第30話 好みの違い
コルンジさんたちを宿屋へ案内した。
「改装されたのですか、きれいになっています」
「機能が強化された感じ。宿屋を自由に使ってかまわないから、2階で少し話しをしたい。頼んでいた食材について聞きたい」
「また利用させてもらいます。ムジェの森で魔物とあまり遭遇せずに、宝石神殿でも休める。今回の旅は順調しすぎて怖いくらいです」
「無闇な争いがなくてよかったね」
「毎回この状態なら宝石神殿へ来やすいです」
コルンジさんがほかの人へ指示を出すと、箱をひとつ持ってきた。コルンジさんは箱をもって、私たちと一緒に2階へむかった。コパリュスとムーンが一緒で、トナタイザンさんは1階でくつろぐみたい。
席に着くと、コルンジさんが箱を開けた。
「食材や種がいっぱい。これらの品物が交換可能?」
「その通りです。これ以外にもメイア殿に頼まれた米や日用品もあります。ジュエリーとの物々交換になると思いますが、ひとつ相談があります」
「高価な品物が多いの?」
「貴重な食材や種もありますが、そこまで高くはありません。実はスフェーンのジュエリーが売れなかったのです。交換するジュエリーの希望はオパールやムーンストーン、貴族が喜ぶ高級宝石を使ったジュエリーです」
私が作れるジュエリーで物々交換ができそうでよかった。
「宝石関連スキルがすべてレベル7になったのよ。エメラルドやガーネットのジュエリーが作れれば平気? 地金はミスリルまで問題なく使える」
「それでしたら大丈夫です。メイア殿のジュエリーは品質が高いので、できれば多めに購入したいくらいです」
「少し時間をもらえれば数は揃えられると思う。ひとつ教えてほしいのは、スフェーンのジュエリーが売れなかった理由ね。ジュエリーに問題があれば直したい」
ジュエリーで商売する訳ではないけれど理由が気になった。一流職人の肩書きもあるけれど、オパリュス様に奉納しているジュエリーでもあった。できるだけ喜ばれるジュエリーを奉納したい。
「ジュエリーに欠点はありません。きれいな宝石ですが知名度が低すぎました。あとは好みの問題です。知り合いの貴族は、好みではなかったようです。ジュエリーは高品質でていねいな仕上がりです。その点は商人として保証します」
ジュエリーは問題なかった。好みなら仕方がない。
「コパはスフェーンのジュエリーも気に入っているの。だから平気なの」
私の心配を予想したのか、うれしい言葉をかけてくれた。
「コパリュスの好みなら作ってよかった。コルンジさん、理由と褒めてくれてありがとう。疲れていると思うから、さっそく物々交換をお願いしたい」
最初にオパールのジュエリーを求められた。渡した3個は人気だったみたいで、今後も数がほしいとのことだった。手持ちの5個を渡して金貨100枚と交換した。充分な量の金貨で、この中から米や日用品、食材や食材の種と交換した。
予定の取引は終わった。
「今後もジュエリーの支給は可能でしょうか」
「大量生産はむりだけれど少しずつなら平気よ。卵やミルクがほしいから、家畜もお願いするかも知れない」
「ニワトリやヤギなら可能だと思います。ただ高価になりますので、高級ジュエリーがあると助かります。メイア殿の品質なら貴族が喜んで買ってくれるでしょう」
「数はどのくらい必要?」
「最初は5個、できれば10個はほしいです。滞在を許して頂ければ、少しの期間を宝石神殿で待つことも可能です」
ムジェの森を何度も往復するのは大変だと思う。コパリュスに視線を向けると頷いてくれた。私の判断に任せてくれるみたい。
「何日かあれば作れると思う。デザインは私の好きな感じで平気?」
「ジュエリーの中身はメイア殿に任せます。こちらからの希望は、宝石がエメラルドかガーネットで地金がミスリルです。どちらも強化されていれば助かります」
「その内容で10個くらい作るね。完成までこの宿屋を使ってほしい。新鮮な食材もあるから使って。食材は倉庫に保管してあるけれど、入るには私の許可が必要。知っているガルナモイトさんとマクアアンリさんにしたい」
「メイア殿の元へ向かうように伝えておきます」
「あと宝石神殿には私たち以外も住んでいるから、このあと紹介するね」
スークパル王国にいるラコール伯爵家の者と話すと、このまますぐに会いたいと言ってきた。コルンジさんの情報では良心的な貴族で知られていた。
コルンジさんをつれて宝石神殿の3階へむかった。シンリト様とリンマルト様がいたので、その場で顔合わせをおこなった。面識はなかったみたいだけれど、相手のことは知っていたみたい。
簡単な挨拶が終わるとコルンジさんは宿屋に戻った。シンリト様とリンマルト様からコルンジさんの噂を聞いた。中規模クラスの商人で悪い噂はないみたい。商隊が数日くらい宿屋で泊まる理由も説明した。
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