第32話 高級ジュエリー

 宿屋の2階でコルンジさんに会った。コパリュスとムーンも一緒にいる。

「エメラルドとガーネットともに、2種類のジュエリーで各3個用意したよ」

「合計12個ですか助かります。ぜひ実物を見せてください」


「まずはリングとペンダントトップのエメラルドジュエリーよ」

 大粒のエメラルドカットを使った、正統派のリングだった。ペンダントトップは中央が楕円形のオーバルカットで、周囲におしゃれな感じで小粒のムーンストーンを配置した。どちらも地金はミスリルを使っている。


 コルンジさんの目つきがかわった。商人の顔になったと思う。表側だけではなくて裏側も念入りに確認している。ところどころで頷いていた。

「ガーネットのジュエリーも見せてもらえますか」


「こちらがリングとブローチのジュエリーよ。エメラルドのジュエリーも含めて、すべての宝石と地金は強化してある」

 目の形を思わせるマーキスカットを使ったリングは、花びらのデザインにした。ブローチは地金で枝と葉っぱを作って、つぼみを色とりどりなルースで飾った。


 先ほどと同様に、コルンジさんが隅々まで確認していた。悪い部分はないはずだけれど、じっくり見られると緊張する。

「念のために鑑定しても構いませんか」

 視線をあげて聞いてきた。


「平気よ。コルンジさんも鑑定スキルがあるの?」

「汎用の鑑定スキルはありますが、高価な品物は専用の魔石具を使います」

 鞄から底の深い皿のような装置を取り出した。両手に乗るくらいの大きさで、皿の下には小さな箱があった。


「この装置が鑑定スキルの代わりなの?」

「その通りです。詳しい仕組みは不明ですが、下側の箱に魔石が入っています。高価な品物ですが商売には欠かせません」


 偽物を購入すれば、お金だけではなくて信用にもかかわる。相当高価な魔石具だと思うけれど、総合的にみれば安いのかも知れない。

「魔石具はいろいろな種類があるのね」


 コルンジさんはひとつのジュエリーを中央にのせて、下側の箱に手を当てた。ジュエリーの周辺が一瞬だけ明るくなった。コルンジさんは1点を見つめていた。私には見えないけれど鑑定結果を読んでいるみたい。


 すべてのジュエリーで鑑定が終わった。コルンジさんの視線が私にむいた。

「高品質の高級ジュエリーでした。宝石や地金も聞いた通りです。メイア殿のジュエリーはすばらしいです。この品質なら問題ありません。すべて買い取りたいです」

「喜んでくれてうれしい。相場が分からないので、希望価格を教えて」


 値段の話し合いを始めた。最終的にオパールジュエリーの2倍以上で、1個のジュエリーを買い取ってもらった。思った以上に金貨が増えた。次回来るときに、家畜のほかに馬車もお願いした。この世界を旅するときに使いたい。


「旅行でレッキュート連合国に来る機会があれば、店にお寄りください。今度はわたしたちが、おいしい料理などで歓迎します」

「それは楽しみ。宝石神殿で区切りがついたら旅行してみたい。もちろんコパリュスとムーンも一緒よ。ほかの人が作ったジュエリーも一度は見てみたい」


「コパはいつでもメイアとムーちゃんと一緒なの。留守中の宝石神殿は、トナタイザンに任せれば大丈夫かな」

 トナタイザンさんは何処にでもいる元気な老人ではない。真の姿は神獣ドラゴンだった。コパリュスはオパリュス様の分身で、ムーンも幻獣フェンリルになる。精霊もいるから、宝石神殿は凄い場所なのかも知れない。


「トナタイザンさんなら、畑や果樹園も頼めるから安心ね」

「メイア様との旅行は楽しみです」

「みんなで一緒に行こうね」


 コルンジさんがレッキュート連合国や周辺国の名所を教えてくれた。さすが商人だけあって情報量が多かった。忘れずにおすすめの宝石店も聞いた。宝石神殿がレベル10になったら、周辺国へ旅してみたくなった。

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