第45話 初めての王都

 王都ドリペットへ行く5日前にジュエリーが完成した。シンリト様とリンマルト様にみせて合格の言葉を頂いた。


 3日前には、シンリト様とリンマルト様を送るために馬車が2台到着した。そのうち1台に私とコパリュス、ムーンが乗っていく。私たちがいない間の留守番は、トナタイザンさんにお願いした。


 出発する朝になった。ジュエリーや貴重品を宝石箱にしまって、コパリュスとムーンと一緒に噴水前へ移動した。念のために食材や日用品も宝石箱にいれた。

 シストメアちゃんの護衛をしていた、ダイジェイトさんたちが出迎えてくれた。


「お嬢様のジュエリーは持ったか」

「大事にしまってあるよ」

「馬車が揺れるから注意してくれ」

「ジュエリーは壊れないように保存してあるから大丈夫」

「それなら平気そうだ。俺たちが護衛するから、安心して旅を楽しんでくれ」


 コパリュスとムーンと一緒に馬車へ乗った。しばらくすると馬車が動き出した。振動さえ気にしなければ歩きよりも楽だった。

「ダイジェイトさんたちだけではなくて、コパリュスとムーンもいるから大丈夫だけれど、魔物に遭遇しなければ助かる」


「ムーちゃんがいるから平気なの」

「どういう意味?」

 ムーンは強くて魔物の気配を感じ取れる。近寄る前に倒すとしても、馬車の中では無理だと思う。ほかに方法でもあるかもしれない。


「わたくしが近づく魔物を威圧します。たいていの魔物は近づけません」

「それなら安心ね」

「メイア様はわたくしが守ります」

 コパリュスとムーンがいるおかげで、どこにいても安心できる。宝石神殿やジュエリーの話題から、王都ドリペットへと移った。


「コパリュスとムーンは、王都ドリペットを訪れたことはある?」

「基本は地上に来ないから、宝石神殿以外にはほとんど行かないの」

「わたくしもありません」

「シストメアちゃんの社交界デビューが終わったら、コパリュスとムーンと一緒に王都見学したい。宝石関連のお店も見てみたい」


 目的はジュエリーを届けることだけれど、せっかくだから観光もしたかった。

「コパは楽しみなの」

「わたくしは街中を歩いても平気でしょうか」

 いつも一緒で気にならなかったけれどムーンは幻獣だった。今まで宝石神殿を訪れた人たちの反応からは、幻獣に敵対心を感じなかった。

「シストメアちゃんに聞いてみるね」


 ムジェの森を順調に進んだ。食事の休憩時にダイジェイトさんたちと話すと、めずらしく魔物を見かけないという。通常は弱い魔物と何度か遭遇するみたい。


 2回目の夜が過ぎて朝になった。朝の食事を準備していると、ダイジェイトさんが近づいてきた。

「予定よりも早いが今日中にムジェの森を抜けられる。魔物が見当たらず怖いくらいだ。その後は治安も安定しているから、数日以内に王都ドリペットへ到着できる」


「魔物はムーンのおかげだと思う」

「幻獣フェンリルがいるから魔物が近寄らない。それなら納得だ」

「盗賊などには効果が小さいと思うから、これからも護衛をお願いね」

「任せてくれ。朝食が終わったら出発する」

 ダイジェイトさんがほかの護衛たちの元へ戻っていった。


 ムジェの森をぬけると街道沿いに移動を始めた。

 日が暮れる前に街へ到着できた。街は城壁で囲まれていて、ほぼ素通りで門をくぐれた。シンリト様とリンマルト様の影響だった。


 この街はムジェの森を監視する役目もあるみたい。街並みは歴史の教科書を見ているような感じだった。ほとんどが2階建てまでで宝石神殿の建物が豪華にみえる。

 宿屋の部屋で体を休めた。コパリュスとムーンと一緒の部屋だった。家具は最低限しかおいていないけれど、私たちが寝泊まりするには充分の広さだった。


「これからはゆっくり休めそう。今回は街の探索はむりね」

 シンリト様とリンマルト様、ジュエリーを王都ドリペットへ送るのが最優先。寄り道などをする機会はなかった。


「帰りなら寄れると思うの。コパはいつでもメイアに付き合うの」

「わたくしも一緒にお供します」

「時間ができたら街を一緒に回ろうね。今日は疲れたから早めに休むね」


 宿屋で夕食を食べながら、ダイジェイトさんたちと情報を交換した。シンリト様とリンマルト様の体調も順調で、明日の朝に街を出発する。街と街の間にある街道では魔物が出没するけれど、ムジェの森に比べれば魔物は弱いみたい。


 その後も順調に移動できた。何の問題も発生せずに、王都ドリペットがみえる丘へ到着した。窓からみえる王都ドリペットは、思った以上に大きかった。

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