第41話 キャベツ料理

 コルンジさんたちがきた翌日の日中、今度はシストメアちゃんたちが宝石神殿を訪ねてきた。コパリュスが気配を察知して教えてくれたので、コパリュスとムーンをつれて噴水前で出迎えた。


 馬車からシストメアちゃんが降りて、私の前に歩いてきた。

「両親の説得に成功しました。すてきなジュエリーをお願いします」

「社交界デビューで使うジュエリーよね?」


「もうすぐ15歳になるので、そのときのパーティーで使いたいです。宝石やデザインは、お爺さまとお婆さまが許可すれば平気です」

「たいていのジュエリーなら作れるよ。今日は移動で疲れていると思うから、詳細は明日聞くね。宿泊は宝石神殿の2階と3階を使って」


「助かります。それから宝石に興味があって宝石鑑定スキルを習得しました。メイアには全然及ばないけれど、少しずつレベルも上がっています」

 シストメアちゃんはうれしそうに話しながら、コパリュスへ視線を向けていた。

「すっかり宝石の虜になったのね。私もうれしい」

 使用人のガットーネさんが近づいてきた。私のほうから宿泊場所と、商人が宿屋に泊まっていると説明した。


 シストメアちゃんたちを見送っていると、ガルナモイトさんが箱を抱えた姿で現れた。明らかに野菜で畑から戻ってきたみたい。

「キャベツが余った」


「順調に野菜が育っているみたい。ありがたくもらうね」

「精霊の力がすごい」

 定期的にダイヤへお願いして、土を豊かにしていた。当然ながら、ガルナモイトさんたちの知識があっての豊作だった。


「ダイヤはいつでも呼べるから必要なときは言ってね。昨日渡したニワトリとヤギは大丈夫そう?」

「問題ない」

 ガルナモイトさんが頷いてくれた。前は無口だったけれど、少しずつ会話が増えてきた。お礼を言ってから、コパリュスとムーンと一緒に宝石神殿の中へ入った。


「キャベツは新鮮なうちに食べたいよね。今日の夕食で使ってみる」

「また珍しい料理を作るの?」

 覗き込むようにコパリュスが聞いてきた。


「オコノミヤキという料理よ。この料理はみんなで作って一緒に食べると楽しい」

「コパは一緒に作っておいしく食べたいの」

「わたくしも料理道具や魔石具の準備を手伝います」

「楽しく料理が作れそう。せっかくだからシストメアちゃんを呼んでも平気?」

 久しぶりに会えたから一緒に食事もしたかった。


「コパはかまわないの」

「わたくしも大丈夫です」

「2人ともありがとう。2階と3階に行ってみるね」

 コパリュスとムーンをつれてシストメアちゃんを探した。


 シストメアちゃんは3階の部屋で休んでいた。来た理由を話すと、夕食はシンリト様とリンマルト様と一緒に食べるみたい。2人に確認するとオコノミヤキに興味があるようで、一緒に夕食をとることになった。


 シストメアちゃんの部屋に鉄板や火の魔石具を用意した。ガットーネさんにも手伝ってもらった。シンリト様とリンマルト様も席について準備が整った。

「オコノミヤキとはどのような料理ですか」

 シストメアちゃんが聞いてきた。


「水と小麦粉と卵を混ぜて、細かく刻んだキャベツや具材をいれてから鉄板で焼く料理よ。両面をこんがり焼いて、最後にソースをかければ完成」

 本当はマヨネーズが欲しかった。でも私には作り方が分からない。調味料は地道に探すしかないみたい。あとでコルンジさんに似た調味料がないか聞くつもり。


「コパは好きな具材を入れたいの」

「具材は細かく切るか、焼くときに並べても平気よ。最初は私が作ってみせるね。シストメアちゃんも一緒に作ってみる?」

「ぜひ作りたいです」


「具材を考えておいてね。最初にシンリト様とリンマルト様のオコノミヤキから作るね。好きな具材や苦手な食材はある?」

 2人に聞いた。好きな具材を使えるのがオコノミヤキの利点でもあった。


「私は肉を多めにお願いしたい。どの肉でも大丈夫だ」

「好き嫌いはありませんわ」

「手持ちの食材で作れそうなのでこのまま作るね」


 底の深い容器に水とほぐした卵と小麦粉を入れた。よくかき混ぜたあとに細かく刻んだ具材も追加してかき混ぜる。火の魔石具で温度調整した鉄板に椿油をひいて、かき混ぜた材料をゆっくりとのせた。


 固まりだしたら、シンリト様用には薄く切った肉をのせて、リンマルト様用には細かく切った野菜をこぼれないようにおいた。

「色とりどりできれいなの。もう食べられるの?」

「両面をこんがり焼くとおいしいよ。慌てないのが重要」


 片側が焼けたあとに平たい道具を使って裏返した。思ったよりも上手に裏返すことができた。火の勢いを押さえてじっくり焼いた。完成したオコノミヤキをお皿の上にのせて、最後に使用人からもらったソースをかけた。


 シンリト様とリンマルト様の前にお皿をおいた。

「食欲をそそる匂いだ」

「見た目も華やかですてきですわ」

 シンリト様とリンマルト様もオコノミヤキを気に入ってくれた。


「コパも早く食べたいの」

「次は一緒に作るから、コパリュスもシストメアちゃんも私の動きを見てね」

 ムーンの分も含めて残り4枚を焼いた。

 できあがったオコノミヤキをみんなでおいしく食べた。

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