素晴らしい出来です。私どもの店で展示したいくらいです」
うれしい褒め言葉をもらった。でも私が直接王都までジュエリーを持ってくるのは難しい。ジュエリー作りの目的は宝石神殿への奉納だった。残りのジュエリーは、生活に必要な品物が購入できれば充分と思っている。
「ジュエリーを認めてくれてうれしい」
展示については言葉にしなかった。相手もそれ以上は聞いてこなかった。お店の奥にしまってあった、最高級ジュエリーを見せてもらえた。ジュエリーを堪能して宝石店をあとにした。
「コパはお腹が空いたの」
「私も王都名物の料理を食べたくなった。庶民的なお店を知らない?」
シストメアちゃんに聞いた。
「ダイジェイト、何処かお店を知っていますか」
「俺がよく行く店でよければ可能です」
「案内をお願い」
ダイジェイトさんに連れてきてもらったお店は、大衆食堂を思わせた。シストメアちゃんには場違いに思えたけれど、ダイジェイトさんが仕切ってくれて助かった。
「コパはお肉料理が食べたいの」
「私は色々な食材を使った料理を食べ比べたい」
持って帰れる食材があれば、宝石神殿で育ててみたかった。
「俺が適当に選ぶから、好きな料理を食べてくれ」
庶民がよく食べる料理や郷土料理をおいしく頂いた。
その後は由緒ある建物や景色を眺めて楽しく過ごした。高台からみた景色は、宝石箱を開けたようにきらびやかで活気に満ちている。奥に見える森は深みのある宝石を思い出す。夕方前には屋敷に戻ってきた。忘れられない1日になった。
数日後、シンリト様とリンマルト様と一緒に宝石神殿へむかった。シストメアちゃんと別れるのは寂しかったけれど、また宝石神殿へ行くと約束してくれた。帰り道も大きな問題はなくて、無事に宝石神殿へ到着できた。
普段の日常が戻ってくると、いつも通りに宝石採掘と宝石加工を楽しんだ。王都ドリペットでみてきたジュエリーも参考になった。
夕方になるとコパリュスとムーンをつれて、宝石神殿の5階へむかった。奉納台へジュエリーをおくと、淡い光とともにジュエリーが消えた。昨日と異なって部屋全体に光が充満した。宝石神殿が念願のレベル10になった。
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