第42話 トパーズのパリュール

 オコノミヤキを食べ終わって、食後の飲み物がテーブルの上においてある。

 シンリト様とリンマルト様がシストメアちゃんの近況を聞き終わった。話題が社交界デビューからジュエリーへと移った。


「シストメアちゃんには、どのようなジュエリーを作れば平気? レベル9までの宝石と地金を使った加工まで可能よ」

「達人レベルとはすごいです。でもそこまでは望んでいません」


「宝石はトパーズかスピネルで地金はオリハルコンですわ。ジュエリーはブレスレット、リング、イヤリング、ネックレスのセットでほしいかしら」

 リンマルト様が具体的に希望を教えてくれた。シストメアちゃんに恥をかかせない最高級ジュエリーを作りたい。


「宝石の種類と色は考えさせてね。デザインで希望はある?」

 シストメアちゃんに視線をむけた。

「メイアに任せます。ただドレスのデザインは決まったので合わせてほしいです」

 シストメアちゃんからドレスのデザイン画を見せてもらった。ピンク色のきれいなドレスで、模様と合わせたレース柄が目をひいた。


「じっくり考えたいから少し時間をもらえる?」

「数日の滞在期間なので、その間に決まれば平気です」

「明日の朝にジュエリー案を提案するね」


「わたくしもデザインを確認したいですわ」

 シストメアちゃんとリンマルト様にデザインを見せることになった。シストメアちゃんの部屋をあとにして4階へ移動した。椅子に座ってジュエリーを考え出す。横にはコパリュスとムーンがいた。


「どちらの宝石を使うのですか」

 ムーンが聞いてきた。ドレスを見たときに宝石は決めていた。『宝石箱』と念じてから、出現した宝石箱から宝石図鑑を取り出した。目当ての頁を開いた。


「今回はトパーズを使う予定。種類は赤みを帯びたオレンジ色で、ドレスの雰囲気や色合いにあっていると思うのよ」

 元の世界ではインペリアルトパーズと呼ばれる宝石だった。地金のオリハルコンが赤色なので、宝石の色とよい相乗効果を生みそう。


「赤色ともオレンジ色とも異なる、魅惑的な色合いです。となりにある青色のトパーズに比べると輝きが美しいです」

「ルビーと異なった赤色で、どちらの宝石もすてきよね」


「コパはどのようなデザインか知りたいの」

「ルースの大きさを変えて配置するくらいで、凝ったデザインはしない。その代わりに、ルースを留める爪が見えないように工夫するつもり」


 ネックレスは中央に大きなルースを使って、首に向かってルースを徐々に小さくする。あいだにはカラーレストパーズを配置して変化を与える予定。簡単なスケッチを描いてコパリュスとムーンにみせた。


「複数の宝石がひとつの宝石にみえて、存在感がすごいの。爪を隠す作り方は今までに見ていないかな」

「手間も工数もかかって作るのも難しいからね。でもシストメアちゃんが初めて社交界デビューする。恥をかかせないジュエリーを作りたい」

「メイア様なら、すてきなジュエリーを作れます」


 コパリュスとムーンに説明した内容を元に、デザイン案を描き始めた。全体的な雰囲気や目新しい部分は言葉で補足する。夜遅くまで試行錯誤を繰り返しながら、明日見せるデザインを完成させた。


 翌日の朝、宝石神殿の1階でオパリュス様にお祈りしていると、シストメアちゃんもお祈りに訪れた。毎日お祈りしているみたい。

「ジュエリーのデザイン案ができたから、朝食後に会える?」


「平気です。昨日と同じ部屋で待っています。お婆さまには私から連絡します」

「コパリュスとムーンをつれて行くね」

 朝食を済ませたあとに、シストメアちゃんが泊まっている部屋へむかった。部屋で少し待っていると、リンマルト様が姿をみせた。


 昨日考えたデザイン案を2人にみせた。全体的な方向性は満足してもらった。細かい部分で微調整が済むと最終デザインが完成した。

 納期や価格などのデザイン以外も取り交わしが終わった。シンリト様とリンマルト様は、シストメアちゃんの社交界デビュー前に王都ドリペットへ戻るみたい。私も2人に同行して、完成したジュエリーを届けることに決まった。

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