第39話 レベル9の強化
エルフの里から戻ってきて数日が経過した。留守中も問題はなかったみたい。
原初の椿の種は、ガルナモイトさんの指導を受けながら果樹園に植えた。エルフの里以外では育ち難いと聞いたけれど、ダイヤもいるから試してみた。
朝のお祈りも終わって、今は1人で宝石神殿の地下2階で採掘をしている。コパリュスとムーンも忙しくなって、私1人で採掘や加工する機会が増えてきた。
「レベル9の鉱物が連続で採掘できた。早めにスキル確認が必要ね」
宝石神殿の5階へ移動した。部屋へ入ると同時に、私の真横にエメが出現した。ダイヤとルビーは少し離れた位置で浮遊している。
「みんな、元気そうね。みんなのおかげで、宝石神殿での暮らしが豊かになってうれしい。これからも一緒に楽しもうね」
みんなも喜んでくれたみたい。態度で心を表現してくれた。
石のテーブルへ手をのせた。予想以上の結果だった。
「宝石採掘だけではなくて、宝石加工もレベル9になっている。たしか達人と呼ばれるレベルよね。実感がわかない。でも原初の椿油を使った強化ができる。コパリュスとムーンはいないけれど試してみたい」
5階から地下1階へむかった。エメが一緒についてきてくれた。
地下1階で宝石加工の準備が整った。ルビーとサファイアのルース作りから開始した。初めて宝石神殿へ来た日と比べると、鉱物の状態が手に取るようにわかる。今までの無駄な動きがなつかしくも感じた。
ルビーとサファイアのルースがひとつずつ完成した。原初の椿油や火の魔石具を取り出して強化の準備を始めた。火の魔石具に炎を灯した。
「ルビー、火を安定させて」
元気な姿でルビーが出現した。その場で飛び跳ねてから、火の魔石具周辺を飛び回った。銀色の粒子が炎に降り注ぐ。炎の揺らぎが安定した。
初めて使う宝石と椿油だから慎重に進めた。私自身の経験がスキルよりも先に危険を感知できた。ためしに実施した強化が無事に終わると、ルース作りを再開した。さまざまな大きさやカットのルビーとサファイアをたくさん揃えた。
「きれいな宝石がいっぱいなの」
顔をあげると、コパリュスとムーンの姿があった。
「部屋へ入ってきたのに気づかなかった」
「メイアは集中すると周りが見えなくなるの。でもそれだけ真剣なの」
「加工している宝石はルビーとサファイアにみえます。メイア様は宝石加工がレベル9になったのですか」
「宝石採掘と宝石加工がレベル9になったのよ。原初の椿油を使った強化も問題なくできたから、ほとんどの宝石と地金があつかえると思う」
「この短期間ですばらしいです」
ムーンがうれしそうに体をすり寄せてきた。
「コパもメイアはすごいと思うの。でも昼食を忘れるのは駄目だと思うの」
「もうお昼になったのね。これから作るから少しだけ待って。トナタイザンさんが卵をもってきてくれたからオムライスを作るね」
「初めて聞く料理名で楽しみなの」
後片付けを始めた。いつの間にか、エメとルビーは消えていた。
宝石神殿の4階へ移動して、コパリュスと一緒に料理を開始した。トマトが収穫できるようになってから、トマトケチャップを作っておいた。料理の幅が増えてうれしかった。醤油や味噌も早く入手したい。きっと世界のどこかにあるはず。
コパリュスも料理作りになれて、順調に3人分が完成した。オムライスをおいしく頂いたあとは、コパリュスとムーンをつれて果樹園でのんびりしたい。
果樹園の木陰で腰を下ろした。横にはフサフサとモフモフのムーンがいて、温かさと優しさが伝わってくる。エメが出現すると、コパリュスはエメと遊びだした。のどかな風景を眺めながら、すてきな時間を過ごした。
数日後の夕方、ルビーとサファイアのジュエリーがたくさん完成した。
「今日はここまでね。昨日はイヤリングで今日はブレスレットがきれいに作れた。たいていのジュエリーなら問題なく作れそう」
シストメアちゃんに恥をかかせたくない。シストメアちゃんのほしいジュエリーがどのような種類でも、これだけ作れれば対応できるはず。
「ルビーとサファイアのジュエリーは、どちらも輝きがすごいの」
「どの国へ行っても、国宝級のジュエリーとなる品質です」
「レベル9の宝石も基本はほかのレベルと同じみたい。5階へ行ってジュエリーを奉納したら、夕食の準備を始めるね」
後片付けをしたあとに、コパリュスとムーンをつれて5階へむかった。
奉納台に今日作ったジュエリーの大半をおいた。淡い光とともにジュエリーが消えてから、部屋全体に光が充満した。宝石神殿のレベルが上がった。
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