第24話 心を込めた贈り物

 朝からの宝石採掘と鑑定、加工の作業が順調にすすんだ。昼食をとってから、コパリュスとムーンをつれて宝石神殿の5階へきた。部屋に入るとダイヤとエメが出迎えてくれた。エメは呼ばなくても、高い頻度で姿を見せてくれる。


 ジュエリーの奉納が終わってから、石のテーブルへ手をのせた。

「全ての宝石スキルがレベル6になった。うれしい。これでムーンストーンを加工できる。コパリュスとムーンが取ってきてくれた赤魔石もあるから、ミスリルの強化もできる。ムーンにすてきなジュエリーを作ってあげるね」

「メイア様のジュエリーはどれも心がこもっています。楽しみです」


「コパにも何か作ってくれる?」

 近くに寄ってきて私の腕を取ってきた。かわいらしい顔で私を見つめる。断る理由は何もない。コパリュスの頭をなでてあげた。うれしそうに目を細めた。


「もちろんよ。コパリュスにはアイオライトで作るね。アイオライトは見る角度で色が異なる多色性の特徴があって、色合いを楽しめる宝石よ」

「早くみたいの。今からでも作れる?」

「わたくしも完成が楽しみです」


「地下1階にいって作り始めるね。完成品を楽しみにしてほしいから、加工中はひとりで作業したい。コパリュスとムーンは1階にいてくれる?」

「ムーちゃんと一緒に待っているの」


 宝石神殿の5階から1階に降りた。ムーンとコパリュスと別れて、ひとりで地下1階へと向かった。『宝石箱』と頭の中で念じて出現させた。宝石箱から加工に必要な道具をとりだした。精霊の炎が使える火の魔石具も用意した。


 宝石自身のかがやきを堪能してもらいたい。シンプルなデザインで、複数の宝石を使う形がよさそう。普段つけてもらえるように、コパリュスとムーンでジュエリーの種類をかえた。頭の中に完成品が浮かんだ。


 スキルの力を借りてジュエリーを作り始めた。ミスリルの強化はプラチナの強化とあまりかわらなかった。ムーンストーンとアイオライトの研磨は、かがやきの方向を意識してカットした。


 時間をわすれて加工に専念した。満足のいくジュエリーが完成した。箱に入れてリボンをつけると1階へ向かった。コパリュスとムーンを見つけて近づいた。

「ジュエリーが完成したよ。赤色リボンがコパリュス、青色リボンがムーンへのプレゼント。気に入ってくれるとうれしい」


 コパリュスがリボンを引っ張って結び目を解いた。ムーンも足と口を使って器用に開けている。蓋を開けてジュエリーを取り出していた。

「海を見ているような青さなの。中央の大きな宝石は細かいカットが神秘的。ミスリルの緑色が、周りにある小さな宝石の色味を増している。コパは気に入ったの」

「喜んでくれてうれしい。ブローチだから落とす心配は少ないよ」


「コパにブローチをつけてほしいの」

「右胸の少しだけ上側につけるね」

 かがみ込んでブローチをつけた。近くにみえるコパリュスの顔は満面の笑みを浮かべている。頭をなでると私に抱きついてきた。


「メイアが来てから毎日が楽しいの。消滅も回避できて、宝石神殿もよくなってコパはうれしい。ジュエリーのプレゼントもありがとう」

「私のほうこそ、宝石に囲まれて毎日が充実している。コパリュスとムーンもいるから、楽しい生活が送れている。これからも一緒に楽しもうね」

 頭をもう一度なでた。コパリュスは胸元のブローチを何度もみていた。


 ムーンに視線をむけると、私とコパリュスが終わるまで待っていたみたい。

「大小のムーンストーンが連なって幻想的な光の移りかわりがすてきです。実物のムーンストーンがみられて満足です。わたくしにもジュエリーをつけてください」

「首に巻く感じでジュエリーをつけるね」


 直接にはムーンにジュエリーをつけられないから、ネックレスなら外れにくいと思った。ムーンのジュエリーもミスリルで、緑色が華をそえていた。

 両手を回してジュエリーをつける。ムーンストーンは合計20個くらい使った。シラー効果と呼ばれる青白い光がすてきな変化を与えてくれた。


「メイア様のジュエリーは温かな気持ちを感じます。わたくしはメイア様のお供ができてうれしいです」

「私もムーンと一緒に過ごせて楽しい」

 ムーンの体をなでてあげた。フサフサな毛並みにモフモフの感じが、私を包み込んでくれた。まるで太陽の温かさを受けたみたい。


 コパリュスとムーンと一緒に、完成したジュエリーを堪能した。夕食の時間になるまで、ジュエリーや宝石図鑑を眺めて楽しい時間をすごした。

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