宝石神殿レベル8

第40話 オールグリーン

 夕方の宝石神殿5階で宝石神殿のレベル8を確認した。

「精霊は見かけないから宝石神殿の強化? 厩舎と荷物置き場が黄色だったよね」

「確認してみるの」


 コパリュスが石のテーブルへ手をのせた。画面に宝石神殿の情報が表示される。表示された中身は私の予想と同じだった。

「すべてが緑色になっている。これで宝石神殿全体が強化されたのね」

「その通りなの。でもコパは実物をみたい」


 外へ行く前に私のスキルを確認したけれど、昨日と変わらなかった。宝石採掘と宝石加工がレベル9で、宝石鑑定がレベル8だった。

 コパリュスとムーンと一緒に宝石神殿の外へでた。噴水の横を通って、厩舎と荷物置き場の建物の中へ入った。


「宿屋と同じ感じにきれいになっている。温度も安定している?」

「倉庫ほどではないけれど、急激な温度変化は抑えられるの」

「荷物や動物にもやさしそうね」

「メイア様、噴水前で待っている人物がいます」


 後ろからムーンが教えてくれた。コパリュスも慌てていない様子を見ると知っている人のはず。今の住人なら、わざわざ待っていないで私に話しかけてくる。思い当たる人物は1人しかいなかった。


 建物を出て噴水前に行くと、トナタイザンさんが待っていた。

「もうすぐ日が暮れそうだけれど、今日はどのような用事?」

「散歩をしていたら、あの商人たちの姿があった。もうすぐ来るはずだ」


「コルンジさんたちね。ニワトリやヤギは見かけた?」

 思わず聞いてしまった。それほど待ち望んでいた品物だった。

「鳴声が聞こえたからいるはずだ」


 しばらくすると東門へ続く道で、遠くのほうが明るくなった。コルンジさんたちが宝石神殿に現れた。無事に到着できてよかった。

「メイア殿、今回も宿泊場所をお借りします。ところで噴水に何かあるのですか」

 私たちがこの時間に、外へいたのが不思議だったみたい。


「建物を見ていたら、コルンジさんたちが来ると聞いて待っていたのよ。厩舎と荷物置き場も改善されたから馬も喜ぶと思う。宿泊は宿屋を使ってね。ガルナモイトさんたちがいるから、詳細は彼らから聞いて」


「助かります。夕食後にお話しは大丈夫ですか」

「平気よ。私のほうから宿屋へ行くね」

 コルンジさんたちと別れて宝石神殿の4階へ戻った。トナタイザンさんは宿屋で少しくつろいでいくみたい。


 夕食を食べ終わって、今は宿屋の2階にいた。向かいの席はコルンジさんで、私の横にコパリュスとムーンがいる。

「メイア殿のジュエリーは好評でした。頼まれていたニワトリとヤギ以外にも、食材の種や日用品を持ってきました。明日にでも現物をみてください」


「たくさん持ってきてくれてうれしい。ジュエリー加工にも慣れてきたから、前回と同じくらいならすぐにでも可能よ」

「毎回10個前後あると助かります。ただ貴族は同じ品物を嫌います。異なるデザインや宝石でお願いします。最高級ジュエリーも可能ですか」

「問題なく作れるから安心して。今は宝石加工がレベル9になったのよ。このジュエリーは喜んでくれそう?」


 ルビーのリングとサファイアのペンダントジュエリーを取り出して、コルンジさんに渡した。コルンジさんの動きが一瞬止まった。危険物を触るかのように、ゆっくりと手を伸ばした。ルビーを先に見て、そのあとにサファイアを確認していた。


「鑑定の魔石具を使っても平気ですか」

「前回みた魔石具よね。大丈夫よ」

 コルンジさんが魔石具を取り出して、深い皿の上にジュエリーをおいた。何度も頷きながら、ルビーとサファイアのジュエリーを鑑定した。


「すばらしいです。まさに国宝級のジュエリーです。強化もしてあります。でも残念ながら、わたしでは購入できません」

「価格なら相談可能よ」


「お金の問題ではありません。あまりにも高品質な国宝級ジュエリーです。わたし程度の商会で取り扱える品物ではないです。できれば誰にも見せないことをお薦めします。それか信頼している貴族に直接売るのが確実でしょう」

「ジュエリーに問題があるの?」

 コルンジさんの説明理由が分からなかった。


「よい意味で問題があるジュエリーです。このジュエリーを持っていれば、誰にも負けない地位が手に入るでしょう。誰もが作成者を探すはずです。有力貴族に直接売れば保護してもらえますが、商会程度では対応できません」


 ジュエリー自体に悪い部分はなかった。ただこの世界では、ほとんど存在しないほどの高品質ジュエリーだった。やっと意味を理解できた。


「レベル9ジュエリーは人前で見せないようにする。コルンジさんにはレベル7か8の宝石を使ったジュエリーを提供するね」

「助かります」

 残りの時間は、ガルナモイトさんたちの様子を話したりして終わりとなった。

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