第27話 神と髪
シストメアちゃんたちが来た翌日の朝になった。2回目の鐘がなったあとに宝石神殿の1階へ移動した。オパリュス様の像がある手前にシストメアちゃんがいる。たしか前回もお祈りをしていた。
私も横へ移動してオパリュス様にお祈りした。お祈りが終わって目を開けると、横でシストメアちゃんが待っていた。
「この前もお祈りしてくれていたよね」
「ジュエリーが直ってメイアとも出会えました。宝石神殿もすてきな場所で、オパリュス様には感謝の言葉しかありません」
「気に入ってくれてうれしい。きっとオパリュス様も喜んでいる」
シストメアちゃんと視線があった。普段と異なって真剣な表情だった。思い詰めているように感じる。声をかけるか迷っているとシストメアちゃんの口が開いた。
「コパリュスちゃんは何者ですか。オパリュス様と同じ気配を感じます」
言葉を失ってしまった。トナタイザンさんは神獣だから、気配でコパリュスが誰かわかったと思っていた。商人のコルンジさんたちからは話すら出ていない。何度もオパリュス様にお祈りしていたから、勘が鋭くなったのかもしれない。
「きっと気のせい。宝石神殿内はオパリュス様の影響が大きいのよ」
「私の勘違いでしょうか」
「その通りよ。それよりもシストメアちゃんに渡したいものがあった」
突然の流れになったけれど、実際に渡したいものを思い出した。
「どのような品物でしょうか」
「頭髪用の椿油よ。髪の毛につけるときれいになっていく。シストメアちゃんの髪は今でもきれいだけれど、もっとすてきな感じになる」
「ぜひ試したいです。すぐにでも可能ですか」
シストメアちゃんの関心がかわったみたい。このままオパリュス様とコパリュスの関係を忘れてくれるとうれしい。
「椿油を取ってくるから、3階の部屋で待っていてね」
3階でシストメアちゃんと別れて4階へ移動した。『宝石箱』と念じて、宝石箱の中から頭髪用に作った椿油を取り出した。3階へ戻ろうとしたときに、エメが目の前に出現した。浮遊しながら私のほうを見ている。
「エメも一緒にシストメアちゃんのところへ行く?」
その場で回転してくれた。一緒に3階へむかった。ダイヤの紹介もまだだったと思う。外に出たときにでもダイヤを呼んで、シストメアちゃんに会わせたい。
エメと一緒にシストメアちゃんの部屋に入った。
「精霊ですか」
シストメアちゃんが驚いた表情で聞き返す。
「風の中位精霊で名前はエメ。土の中位精霊もいるから、あとで紹介するね」
「初めて見ました。メイアに懐いていますが、メイアが召喚したのですか」
「宝石神殿に住んでいる精霊よ。エメはところかまわずに出現するから、気まぐれな性格だと思う。ダイヤは真面目な感じね」
「祖父母にも紹介できますか」
「もちろん可能よ。ただ無闇には呼べないから、時間と場所は相談させて」
「その程度なら平気です。きっと祖父母も喜びます」
エメが部屋の中を浮遊して移動すると、シストメアちゃんが視線で追っていた。しばらくの間はエメの鑑賞会となった。
「エメをずっと眺めていられるけれど、もうすぐ朝食の時間になると思う。その前に頭髪用の椿油を説明するね」
シストメアちゃんを浴室に連れて行って、使用方法や使う量を説明した。
元の世界にあった入浴状況とは異なるみたい。湯船につかる習慣はなくて、入浴の頻度も少なかった。そのためか椿油の利用と効果には驚いていた。シストメアちゃんに頭髪用の椿油を贈るというと、とても喜んでくれた。
朝食時にシンリト様とリンマルト様へ挨拶すると、旅の疲れもあるから今日1日は皆を休めさせたいと話した。明日以降は宝石神殿を案内してほしいと頼まれて、快く引き受けた。日中の対応はコパリュスが申し出てくれた。
私はムーンと一緒に地下2階へ行って採掘を始めた。
「メイア様、連続でエメラルドが採れています。レベルが上がったと思います」
「教えてくれてありがとう。夢中で採掘していたから見逃していた」
採掘された鉱物をみるとエメラルドのほかに、ガーネットとアメシストもいっぱい採掘されていた。全部がレベル7だったはず。ムーンと一緒に5階へ移動した。
石のテーブルに手をかざした。スキルのレベルが表示された。
「おめでとうございます。宝石採掘が一流と言われるレベル7です」
「ムーン、ありがとう。これで高級ジュエリー用の宝石が確保できた。宝石加工はレベル6だけれど、レベル7になったら高級ジュエリーを作りたい」
「メイア様が作れば、誰もが欲しがるジュエリーになります」
「シストメアちゃんも喜んでくれるかな?」
「もちろん、そうだと思います」
「シストメアちゃんが喜んで、石神殿にもすてきなジュエリーが奉納できる。ますます楽しみが増える」
レベルの確認が終わると、すぐにコパリュスを探して報告した。コパリュスもレベルアップを喜んでくれた。
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